メルカリで値段の「¥マーク」を小さくしたら購入率が伸びた理由、ペイディがサービス名を「カタカナ表記」にする理由など、プロダクトのマーケ施策まとめ30(2023)
2023年に取材した記事から、長く参考になりそうな施策をまとめました。※ 数値等はあくまで取材当時のものです。
1、商品ページの「¥マーク」を小さくしたら購入率アップ(メルカリ)
メルカリでは、商品詳細ページの「値段の¥マーク」を小さくしたところ、購入率が大きく上昇した。
理由としては、¥マークを小さくしたほうが、心理的な「価格の圧迫感」が減って、心理的にすこし安く感じるためと考えられている。例えば、¥マークが大きいと桁数が多く感じたり、価格を高めに感じやすい。
この案があがったときには、社内でも懐疑的だったそうだが、テストすると小さな開発コストで大きなリターンを得られる施策になった。
2、希望価格の「リクエスト機能」で購入率アップ(メルカリ)
メルカリでは「希望価格の登録」という、購入者から出品者に「希望価格」をリクエストできる機能を出したところ、購入率やGMVが向上した。
この機能の成功ポイントは、購入者が「誰かわからない状態」でリクエストできるようにしたことだった。心理的なハードルが下がって、直接交渉だと積極的に動けなかった人でもリクエストしやすくなった。
また、出品者にも「価格を希望した人数」が伝わるようになったことで、「それなら価格を変更しよう」という意思決定がしやすくなった。
3、初期画面に「サブスクの訴求」で課金数が1.1倍に(NewsPicks)
NewsPicksでは、スタート画面に「プレミアム無料体験をはじめる」というボタンを置いたところ、(開始5日以内の)課金数が10%向上した。
つまり、全ユーザーが通る画面で「プレミアム版があること」を意識してもらうことで、サブスクの認知度を高めることができた。
最初の接触ポイントである「初期画面の改善」は施策効果を得られやすく、ファネルの数字が動きやすいポイントでもあった。
4、クレカ登録で「カード名義」を削ったら入力率が減少(NewsPicks)
NewsPicksでは、クレジットカードの登録画面から「カード名義」を削ってみたところ、入力率が微減(ほぼ同等)してしまった。
仕組み的には、「カード名義」はなくても決済できるため、入力項目を少なくしたほうが利便性が高まると考えたが、この検証は成功しなかった。
理由は「カード名義の項目がない」となると、怪しいサイトのように感じられて、心理的にマイナスに働いたためだと考えられている。
5、「テストの表現」を変えたら受講率が2倍に(Duolingo)
語学アプリのDuolingoでは、冒頭で語学力を測るテストを「テスト」から「レベル診断」のように表現を変えたところ、受講率が2倍になった。
理由は「テスト」という言葉に「怖い・緊張する」という印象を持つ人が多かったため。カジュアルな表現のほうが気軽に受講してもらえた。
伝える情報が同じでも「言葉が持つイメージ」によって、ユーザーの行動が大きく変わることがある。
6、TikTokで「15分間」のコメント返信をする(Duolingo)
グローバル版の「Duolingo」のTikTokは、1年半でフォロワー数が100倍以上(5万 → 600万フォロワー)にまで成長した。
感覚的には「友達と会話するように」動画を投稿していて、製品を押し付けるのではなくて、みんなを喜ばせることを意識したという。
実際に「TikTokの視聴回数」と「アプリのダウンロード数」には、相関関係があることもわかったそう。
TikTok運用のTIPSとしては、動画を投稿したら15分間は「コメントの返信」に時間をつかって、視聴者とコミュニケーションをとっていること。
この方法は非常に効果的で、ユーザーへの返信を続けると、コメント欄における会話が増えるため「視聴回数の初速」を伸ばすことにもつながるそう。TikTokのアルゴリズム的にも動画が拾われやすくなると。
7、読みやすいサービス名は「口コミされやすい」(ペイディ)
あと払いアプリの「ペイディ」では、サービス名を「Paidy → ペイディ」に統一して表記したことで、"言葉の流通量"を高めることに成功した。
アルファベット表記の「Paidy」だと、読めないユーザーも多くて、口コミ数や認知度や検索されやすさなどで、機会損失が生まれてしまっていた。
カタカナに表記を統一すると「Googleでの検索回数」も逆転。数ヶ月ほどで「ペイディ」のほうが多く検索してもらえるようにもなった。
8、ユーザーの「目に入る情報」を絞って完了率アップ(TimeTree)
TimeTreeでは、予定作成の画面で「任意の入力項目」(場所やURLなど)を隠したところ、(週ベースでの)予定作成率が10%も向上した。
ここでわかったのは、作成型のタスク機能では、ユーザーが目にする情報を「最小限にすること」で心理的な負担が減って、タスクの完了率が高まる可能性があること。
一部の人には、「場所やURL」は任意項目であることが伝わっておらず、「必須項目だ」と勘違いされてしまっていたのも一因。
9、 「電話をかけない約束」を明記したら単価を1.5倍にしても売れた (くらしのマーケット)
くらしのマーケットには、「電話をかけない約束」を明記したところ、単価を1.5倍にしても売れたハウスクリーニング事業者がいる。
理由は「電話が苦手な人」や「忙しい人」が、電話がかかってこないことに価値を感じて、高めの単価でも支払ってくれたため。
一定数いる「電話が苦手なユーザー層」は、電話よりもメッセージでの対応に価値を感じやすい。
10、目新しい機能は「普及しているモノ」で表現する (ダイニー)
モバイルオーダーの「ダイニー」では、店員にギフト(投げ銭)を贈れる「推しエール」という機能が想像以上に成功したという。
このような目新しい機能は「普及してる文化や習慣」で表現するとユーザーに伝わりやすいという。日本には「チップ文化」がないため、推し活や配信アプリのように「好きな人を応援する」という体験になるよう設計した。
この機能では、良い接客をした人がギフトを贈られることが多く、月10万円以上のギフトを贈られている店員さんも。
11、写真を中心にしたら「実在感」が高まってCVRが2倍に(才流)
サイル学院では、学校のサイトをイラスト中心から「写真中心」に変更することで、コンバージョン率を約2倍に伸ばすことに成功した。
写真を中心にしたことで、学校の雰囲気やリアリティが伝わるようになり、訪問者が安心して検討できるようになったため。
会社の採用情報ページやブログなどでも、写真をたくさん掲載することで、よりリアリティが伝わりやすくなるかもしれない。
12、登録フォームを「埋め込み型」にしたら登録率が2倍に(才流)
才流のサイトでは、記事の最後に「メルマガの登録フォーム」を埋め込んだところ、フォームへの遷移と比較して、登録率が2倍に改善された。
ページを遷移するほど「離脱」が生まれるため、ページ内で完結できるデザインにすることで、負荷を減らして完了率を高めることができたと。
13、たった1つの「集客チャネルの発見」でサービスが成長(PLUG)
ショッピングアシストアプリの「PLUG」では、TikTok広告を試したことで「CPIが2桁円」まで獲得コストが下がって、ユーザー数が急成長した。
このアプリでは「最初の5秒」で体験を伝えやすく、縦型ショート動画との相性がめちゃくちゃ良かった、というのがポイント。
反応が良かった広告は、スマホの画面を録画して、無料アプリで編集して、自分でアフレコして喋る「素人感のある広告」だった。
試行錯誤の末に「1つの集客チャネルの発見」で成長した。初期の様々な集客チャネルのミスマッチは、コンセプトの失敗を必ずしも証明しない。
14、待ち時間は「進捗を可視化」すると待ってくれやすい(PLUG)
PLUGでは、価格比較中の「ローディング中のデザイン」を変更すると、離脱率を大きく下げることができた
具体的には、ぐるぐる回るだけの「スピナー型」から、進捗を伝える「プログレスサークル型」に変更したところ、離脱ユーザーが90%も減少。
ポイントは「進捗の可視化」をしたこと。進捗のわからないデザインだと「固まっているかも…」と思われて離脱しやすい。
15、エンプティ画面を「行動喚起型」にしたら連携率が1.4倍に(マネーフォワード ME)
マネーフォワード MEでは、未連携時に「空の画面」を表示する代わりに、利用率の高いサービスへの導線を表示することで連携率が1.4倍になった。
連携数の多い銀行やカードを紹介することで、ユーザーに「このカードなら持ってる!」とイメージしてもらいやすくなる。
空の画面を「次の行動イメージ」が沸くデザインに変えるだけでも、ユーザー体験が良くなることがある。
16、規約に「要約」を入れると炎上しにくくなる(Skeb)
コミッションサービスの「Skeb」では、利用規約に要約を表示することで、誤解による炎上などを防いでいる。
例えば、投稿サービスには、規約に「運営が投稿作品を自由につかえます」という著作権についての記載が入っていることが多い。
これは、サムネイルやスクショの利用などで必要だが、一般のユーザーからすると「自分の作品の著作権が盗まれる!」と誤解されやすい。
こうした誤解や炎上を防ぐために、Skebでは「作品はクリエイターのものですよ。この用途のための規約ですよ」と要約を入れて誤解を解いている。
17、クリエイターを「金額で検索」できなくする理由(Skeb)
Skebでは、クリエイターを「金額」で検索できないようにしているという。理由は「安いほど注目が集まるサービス」になることを避けるため。
金額で検索できると「安い順」に検索する人が増える。すると「安くするほど注目される!」となって、趣味でやっている方などは価格を下げる。
すると、全体の相場が下がっていって、有名クリエイターから「割に合わないよ」と抜けていき、クライアントや新規クリエイターが増えなくなる。
この負のスパイラルは「金額の検索」からはじまるため、この機能を意図的に実装しないことで、クリエイターや相場を守っている。
18、展示会で名刺に「電話する日時」を書いたらアポ率1.8倍(IVRy)
電話の自動応答サービスの「IVRy」では、展示会でオペレーションの改善を重ねることで、大きな成果を得ることができた。
少し関心がある層への「商談アポ率を高める工夫」としては、電話する日時を手書きして名刺を渡すようにすると、アポ率を1.8倍に改善できたという。
例えば「平日の朝・昼・夕方だと、どこがお電話つながりやすいですか?」と相手に時間を選んでもらって、名刺に日時を書いて渡すようにした。
相手に日程を選んでもらうことで「ゆるいコミットメント」が発生したのと、事前に仮約束をしたことが成功率を高めたと考えられている。
19、チャットを「3分以内」に返信すると購入率2倍に(チャネルトーク)
チャネルトークでは、ECのチャット返信時間を「3分以内に返信する」と、接客後のCVR(購入率)が2倍以上も高くなることを発見した。
例えるなら、店舗で店員に声をかけて3分待ったら「少し遅いかな」と感じるのと同様で、ECサイトでも返信速度が満足度につながった。
逆に「3分」を超えると「10分後」でも「30分後」でも大差はなかった。
20、サイトから「商談の予約」をできるようにしたら商談数がアップ(fondesk)
電話代行サービスの「fondesk」では、サイト上から日程選択をするだけで「導入相談の予約」ができるようにしたら、商談数が増加したという。
担当者がサイトに訪れたときに、すぐに「相談の予約」ができるようになったことで、大手企業からの相談なども増えたそう。
チャットで日程のやり取りなどをしなくても、カレンダーに予約が自動的に入るようになったことで、チームの生産性も改善された。
21、クレカ決済に絞ると「値引き交渉」されにくい(fondesk)
fondeskでは、決済を「クレカ支払いのみ」に絞っていて、請求書での支払いは未対応にしているが、すると「ほぼ値引き交渉をされない」という。
これは、感覚的には「ECで値下げ交渉をする人はいない」という現象に似ているそうで、ECっぽく振るまうことでこのようなことが起こると。
大企業からの「割引してくれたら導入しますよ」という交渉にも巻き込まれにくくなり、イレギュラーな対応を減らし効率を高められている。
22、「カップル→家族向け」に変更したら依頼数が3倍に(ラブグラフ)
出張撮影サービスの「ラブグラフ」では、2019年にメインの顧客層を「カップルから家族」に変更したことが、急成長のキッカケになった。
家族向けにプランも最適化して、撮影枚数を増やしながら2倍以上の値上げをしたところ、依頼数が減るどころか「依頼数が3倍に増えた」という。
重要だったのは「大きな市場」で適切なサービスを提供したこと。これによって広告からも顧客を獲得できるようになり売上が一気に伸びた。
23、コミュニティ起点の「全国学校ゲーム対決」が成功した(パラレル)
たまり場アプリの「パラレル」では、学校対抗のゲーム対決企画を開催したところ、通常時よりも招待率を8倍に高めることができた。
街頭インタビューで学生に話を聞くと、決まったインフルエンサーを見ていないことがわかり、より狭くて深いコミュニティに着目。
学校対抗でカジュアルゲームのスコアを対決するイベントを開催した結果、全国の約7割の中高から参加者を集めることができた。
24、「わかりやすい名称」にしたら成長率アップ(AIチャットくん)
LINEで対話できる「AIチャットくん」では、サービス名をわかりやすく変更したことが、認知度などを大きく高めることに貢献した。
サービス名を「ChatGPT Turbo」から「AIチャットくん」に変えたことで、認知度や口コミが伸びて、3ヶ月で登録者200万人に到達。
機能では差別化しにくい、AIチャット系プロダクトが10個以上出たときに、勝負になったのは「最初に認知をどう取れるか」だった。
25、納期を「期日」で表現したら反応率アップ(定額カルモくん)
車のサブスク「定額カルモくん」では、日数ではなく「期日」で納期を表現するようにしたところ、広告の反応率が改善された。
例えば、「3日で届きます」と納品までの日数で訴求するよりも、「1月末までに届きます」のように期日で訴求したほうが効果が高かった。
ユーザーは「いつまでに車がほしい」と、明確な期日をイメージしている人が多いため、このような結果になったのではと。
26、サブスク型に移行したら「2年で売上3倍に」(オーディオストック)
ストック音楽サービス「オーディオストック」では、単品課金モデルからサブスクモデルに移行したところ、2年で売上が約3倍に成長した。
興味深い結果としては、サブスク型に移行したことで「数千円~数万円」を稼ぐ中間層のクリエイターが増えて、裾野が広がる現象が起きたこと。
理由は、ユーザーは単品だと「これは間違いない」という曲だけを購入するが、サブスクになると「これも試してみよう」と思う人が増えるため。
そのため、挑戦的な曲を提供するクリエイターや、少しニッチな曲を提供するクリエイターなどが、注目されやすくなったと。
27、初期設定から「あまり必要性のない要素」を消したら完了率改善(TimeRex )
日程調整ツールの「TimeRex」では、初回設定時の「心理的な負荷」を下げることで、初回設定の完了率を8.5%改善することができた。
当初は、「日程調整ページ」のURLをカスタマイズできる機能があったが、実際には必要のない要素ではと、その機能を削除することに。
すると、ユーザーから不満も出ずに完了率が上昇。必要性は低いが「意思決定が必要な機能」を追加すると、余計な負荷をかけてしまう可能性がある。
28、日常で「マネしやすいSNS投稿」で反応率が改善(食べチョク)
食べチョクでは、アンバサダー施策を行ったときに、インフルエンサーに「投稿してもらう写真」によって反応率に差があると気づいた。
具体的には、映え食材を届けて「おしゃれ料理」を投稿してもらうよりも、家庭的な「お弁当の写真」を投稿してもらうほうが反応率が良かった。
理由は、おしゃれ料理は「日常でつくらないもの」だが、お弁当は「日常的につくるもの」だからで、多くの人が真似しやすかったため。
29、位置情報アプリの流行は「エリアの密集度でも変わる」(whoo)
位置情報アプリ「whoo」の分析によると、位置情報アプリが流行るかどうかは「人口が局所的に密集しているか」という要素が大きいという。
例えば、東京は密集エリアだから流行りやすい。「あ、コンビニにいる」「あ、バイトしてる」と近くで友達がアクティブになっているのが楽しい。
逆にアメリカなどでは「距離的に離れているケース」が多い。自分はサンフランシスコで、友達はニューヨークなど。すると体験としては弱くなる。
30、初回の「配送元エリア」を変更したら解約率が改善(パンスク)
パンのサブスク「パンスク」では、初回に「近郊エリアのパン屋」から届けてしまうと、解約率が高くなってしまうことを発見した。
理由としては、ユーザーは「全国のどこかのパン屋から届く」という体験を期待しているため、近郊エリアや隣の県から届くとガッカリするため。
それを防ぐために初回は「特定の距離」が離れたエリアから届けるようにして、ワクワク感を感じられるようにした。
31、配送会社の変更が「UXや解約率」にも直結した(トイサブ)
おもちゃのサブスク「トイサブ」では、コストの最適化のために、配送会社を変更したらクレームが殺到。一時期は解約率が1.5倍になってしまった。
ユーザーは配送会社も含めて、そのサービスの体験のように認識していて、配送まで含めてひとつのサービスのように捉えていた。
最終的には「配送会社をもとのA社に戻す」という判断をした。物流の品質が解約率に直結してしまうことも。
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さらに詳しい事例にご興味あれば、noteで配信している「月刊アプリマーケティング」のほうもぜひご覧ください。
【取材募集】2024年もプロダクトを取材しています。取材の相談はXのDMかメールなどからご連絡ください。アプリでもアプリ以外でもOKです。
【過去記事 ①】2022年の記事をまとめたバージョンです。
【過去記事 ②】2021年の記事をまとめたバージョンです。
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【過去記事 ④】〜2019年までの記事をまとめたバージョンです。