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ARR30億円を突破した「チャネルトーク」の成長に貢献した3つの戦略。その業界の「3社の満足」が成長を加速させる理由。

15万社が利用する「チャネルトーク」さんの日本展開を取材しました。

株式会社Channel Corporation CEO in Japan 玉川 葉さん

「チャネルトーク」について教えてください。

玉川:
世界22ヶ国で15万社のブランドに導入されている、顧客コミュニケーションツールです。本社は韓国にあり、東京とニューヨークにもオフィスがあります。

2018年に正式リリースして、ARRとしては30億円を超えています。継続率は約98%となっていて、日本は売上全体の約20%を占めています。

ARRは30億円以上(ARR3,000万ドル)

チャネルトークができたのは「顧客の声」を聞く課題に気付いたからです。もともと弊社は「店舗向けの分析ツール」の会社でした。売上は伸びていたものの、なぜかアクティブ率は低かったんですよね。

時間が経ってから、お客さんの店舗に行ってみると、衝撃的な事実がわかりました。店舗にパソコンがなかったんです。これを見て「我々ってこんなに顧客の解像度が低かったんだ…」とショックを受けました。

そこでつくったのが「チャネルトーク」でした。β版をつくって社内で「チャット対応数」を競うイベントを行うと1位と2位はエンジニアでした。エンジニアが「顧客の声」を聞いて爆速で開発していたんです。

これは価値があるぞと、サービスとして正式にリリースしました。

成長戦略①:丁寧な「記憶に残るセールス」から成長した。

玉川:
リリース後の手応えは、日本と韓国で違いがありました。韓国では3ヶ月で3,000社が導入してくれたのですが、日本ではたった30社でした。

初期に失敗したのは「広告」でした。日本は代理店文化が強いですし、広告で認知度を高めないとダメだよね、と広告を回したのですが、課題が顕在化していなくてメッセージも響かず、完全に失敗しましたね。

このままでは「日本では撤退するかも」というときに、1人でも会ってくれるなら、その人に「記憶に残る最高のセールスをしよう」と考えました。

広告の獲得単価は「1社あたり約3万円」かかっていたので、その予算で1万円相当のノベルティセット(Tシャツや耳かきなど)をつくって、セールスの際に「お話を聞いていただき、ありがとうございました!」と渡しました。

初期に製作したノベルティセット。

お話を聞いてもらえると、お客さんにも「課題」はきちんとあって。ノベルティの写真を「こんなサービスがあるよ」「顧客の声って大事だね」とSNSで共有してくれて、少しずつ広まっていきました。

日本企業は「何かリスクはないか?」と慎重に検討します。だから、セールスで信頼を1つ1つ積み重ねていく必要があったんですね。

今でも、新規顧客のリードの50%以上は、既存のお客さんかパートナーさん経由での紹介です。クチコミは大事なチャネルになっています。

成長戦略②:「顧客層と課題」にフォーカスしたら成長した。

玉川:
初期は、立ち上げ期のスタートアップに導入していただき、彼らに紹介してもらいながら、より大きなスタートアップへと導入を進めました。

この戦略は成功したと思います。大手企業から導入してもらおうとすると、最初から一定の完成度が必要です。検討期間なども長くなります。大手企業からはじめていたら、日本では撤退していたかもしれません。

スタートアップからはじめて良かったです。メッセージは「顧客の声を聞いて、PMFを探りましょう!」というものにしていました。

次は、D2Cブランドに広まりました。これはD2Cブランド向けのセミナーや情報発信を軸に顧客が増えていきました。

D2Cで服を売るモデルは、韓国で先行して流行っていて、広告やインフルエンサーマーケティングに頼り切った会社は、数年で消えていました。

韓国の先行事例をもとに「顧客の声を聞きましょう。顧客対応も大事です」とメッセージを発信すると、日本でも支持されて広がりました。

次に増えたのは、アパレルの大手企業でした。彼らはオフラインの売上がメインなので、コロナ禍の「オンライン化の波」で需要が高まりました。

その課題に向けて、ウェビナーを開催すると「このままではまずいね」と。オンラインの購入率や満足度を高めるには「接客が必要だよね」と共感してもらえました。

また「店舗の店員さんのやることがない」という課題も顕在化して、そのリソースを「オンライン接客に回そう」という流れを作ることができました。良い事例が生まれて、さらに口コミで広がりました。

2018年からの売上昨年比は「5倍・3.1倍・3.3倍・2.5倍」で成長中。

成長戦略③:その業界の「3社の満足」から成長がはじまる。

玉川:
成長がはじまるためには、特定のバーティカルな業界で、3社に導入・満足してもらうことが重要です。この条件を満たすと、業界内でのお問い合わせ数が加速していきます。

3社が満足してくれると、多くの会社が「うっすら検討している」という状態になり、セールスやマーケの効率が上がります。これを業界ごとに3社つくることが大切です。

この3社の中に「影響力のある会社さん」がいると、さらに成長します。

満足度を高めるには、はじめは「投資対効果」を無視することが大切です。専任の担当を置いて、直接会いに行って、全力でサポートします。

最初の3社の成功例ができると、そこから導入速度が上がります。3社まで1年かかっていたら、10社までは半年、20社までは3ヶ月と加速します。

はじめは効率が悪くても、満足するまでの道筋が徐々にマニュアル化され、必要なサポートコストも低くなり、セールスの必要性も徐々に減ることで、次第に経営効率も上がっていきます。

ちなみに、チャネルトークのセールスからの転換率は約50%です。そこから98%の継続率が出ていますが、オーガニックだと解約率が5%、直接セールスした場合は、解約率が1.5%とより低くなります。

解約率が低くなる理由は、導入企業が抱える課題に合わせて開発理由などを説明しながら、長期的にどう使用すべきかを提案しているためです。

データからわかったこと:チャットの「返信速度」が購入率を高める。

玉川:
データから「満足度の高い接客」を分析すると、シンプルに「3分以内に返信すること」が、満足度にめちゃくちゃ効果があるとわかりました。

実際に、チャットの返信時間を「3分以内」と「3分以上」で比べてみると、「3分以内」のほうが接客後の購入率は2倍以上も高くなるんです。

逆に「3分」という基準を超えると「10分後」も「30分後」もあまり差がありませんでした。ECサイトからもう離脱してしまっているためです。

お客さんは「期待値」よりも高ければ満足します。店舗で店員さんに声をかけて3分待ったら「少し遅いかな」と思いますよね。ECサイトも同じです。

返信を待ってくれる時間は「サイトの滞在時間」にも関係します。つまり、コンテンツ量によっても「待ってくれる時間」が変化するんですね。

コンテンツ量が多いと「長く待ってくれる可能性」が高まり、商品がひとつしかないようなサイトでは、その逆のことが起こります。

成功施策:「既存顧客」を起点にマーケティングしている。

玉川:
既存のお客さんの意見を聞き、お客さんが満足した経験を参考にしながら、意思決定することを大切にしています。

例えば、採用でも既存のお客さんに「これまでセールスを受けた中で、この人のセールスは良かった、という人がいたら紹介してください」と聞いて、そこからの紹介で採用につながった人が何人もいますね。

また新機能のリリースをするときも、事前に既存のお客さんに連絡してSNSで挙がった「お客さんの声」をプレスリリースに掲載して、お客さんを巻き込みながらSNSで盛り上げています。

広告クリエイティブでも、ただサービスを紹介するよりは、お客さんの事例や声を紹介した広告クリエイティブにしたほうが、クリック率や広告効果が大きく改善されましたね。

ちなみに、チャネルトークの顧客60社を分析すると、上位20%のお客さんの売上比率が高い企業ほど、売上の成長速度が高かったんです。

実際に、上位20%のお客さんの売上比率が80%を超える(平均は50%)会社は、たった2社だったのですが、その2社は明らかに成功していました。

売上上位20%のロイヤルカスタマーさんの売上比率が高いと成長するのは、彼らが新規のお客さんを連れてくるからです。おすすめされてから来るので転換率なども高くなります。だから成長するんですね。

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【取材協力】
チャネルトーク:https://channel.io/ja
玉川葉さん(@Jayor_jayor

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