ARRは7億円を突破。電話代行サービスの「fondesk」指名検索を伸ばした3つの施策。過去に数千万円の損失を出してわかった「事業の収益性」を高めるコツ。
電話代行サービスの「fondesk」さんを取材しました。
fondesk(フォンデスク)について教えてください。
脇村:
fondeskは、オフィスにかかってくる電話の一次対応を代行して、受けた電話の内容をチャットやメールで報告するサービスです。
2019年にサービス開始して、現在は4,000近くのお客様につかっていただいています。ARRとしては約7億円で、四半期の売上は1.7億円くらいです。
特徴としては、無料トライアルからの有料転換率が約90%と高いことです。ここにはユーザーの満足度があらわれているのかなと考えています。
自社からフォンデスクの専用番号に転送してもらうと、オペレーターがすぐ電話に出られるようになるため、最短で5分くらいでオフィスから電話が鳴らなくなります。
お客様の中には、電話を取っていると大きな声で話せないため、fondeskをつかいはじめてから「社内での雑談が増えた」という方もいます。
どんなところに着目して「運営の方向性」を決めていったのでしょうか?
脇村:
fondeskのリリース前後くらいに、約10名の経営者の方に会ったのですが、みんな電話代行の「サービスの名前」を言えなかったんですよね。
大手の企業名はいくつか挙がるのですけど、電話代行といえばこのサービスというのはなくて、ここにはすごく隙間があるなと感じたんです。
なので「いい名前、いいロゴ、いいコピー」を揃えて、オンラインで完結する優れたサービスをつくれば、想起されるサービスになれるはず。
というところで「指名検索」を増やしていけば、fondeskを想起してもらえるようになると考えました。
電話代行の便益って、シンプルに言うと「電話を代わりに出てくれる」それだけなんですよ。fondeskもそのコアな部分はあまり変わらなくて。
体験として大きく違うのは「電話に出てメモを送ってくれる」という点で、ここはチャット時代に最適化された体験になっている。
これが「選ぶ理由」としては強いからこそ、指名されて「一択になれる」というのもあったのかなと思っています。
実際に、2021年に実施したアンケートでは、お客様の約6割は「他社と比較検討せずにfondeskをつかいはじめた」という結果も出ていますね。
指名検索を伸ばす① 「記事広告で擬似体験」
脇村:
初期から実施したのは、記事広告を出して「電話代行の中から探す」ではなくて、fondeskを知って「つかうかどうか」を判断してもらうこと。
LIGさんの記事広告では、1記事から累計150件の登録がありました。読者層に合っていたのと「つかってみた」という体験型がよかったのかなと。
①つかいはじめが簡単であること、②つかった体験も良さそうなこと、導入前後にあるこの2点を伝えたことも、後押しになったのだと思います。
指名検索を伸ばす② 「事例バナーでクチコミ増」
脇村:
お客さんにご協力いただいて「事例バナー」を出したのも効果的でしたね。今でも効果が高いクリエイティブのトップ3は「事例バナー」です。
これは狙いとしては「友人や知人が出ている」という効果を狙ったものです。やっぱり「この人知ってる!」ってすごく反応しやすいんですね。
おもしろいのは、スクショして「こんな広告を見たよ!」とご本人に連絡される方も多いため、そこでfondeskの話題になることです。
バナーに出ている方って、熱狂的に推奨してくれるお客さんでもあるので、すると会話の中で「fondeskいいですよ」と言ってくれるんですよ。
なので、そういう「見えないクチコミ」を発生させる仕組みとして、人づてで紹介してもらいやすくする効果があります。
業界で有名なベンチャーの社長や、発信力の高い士業の先生などを中心に、事例になっていただけないかをお願いしていますね。
指名検索を伸ばす③ 「120媒体以上に露出した新聞の意見広告」
脇村:
新聞に「意見広告」を出したのもよかったです。賛否ありましたが、僕らのスタンスを伝えるきっかけや、思考の整理にもなりました。
fondeskを「買わない理由は何だろうか」という議論の中で、やっぱりそれって「既存のオフィス習慣」だよねと。そこに一石を投じたかったんです。
この広告は、数年たっても「あれ良かったよ」と言ってもらえたり、多くの人の記憶にも残存している、fondeskブランドの一部になった広告だなと思います。
新規顧客獲得などの、直接的な費用対効果だけで見ると「良くはない」という結果になっていますが、それだけではない影響がたくさんありました。
ここまで話題になったのは、基本はメッセージ性だと思います。あと新卒の方が入社する「3月31日」というタイミングも良かったですね。
新聞広告がテレビに取り上げられやすいのもあります。新聞で出ましたって「ニュースの入口」になりやすいんですよ。面として近いというか。
「こんな広告が新聞の朝刊に出ました」というキャスターさんの入りから、街中の人に見せて「どう思いますか?」と聞いていったり。
あと、定量調査もセットで出したのですが、メディアさんもそこの裏付けがないと、基本的には取り上げてくれなかったと思います。
情報番組って円グラフやデータを出しながらコメントや議論をしますよね。そこに対する「裏付け」もセットで出せたのも良かったなと。
運営において「これはやってよかったな」と感じる工夫があれば教えてください。
脇村:
fondeskって約4,000社のお客さんがいますが、決済は「クレカ支払いのみ」にしていて、請求書払いを受け付けていないんですね。
すると、これ不思議なんですけど、クレカ払いだと「値引きしてくれ」って言われないんですよ。ECの商品に値下げ交渉しないのと同じですよね。
大きな会社さんから「もう少し割引してくれたら導入します」と言われて、仕方なく割引で提供することってよくあると思うんですけど、これは「クレカ支払いのみ」にするとほぼ起こらなくなる。
これに限らず、声高に「文句を言う人」に特別対応をしない、高いコストを払わないということは気をつけています。
イレギュラーな対応や無理な交渉に合わせてフローも変えない。そのほうがお客さんに対しても誠実なのではないかと。
プロダクトを運営するときに「こだわっていること」があればぜひ教えてもらえますか?
脇村:
基本は「どんなお客さんに届けるか」にこだわります。サービスを導入して「成功するであろうお客さん」に届けることを大事にしていて。
なぜかというと、お客さんが成功するということは、その先にある「顧客あたりの収益」(LTV)を伸ばすことにつながるからです。
そうしないと収益性って伸びないんですよ。すると、お金がかけられず事業が縮小してしまうので、どのお客さんに届けるかはこだわるべきです。
お客さんの顔が浮かぶくらい理解して、いかに高い獲得コストを許容できるようになるかは、事業の拡大スピードにつながります。
僕もたくさんの新規事業を失敗して、数千万円の損失を出したこともあるのですが、ここはマーケティングをやる人には絶対に知ってほしいです。
例えば「こういう会社さんには、すごくfondeskが合うんだな」というのを理解するために、お客さんのオフィスも見学しています。
これを続けると「こういうオフィスの、こういうシチュエーションで電話に出ていたんだな」とか、お客さんにとっての価値が理解できます。
それを知れば、次に似たようなお客さん会ったときにも「御社には絶対に合いますよ!」と温度感を持って、おすすめできるようになるんですね。
これは商談のときにも活きるし、広告の訴求文をつくるときにも活きます。僕はお客さんに会わなくなったら終わりだと考えています。
-----
【取材協力】
株式会社うるる:https://www.uluru.biz/
fondesk:https://www.fondesk.jp/
脇村さん(@shwkmr)
【告知】月1万円から利用できて、2週間の無料トライアルもあるので、興味ある会社さんは、ぜひfondeskを一度試してみてください!とのこと。
ここから先は
月刊アプリマーケティング
プロダクト運営について学べるマガジンです。アプリやプロダクトの売上やユーザー数を伸ばしたい人にオススメです。月に7記事ほどお届けします。