縦型ショート動画はクオリティより素人感。ほぼ無風だったアプリ「PLUG」がTikTokでのチャネル発掘をキッカケにMAU12万人まで急成長した方法。
ショッピングアシストアプリの「PLUG」さんを取材しました。
「PLUG」について教えてください。
伊藤:
ECサイトを訪れたユーザーに対して、最安値情報・キャッシュバック・クーポンを届けるアプリです。2022年に正式リリースをしました。
現在は約25万ダウンロードに到達していて、月間のアクティブユーザー(MAU)は約12万人、月間流通総額(GMV)は約1億円となっています。※
仕組みとしては、Safariのブラウザ拡張機能をベースに、個人情報を取得しない形でURL情報から価格比較やキャッシュバックなどを提供します。
※ 価格比較やキャッシュバック経由でユーザーがECで購入すると、成果報酬(アフィリエイト)で収益が入るモデル(購入総額がGMV)
アプリ公開時の「初期の手応え」と、どうプロダクトが成長していったのかを教えてください。
伊藤:
2021年11月にβ版を出したときはあまりにも無風でしたね。公開したらバズるかもとすこし期待したのですが、本当に何も起こらなくて…。
それでユーザーを集めようと、1月頃にインスタに広告を出すと、1DLあたりの獲得コストが約1,000円という結果になったんですね。
いや、これはさすがにこれは高すぎるぞと。このまま広告でユーザーを拡大しても回収できないはず。何か良い方法はないだろうか…。
結局、最初の数ヶ月間(2022年の3月まで)は、ほぼユーザー数が伸びないという状況が続きました。
ただ諦めかけていたときに、取締役の大川が、スマホで撮った動画を、スマホで編集して、約1時間でつくった動画をTikTokの広告に出したんですね。
すると、その広告がすごく上手くいって。インスタで約1,000円だった1DLあたりのコストが、TikTokでは2桁円になったんですよ。
つまり、広告コストが1/10以下になって、広告の効率が10倍になった。広告からダウンロードした人も、離脱せずにアプリをつかってくれました。
β版では「維持率」を検証していて。ブラウザ拡張を「オフ」にされずにつかわれ続けるかをみると、維持率が非常に高いこともわかりました。
つまり、PLUGというアプリは「縦型のショート動画広告」と相性がめちゃくちゃ良いということが発覚して、そこから流れが変わったんです。
結果としては、約25万ダウンロードに到達するまでは、縦型ショート動画広告を中心に集めることができました。もしここに気づけなかったら、今頃PLUGはなかったかもしれません。
どうして「縦型のショート動画」とここまで相性が良かったのだと思いますか?
伊藤:
なぜ良かったかというと、縦型ショート動画って「最初の5秒」が勝負なんですよね。そこがPLUGとすごくマッチしていたからです。
Amazonの画面を出して「最安値が見つかりました!」と、クラッカーを鳴らすと「最初の5秒」で価値をわかってもらえたんですね。
最初に「なんだこれ?」と引き込み「そういうことか!」と5秒で伝える。この要素との相性がとんでもなく良かったわけです。
同じTikTokでも、インフルエンサーさんを起用した動画は全然伸びなくて、画面をただ写したような広告がすごく伸びた。
反応が良かった広告は、スマホの画面を録画して、無料アプリで編集して、自分でアフレコして喋る、本当にただそれだけのもの。
つまり、自信を持って言えることとしては、縦型ショート動画というのは、クオリティじゃなくて「素人感こそが大事だ」ということなんですよ。
とくにTikTokって、ユーザーが投稿する「CGM型のメディア」なので、間違いなく素人感があったほうがハマりやすいのだなと。
PLUGの立ち上げの経験談から「教訓」としては、どんなことが言えると思いますか?
伊藤:
最初の一歩目は「色々なチャネルを試すべきだった」と言えると思います。ひとつのチャネルでダメだったからといって、ユーザーに刺さっていないというわけではないということです。
ツイートが全然バズらなかった、プレスリリースに反応がなかった、そこは気にする必要はなくて、「当たる人に当たっていないだけだ」と考える。
人だけではなくて「場所や伝え方」という要素もあります。インスタとTikTokにいる人って、そこまで大きな差はないと思うんですよ。
でも、フォーマットが縦型動画になったことで「伝わるベネフィットの量」が全然違ってきて、ユーザーの反応も全く変わってきた。
モノは良いけれどユーザーに刺さっていないのだと思っていましたが、実際はチャネルも伝え方も悪くて、僕らがやり切れていないだけだった。
PLUGは「その商品は何なのか」を5秒でわかる形で、縦型動画でキャッチーに訴求したことで、プロダクトの成長がはじまったんです。
改善施策① ローディングUIで離脱者が9割減
伊藤:
PLUGの価格比較の機能で、ユーザーに価格比較を待ってもらうときの、ローディングのデザインを変更すると、離脱率が大きく下がりました。
具体的には、ぐるぐる回るだけの「スピナー型」から、進捗を伝える「プログレスサークル型」に変更したところ、離脱者が90%減になりました。
スピナー型だと「読み込み中」だとわかるだけでいつ終わるかわからない。3秒待っても終わらなかったら「固まっているかも…」と思われて、離脱するユーザーも出てきてしまう。
それを「プログレスサークル型」に変えると、今どれくらいの状況なのかがわかるようになって、みんな待ってくれるようになった。
待ち時間が早いか遅いかよりも、現在地がどこかを伝えたほうが、人間心理的には「待ってくれやすくなる」のだなと実感しました。
改善施策② 不満をぶつけるクッションを置いたらストアの評価が改善
伊藤:
価格比較の結果の画面に、フィードバックを受け止める仕組みを入れたところ、アプリストアの評価が改善されました。
なぜかというと、価格比較に不満が出てしまったときに、それをぶつける場所がないと、ユーザーはストアに低評価をつけてしまうためです。
具体的には、価格比較は検索エンジンなので「間違ったらごめんなさい」と言い訳をしつつ、不満点をアプリ内でぶつけてもらうようにしました。
すると、ストアにわざわざ評価として書かなくなるため、低評価が増えてしまう影響を最小限に抑えることができました。
どうしても不満が出やすいポイントには、意見をぶつけるクッションのようなものを置いて、その場で発散してもらうと良いかもしれません。
施策③ オンボーディングの工夫で有効化率改善
伊藤:
初期のPLUGでは、拡張機能を有効にするまでの手順がちょっと複雑だったため、当初は有効化率が20%くらいだったんですよね。
しかし、オンボーディングに色々な工夫を入れることで、有効化率を約70%ほどまで引き上げることができました。
例えば、有効化までのステップは動画で説明するよりも「3ステップ表記」にしたほうが有効化率が上がりましたね。
また、オンボーディング中に有効になっているかを「チェッカー機能」で、確認できるようにしたのも効果がありました。
つかいはじめるまでに「タイムラグ」があるケースも多いため、オンボーディング中に確認してもらう方がよかったですね。
PLUGのデータを分析して「わかったこと」はありますか?
伊藤:
PLUGを入れた後に、ずっと高い頻度でユーザーがつかってくれることです。実際に離脱率から計算すると拡張機能の維持期間は平均26ヶ月ほど。
20万ダウンロード以上という状況でも、高い数値を維持できているので、どんどんサービスの価値が積み上がることが期待できます。
ユーザーの約60%が「週1回以上」は機能をつかっていて、既存ユーザーからの売上が当月の8割以上を占める、というデータも出ています。
ECサイト側で面白い結果になっているのは、PLUGと提携したECサイトは、平均でCVRが約1.5倍、リピート率が約1.3倍になっていることです。
お得感にユーザーの気持ちが後押しされることで「お得になるなら今買おうかな」となりやすいのだと思います。
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【取材協力】
株式会社STRACT:https://stract.co.jp/
PLUG:https://lp.plugapp.jp/
伊藤さん:@hkrit0
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