着電数500万件を突破した「IVRy」が語る、再現性マーケティング。新規事業づくりの「10打席1安打の法則」と、LPに導入ロゴと実績で反応率2倍になった話
電話の自動応答サービス「IVRy」さんを取材しました。
IVRy(アイブリー)について教えてください。
奥西:
IVRyは電話の自動応答サービスです。月額3,000円から利用できて、自動応答の分岐も自由に設定できる機能などがあります。
2020年11月にリリースして、登録者数は累計で5,000アカウント、着電件数は累計で500万件を突破しています。
収益規模としては、少し前の数値ですが、2022年8月の時点(リリースから約1年9ヶ月)でARR1億円を突破しています。
特徴としては、導入業界の広さです。日本の業界って約100に分けられるのですが、そのうち50以上の業界で利用されていますね。
IVRyというサービスが「どのように生まれたのか」を教えてください。
奥西:
もともと僕らの会社では、新規事業を立ち上げるために、2019年の末から、毎月1つずつくらいプロダクトをつくって公開していました。
意図としては「事業を10個つくれば1個は当たるだろう」という精神でやっていたのですけど、その7個目くらいがIVRyだったんですね。
IVRyを出してみると「今までと明らかに反応が違うぞ」という手応えがあり、それで他の事業は辞めてIVRyに集中しようと考えました。
僕がリクルートで、新規事業をやっていたときも、事業を5個やって1個ようやく当たったという感じだったんですよね。
リクルートの優秀な役員がつくった事業でも、最初の計画なんて計画通りにならないことを考えると、ある程度は確率論なんだなと。
IVRyをつくったときは、最初はモックとLPだけつくって、リスティング広告(検索連動のキーワード広告)を出稿してみました。
例えば、Googleで「電話自動応答」といったキーワードに出稿すると、資料請求が1件あたり2,000~3,000円で獲得できたんですね。
具体的には、月2〜3万円(1日500〜1,000円)の少額の予算で出稿していたのですが、これで月に10件くらい資料請求があった。
そこからは、問い合わせしてくれた方から「管理画面がないとリアルタイムで確認できない」「早くつかいたいです」とすごい言われたので、管理画面をつくるなどの開発を進めていきました。
その時点で、このサービスは「顧客の課題を解決できてるぞ」という手応えがあったので、検証を重ねつつ事業を拡大していきました。
そこからの開発で「ここはポイントだった」と思うことがあれば教えてもらえますか?
奥西:
SaaSって面白いのが、機能を開発すると市場が広がることなんです。例えば「電話がかけられる機能」の有無で、つかってくれる層が変わる。
機能のあるなしで「そこまで出来るなら買います」という人が現れるので、僕らも一定の市場リーチ率が出るまでは、機能開発を繰り返しました。
顧客の声を聞きながら「この機能があれば喜ぶはず」という機能を、最初の半年くらいは追加していましたね。
実際に、いろいろ機能を追加していくと、この機能がなければこのお客さんは導入していないだろうな、という事例も増えていきます。
お客さんからの声は「どういう意見」を信じて機能を開発するといいですか?
奥西:
ホリゾンタルSaaSの場合は「再現性がありそうか」を見ることが大切です。つまり、そのお客さん固有のユースケースではなくて、どの業界でも再現されるものなのかどうかを見ます。
自分たちの目の前にいる、N=1は喜ぶかもしれないけど、N=10,000が喜ばないものであれば、後回しにしたほうがいいというイメージです。
あとはUIの「このボタンがわかりにくい」という話も、そこを頑張って改善するよりは、機能を追加したほうがインパクトは大きい。
そのほうが、新しい市場を開拓できたり、次の仮説検証ができるので、細かい改善はひとまず優先順位を落としていました。
IVRyの「マーケ施策」について教えてください。
奥西:
僕らは50業界に向けて、基本はWebマーケティングを中心に、再現性があるかどうかを意識しながら、マーケティングを実施しています。
業界のことは「ロイヤルカスタマー」に聞くのが一番です。僕らもお客さんに教えてもらったチャネルから、顧客数を伸ばしています。
例えば、以前にお客さんが「IVRyは今の医療業界に必要なサービスだ!」と言ってくれたことがあって。それで「どうしたら届きますかね?」と聞くと「FAXを送れ」と言われたことがありました。
FAXはみんな見ていて、今本当にみんな困っているから、普通はFAXで営業されるのは嫌だけど、今はうれしい人も多いと思うと。
半信半疑でFAXを送ってみると、Webマーケティングと同等くらいの効果があって、そこからお客さんがすごく増えました。
今坂:
展示会の出展もお客さんに聞いてはじめましたが、これもオペレーションの改善を重ねていくと、めちゃくちゃ良い成果が得られました。
例えば、有効だったのは「来場者へのヒアリング」です。展示会に来る方は「IVRyを知りたい!」と思って来ていないですよね。
そこで「電話関連部署の決裁者か」とか「課題を持っているか」を聞いて、温度感の高い人にはその場で商談を設定するようにしました。
初期の失敗としては、ひたすら名刺を集めるだけで「ニーズの低い人」を商談に引き上げようとしてしまったこと。翌日になると連絡がとれなくなるケースも多いため、その場で商談をセットすることも重要でした。
すこし関心がある層への、商談アポ率を高める工夫としては、電話する日時を手書きして名刺をお渡しすると、アポ率が1.8倍になりました。
例えば「平日の朝・昼・夕方だと、どこがお電話つながりやすいですか?」と相手に時間を選んでもらいます。もし「朝がつながりやすい」と言われたら「何月何日の10時にお電話しますね」と名刺に書いて渡す。
これだけでアポ率がめちゃくちゃ上がったんですね。相手に「時間を選んでもらう」というのがひとつポイントだったようです。
成功施策① 「LPにロゴと実績で反応率が改善」
今坂:
LPのメインビジュアルで、導入企業さんのロゴを流して、数値も載せるようにしたところ、資料請求の遷移率が2倍くらいに改善されました。
理由としては「安心感が増したため」だと思います。導入企業やアカウント数を見てもらうことで、安心感や信頼感の醸成につながりました。
日本のユーザーはとくに「多くの人がつかっていること」や「メジャーな会社がつかっていること」に安心感を覚えやすいのだと感じます。
成功施策② 「電話GPTで会社の認知度アップ」
今坂:
ChatGPTと電話で話せる「電話GPT」を公開すると、SNSやメディアで話題になったことで、会社の認知度アップにつながりました。
約1ヶ月で電話GPTへのコール数は、約2万件くらいの利用があり、資金調達のリリースと合わせて「指名検索」も向上しました。
展示会に出ても「電話GPTのところだよね知ってる」と話しかけられるようになるなど、効果を感じましたね。
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【取材協力】
株式会社IVRy:https://ivry.jp/company/
IVRy:https://ivry.jp/
奥西さん:@onishiki_plus
今坂さん :@ryohei05
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