月間の流通金額64億円。マイベストが語る購入につながるコンテンツの制作ポイント。結論ファーストの長文記事では「納得感」が醸成されにくい理由。
選択サポートサービス「マイベスト」さんを取材しました。
「mybest」について教えてください。
吉川:
国内最大級の選択サポートサービスです。ユーザーの選択をサポートして、選ぶなら「mybest」と生活インフラとなれることを目指しています。
月間利用者数としては約3,500万人、サービスを経由して生まれた購入金額である、月間の流通金額は64憶円(2022.10)に成長しています。
選択という事業領域は、その次に「購入する」といったお金を支払う行動があり、利益が出やすい(プロフィッタブル)のが特徴だと思います。
言える範囲でいうと、過去5年に東洋経済さんの「すごいベンチャー100」に載ったIPOした会社の中では、一番レベルに利益が出ている水準※です。ただマイベストはここに載ったことはないのですが。笑
※ 営業利益で14億円以上は出ていることに。
サービスの着想と「初期の仮説検証」をどのように進めていったのか教えてください。
吉川:
モノやサービスを選ぶときに、ネットの検索結果は信頼できない。選ぶことを楽しくカンタンにしたい。それが「mybest」をつくったきっかけです。
また大量の商品が溢れる現代では、「どこで安く買うか?」よりも「何を買えばいいのか?」のほうが、大きな課題だとも思えたんですね。
最初の仮説としては、選択という「横串で評価されるサイト」がつくれるのかどうかを検証しました。SEO的に成立するのか。
基本は「ジャンル特化のサイト」が検索上位を占めています。その中で選択がテーマのサイトが「複数のジャンル」で検索上位になれるのか。
「オールジャンル × 行動の横串」で検索上位をとれているサービスって、ECを除くと価格.comくらいだったので、まずはその再現性を検証しようと。
そこで最初の1年間は、基本は1人(+業務委託)でカフェで作業をして、記事をつくって検索順位が上がるかを、ひたすら検証しましたね。
半年間は結果が出ませんでしたが、1年経つと記事が検索上位になり「横串で刺せるんだ」とわかってきて、キャッシュが回ることも確認できました。
検索順位が「複数ジャンル」で上がってきて、SEO的にも評価されたとき、これはいけるぞと思いましたね。そこでサービスを拡大しました。
結果としては、1,000万円の自己資金で起業して、1年目に700万円ほどつかった時点で黒字化できました。そこからはずっと黒字が続いています。
新規事業を立ち上げるときの「5つのポイント」
吉川:
僕は、カカクコムの新規事業準備室で働いていたとき、そこで100も200も新規事業を考えてはボツになる、ということを繰り返していました。
その体験から「いい事業」をつくる条件として、①ニーズ ②マーケット ③プロダクト ④マーケティング ⑤マネタイズ 、この5つを抑えることが大事だとわかってきました。
とくに一番大事なのは「ニーズがあるか」だと思います。
新規事業の失敗理由は「ニーズがあるようで、実はなかった」ということがほとんどです。あったらいいなは、なくてもいい事業なんですよ。
そのため、ユーザーが不満に感じることは何か、不足に感じることは何か、これを適切に捉える「ニーズの発見」は最重要で最難関なポイントです。
ユーザーニーズを見極める方法は「リプレイス対象」を明確にすることです。例えば、LINEの場合はリプレイス対象はメールです。
人の行動などを分析・観察して「ここを置き換えられないか?」と考える。リプレイス対象のあるサービスは「ニーズがある」と言えます。
mybestのリプレイス対象は、Googleと検索結果に表示される各メディアです。
あと、カカクコムで新規事業をやってきた経験の中で、お金がないと「お金を稼ぐ施策」を考えることに囚われてしまうな、と感じました。
最初に稼げる仕組みがつくれると、お金はあるから「ユーザーのための施策を考えよう」となる。すると、ユーザーもお金もさらに増える。
なので、最初にこの「良いスパイラル」をつくりたくて、mybestのときにはミニマムに手堅く検証するスタイルを取りました。
mybestの運営で「意外な結果になった施策」などがあれば教えてもらえますか?
吉川:
意外だったのは、みんな「早くおすすめ商品を知りたいはずだ」と思っていたのですが、実はそうでもなかったことです。
mybestの記事内の情報の並べ方って、① 選び方 → ② ランキング・商品紹介という順序ですが、これを逆にしたらCVR(購入率)が悪化したんです。
つまり「ユーザーは早く結果を知りたいはず」と思って、ランキングを最上部に置いてみたら、これは実際にはめちゃめちゃ数字が悪かったと。
まずは、詳しい選び方を見て「この記事はちゃんとしている」と思えるかが大事だということですよね。極論、読み飛ばしていたとしても「この記事は信じられるっぽいぞ」と思ってもらえるか。
言い換えると、前座にある情報で「納得感」を積み上げることで、後に置かれている情報の「信頼度や説得力」が積み上がるということなんですよ。
最近のSEOって長文がめちゃくちゃ強いんです。誰もが「長文ってウザイ」と感じると思うのですけど、それでも検索上位には長文の記事がくる。
これはやっぱり長文になるほうが、SEOだけではなくユーザー視点でも、説得力や信用度が増すから、という理由かなと思うんですよね。
例えば、ミュージックステーションの特番で、100位からランキングを発表していくと、1位の曲にめちゃめちゃ権威性を感じると思うんですね。
これが3位からの発表だとまた感じ方が変わる。これは「納得感」の話なのかなと。同じ調査でも伝え方や順序で価値が変わってくると。
他にmybestで「成功した施策」を教えてください。
吉川:
記事上部にセクション単位で移動できる「タブ」を表示、ナビゲーションの機能を充実させたところ、CVR(購入率)が6%改善しました。
ランキング(比較表)などに「直接飛びたい人」が多いのだと思いますね。そのニーズに応えたことで数値が上がったのかなと。
だからといって、ランキングを「最上部に置く」というのは違うようで、コンテンツがしっかりしているのを認識した上で、ランキングを見るという順序が大切なのだと思います。
mybestの運営で「ここはポイントだった」と思うことがあれば教えてもらえますか?
吉川:
オペレーションの磨き込みです。分解すると「人 × 設備 × ノウハウ × システム」となりますが、ここが最大の強みになっていますね。
マイベストでは、おすすめのモノを紹介するために、月に数千万円分の商品を購入してきて、社内で実際につかってから記事をつくります。
例えば、設備は1,000坪のオフィスに、何十箱の段ボールが毎日届いていて、荷解きするだけのアルバイトの方がいます。人件費や商品代も含めると、1記事に1,000万円以上かけている記事もあるんですよ。
物撮りブースも10個くらいあって、カメラマンがずっと物撮りしています。土日も交代制でオフィスをあけて、設備の稼働時間を伸ばしています。
僕らと同じアプローチの競合がいないのは、こうしたオペレーションまで真似しようと思うと、かなり難しいからなのかなと思います。
品質の高いコンテンツをつくるために「どんな基準」で採用を進めていますか?
吉川:
社内では「ガイド」と呼んでいる制作メンバーは、スキルよりも「何かが好きな人・詳しい人」を採用していますね。
なぜなら、商品の紹介で大切なのは、執筆スキルよりも「その商品が好き」という気持ちだから。好きという情熱はかけがえのないものです。
執筆スキルは後から身に着けられます、でも情熱はそうではないんですよ。
なので、僕らはジャンルごとに「専門性のある人」を置きます。家電量販店で働いていた人を採用したり、元スポーツトレーナーを採用したり。
この「人の専門性」というのが、クオリティにつながりますし、専門性の高さからくる権威は、ユーザーから見ても信頼度につながります。
Googleは「E-A-T」を評価します。本質は保証だと思います。最強なのは「この人が言うなら」と思える個人が内容を保証することかなと。
最終的に「E-A-T」は個人に紐づくと思うので、個人の「E-A-T」を高めていくことも、今後のSEOでは重要になってくると考えていますね。
コンテンツ制作について
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【取材協力】
株式会社マイベスト:https://my-best.com/company
mybest:https://my-best.com/
CEOの吉川さん:@tryskw
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