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アプリ1,000万DLでもマネタイズに失敗。約30人いたチームメンバーが全員やめた。Nagisaが語る「FAM」の復活劇とBtoBtoCサービスの立ち上げポイント。

ファンクラブ運営プラットフォーム「FAM」さんを取材しました。

株式会社Nagisa Fantech事業部プロデューサー 古川 巧さん。Nagisaは2020年10月にメディアドゥの子会社になっている。

古川さんの事業部について教えてください。

古川:
僕はNagisaで約10年働いていて、いろんなアプリをつくってきました。でもダウンロード数は伸びたけど、どれも十分なマネタイズができなかった。

結果からいうと、売上を立てられなかったが故に、僕の事業部の自分以外のメンバーが全員やめてしまって、最終的には僕ひとりだけになってしまったんですね。7年かけて20~30人が辞めて1人になってしまった。

最後は信頼していたエンジニアと2人だけになって。そこから1人になって。RPGでいうなら、勇者としてパーティを組んで冒険に出たけど、武闘家も僧侶も魔法使いもやめてしまった。そんな感じの絶望感でした。

合計で1,000万ダウンロード以上されている。

Nagisaには、漫画事業部と新規事業部があって、漫画は利益が出ていたけど新規事業のほうはずっと赤字。そうなるとみんな手応えを感じにくい。

全社会では「漫画事業部が利益○○円です!」と表彰される。僕らのチームは赤字で「また次に頑張ろう」とそれを見ているわけです。

もちろんそこを責められる訳ではないですよ。でも正しいことをやっているかわからなくなって息苦しくなっていく。それで辞めてしまうんです。

みんな本音は隠します。でも飲み会で話を聞くと「つくっているものが評価されないのがつらくて、他社に興味がわいていった」と。そうして転職していく人が多かったです。でもそれは当然だなとも思います。

そこから学んだのは「売上は最大の共通言語なんだ」ということです。目に見える売上を早く出すことは、チームのマネジメントにも影響します。

売上がないと「売上はあがっていないけど、俺たちスゴイことやってる!」これを僕もずっと言い続けないといけないし、みんながそれを信じ続けないといけない。それだと長くは続かないですよね。

初期に売上が一定はあがっていないと、事業計画をつくるのも難しい。存在しない売上を空想のロジックでつくるって「地獄への入り口」なんですよ。

なぜなら「僕を信じてくれ」と言い続けるしかないから。これもメンタル的にめちゃきつい。売上が伸びていればそれだけで信じてもらえます。

その状態からどのように事業が好転したのでしょう。

古川:
転換点になったのは、BtoCから「BtoBtoCモデル」に切り替えたことでした。そうすると、売上が立ちやすくなり安定成長できたんです。

具体的には、2.5次元・声優特化の配信アプリ「ONSTAGE」から派生した、サブスク型のファンクラブがつくれる「FAM」が成長していて、現在のチームは約30人(アルバイトなど含む)まで増えています。

FAMは、β版の公開から約1年(正式版は2022.7月公開)。事務所さんと一緒にファンクラブを運営するサポートをしていて、MRR(月間定期収益)としては約2,000万円、ARR(年間定期収益)は約2.4億円に到達しています。

生配信でアイテムを投げると「限定動画」が届くという方式で、1回の配信で売上200万円を超える事例が出てきたり、タレントさんのファングッズを販売して売上が数千万円、という事例も出てきています。

FAMを立ち上げるときに「ここはポイントだったな」と思うところを教えてください。

古川:
FAMはファンクラブをつくるサービスで、BtoBtoCモデルだと「芸能事務所」がお客さんになるので、事務所に認めてもらわないといけません。

ところが、畑違いのITベンチャーのやつがきて「これ使ってください!」と突然お願いしたところで、当然信用してもらえないんですよ。

なので、まず事務所さんに信用されないといけない。例えば「台本がないと配信はやらない」と言われたら、つくったことない台本も必死でつくる。

こちらの考えを押し付けるのではなくて、信用を貯めてから提案して売上をつくる。そこではじめて「こいつ正しいかも」と思ってもらえます。

最初は何ヶ月もかけて成功事例をつくりました。これを続けると事務所さんがどう考えているかわかるし、少しずつ信頼を得られるようになります。

そして、ひとつでも「このタレントさんはこうです」という成功事例ができると、○○さんのところもやってるんだねと、興味を持ってもらえます。

事例ができればグッと広がります。舞台俳優さんは共演することも多いし、マネージャー同士などの、業界の横のつながりが強いからです。

これまでに「成功した施策」を教えてください。

古川:
ONSTAGEでの配信形式は、もともと「番組形式」にしていたのですけど、ファンと向かい合う「対話形式」にしたら、一気に数値が改善しました。

番組形式だと、演者が横を見てしまうんですけど、対話形式だと顔がファンのほうを向くから、距離感が近くなって「会話してる感」が出るんですよ。

実際に数値としても、投げ銭のアイテムの課金率が1.5倍になって、配信のコメント量も2倍以上になりましたね。

僕らは、番組形式でしっかりセットを組んだほうがいいと思ったけど、それだと距離が遠くなってしまって、課金されなかったんですね。

大きなドームよりも小さい劇場でやるほうが、声も生で聞こえるしファンと向き合ってる感が強くなって良い、という感じかなと。

顔の距離も10メートル先にいる人よりも、30センチの距離しかないほうが、心の距離感が近くなって、没入感が上がるのだと思います。

ほかにも「成功した施策」などはありますか?

古川:
生配信って感動したタイミングで「課金してアイテムを投げる」という人が多いのですが、この感動って人から人に伝播するものなんですよね。

なので感動を可視化することは大事でした。例えば「パチパチ」という拍手のアイテムを50円で用意すると、よかった瞬間に拍手が飛びはじめる。

そこから連鎖するように「数千円分のアイテム」を投げてくれる人が出る。つまり、感動を可視化すると熱量の総量が増えるんですね。

スタジアムでの野球観戦でいうと、周りがワッと盛り上がったら自分も楽しくなる。その瞬間にビールもめちゃくちゃ売れる。これに似ていますね。

一方的にコンテンツを受けるのではなく、周りが盛り上がっているから自分も盛り上がる。これを設計として組み込むのは大事だなと。

あとは「フリとオチ」も大事で、歌なら「ただ歌う」ではなくて、お題をもらって「リクエストの曲を歌う」ほうが、より盛り上がります。

ファンクラブをつくるときは何を見て「ファンの熱量」を予測すると良いですか?

古川:
ファンクラブの入会数を推計するときは、ツイッターの「何気ない日の自撮り」のリツイート数を見るとわかります。これは本当に「初動の数値」との近似値になりやすいんですよ。

ツイッターは「文章主体」なので、日本語がわかる日本人比率が高いのと、文章を読むくらいファンになっている人に絞られます。インスタやTikTokは「ビジュアル主体」なので、感覚的に見られる分熱量の低い人も多い。

共演者との写真だと「共演者のファン」も含まれるし、作品に出た写真なら「作品のファン」も含まれてしまう。それだとわからないんです。

インスタのフォロワー数が、50万人以上いるタレントさんが、ファンクラブを開設すると100人しか入らないって、本当によくある話なんですよ。

キーになるのは「感動体験を与えているか」です。例えば舞台俳優が与える体験は最高の感動体験です。表情や演技で生で感動を与えられるから。

生配信者もそうで、例えば「24時間配信で何かをクリアする」って、雑談ではなくドラマを届けることで、ファンに感動体験を提供しています。

グッズ販売でのポイントがあれば教えてください。

古川:
グッズは「コンプリートしたい層」が一定数いるので、「コンプリートできないかも。だから買わない」とならない設計にするのが大事です。

ブロマイド20枚を販売するときに、①完全ランダムで20枚売るパターンと、②中身を見せて4枚ずつ5パックのパターンで、売ったことがあって。

どちらが売れたかというと、②の「4枚ずつの5パック」で販売したほうで、売上が34%くらい高くなったんですね。

ファン心理としては、完全ランダムだとコンプリートまで遠くて心が折れてしまうんです。後者なら5パック買えば確実にコンプリートできます。

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【取材協力】
株式会社Nagisa:https://nagisa-inc.jp/
FAM:https://thefam.jp/

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