理由の理由には「客の本音」が隠れている。「はじめる理由」と「つづける理由」は違う。小さな会社でもできる「インタビュー調査」結果を出すコツを歴戦のマーケターに聞く
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理由の理由には「客の本音」が隠れている。「はじめる理由」と「つづける理由」は違う。小さな会社でもできる「インタビュー調査」結果を出すコツを歴戦のマーケターに聞く

アプリマーケティング研究所

DeNAやメルカリやAmazonで働いてきた、マーケターにインタビュー調査のコツなどを聞きました。

デライト・ベンチャーズ マーケター 加古静香さん。現在は、デライト・ベンチャーズというベンチャーキャピタルで、投資先のマーケティング支援などを担当している。

インタビュー調査をするときは、まずどのようなことを知っておくといいでしょうか。

加古:
まず、インタビュー調査というのは「理由を深掘りすること」が、主な目的になってくるかなと思っています。

アンケート調査だと、300人に聞いて「30%がこう言いました」のように、数字で判断して納得感を持つものだと思うんですね。

逆にインタビュー調査は、通常少人数に深く話を聞くことが多いので、「10人中5人がこうでした」と、数字で判断するものではないんですね。

そうではなくて、「このアプリをどんな理由でつかっているか」みたいな、「なぜを深掘りする」のがインタビュー調査です。

理由の理由を深掘りすると「本当の気持ち」が見えてきます。それをもとに仮説を検証したり、次のアクションに進んでいくんですね。

インタビュー調査で「ここは押さえておくべき」というポイントを教えてください。

加古:
大事なポイントは「誰に聞くか」です。誰に聞くかでまったく答えが異なることも多いので、そこは神経を尖らせて準備すべきだと思います。

なので、事前の仮説をアンケート調査で検証した上で、インタビューの対象者を選定することも多いですね。

例えば、アンケートで年収の高い人ほど、アプリの利用意向が高い、若者のほうが定着率が高いとわかったら、そうした方を初期ユーザーとして対象にしたりします。

あと、コアユーザーと一般ユーザーでは、かなり感覚が違うので、業界人などあまり詳しい人だと、マス広告の調査には適さなかったりします。

ユーザーの本音を知るために「こうするといい」という工夫があれば教えてください。

加古:
購入や利用の意向を「5段階で表現してもらう」ことです。例えば、「ぜひ購入したい」を5点、「購入したい」を4点のような感じです。

なぜかというと、意向に指標をつけてもらうと、なんとなく発した気持ちや雰囲気の程度が、明確になっていくからです。

例えば、CM案を見てもらって、「このCMどうですか?」「いいですね!」の「いいですね」って、本当のところがよくわからないですよね。

それが、5つのCMの中で「AとCが4点」だったら、どちらが良かったか、なぜそう思ったのか、比較したり掘り下げたりできます。

「5種類のCMの中で、AとCが4点でした。AとCだとどっちが良いですか?」
「どちらかというと、Cですかね」
「AとCの違いはなんですか?」
「Cのほうが楽しそうなので!」
「Cのどのあたりが、楽しそうに見えましたか?」
「出演者の笑顔や服装が、なんとなく楽しそうに感じました」

その人にとって「なぜ良いか・悪いか」を判断するために5段階をつけて、本音が理解できるまで深掘りする。そうすると、社内や関係者にも納得してもらいやすくなります。

リサーチ結果を活かすときに、「ここは意識したほうがいい」というポイントがあれば教えてください。

加古:
顧客が「はじめて商品を買う理由」と、顧客が「つづけて商品を買う理由」は、意外にも異なっているケースが多い、ということです。

例えば、はじめは「暇つぶし」にゲームをインストールしたけど、そこから「友達ができたこと」が楽しくて続けている、みたいな。

なので、顧客が「続けている理由」をリサーチして、それをストレートに新規顧客に伝えても、心が動かないことが結構あるんですよ。

スマホ決済をつかう人に、なぜ続けているか聞くと、 「財布を持たなくてもいい」「スピーディに払える」という意見が多いんですね。

でも、使ってみないと「便利さ」って分かりづらいので、「お財布なしで、支払いスムーズ」と打ち出しても、反応は良くないと思います。

なので、結局は 「○%還元。めっちゃお得!」のような、強力なドライバーをつくって、利用者を伸ばしている会社が多いのかなと。

フラットな回答を引き出すコツ① 「仮説1つだけをぶつけない」

加古:
基本、インタビューで「仮説」をぶつけるのはNGだと思います。なぜなら、その仮説に「お客様の回答」を誘導してしまうからです。

できれば、「○○なのはなぜですか?」と問いかけます。もしそれだと答えづらくて仮説を挙げる場合は、仮説は3つ以上挙げるようにします。

例えば、「スマホ決済をつかう理由は、早く支払えるからですか?」と仮説を1つぶつけると、部分的にそうかもなと思ったら、「そうです」と安易に答えてしまいやすいんですよね。

3つ以上の仮説を挙げることで、フラットな回答を答えてもらいやすく、「それ以外の回答」も引き出しやすくなります。

フラットな回答を引き出すコツ② 「正解はないと伝える」

インタビュー調査で、「対象者の質」を上げるための、いい工夫があれば教えてください。

加古:
謝礼をお支払いする調査の場合、わりと「対象条件に本当は合わない人」が紛れ込んでしまうことがあるので、それを防止するのはよくやります。

アンケート調査からリクルーティングする場合は、「設問をよく読まずに適当に回答する人」を弾くために、「読めば正しい回答を選べて、読まないと間違える質問」を入れたりしますね。

例えば、「この質問は3つ目の選択肢を選んでください」と書いておけば、3つ目を選んでいない人は、適当に回答しているとわかります。

また、対象者が決まった後に「再確認の電話」もしますね。事前にこういう条件の方だと確認していますが、正しかったですか?という感じです。

なるほど。ほかに「対象者のイメージ」を膨らませるために、できる工夫はありますか?

加古:
アンケートに、行動の理由を聞く設問を入れると「人物像」を把握しやすいです。なぜなら、行動の理由には「人間性」が滲み出やすいから。

例えば、スマホ決済をつかう理由が、「急いでいるときに早く支払いたい」だったら、忙しい人なのかなと人物像がイメージできます。

ほかに、芸人さんを起用したCMを考えているなら、よく見るテレビ番組や好きな有名人を聞けば、普段から見ていそうな人を選びやすくなる。

逆に、「それほどお笑い番組を見ない人」を連れてくれば、そういう方にとっても「好感度の高いCM」になりそうか、検討しやすくなりますよね。

たしかに。ほかにはどうでしょうか?

加古:
もし、リテラシーの高い人の話を聞きたいと思ったら、質問から「ニッチなサービス」をつかっているかを、見るのがいいと思いますね。

例えば、日経新聞を読んでいる人よりは、NewsPicksを読んでいる人のほうが、ニッチで尖ったものをつかっている可能性が高いと思います

決済サービスでいうと、PayPayよりApple Payをつかっている人のほうが、よりリテラシーが高い可能性があります。

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【取材協力】
デライト・ベンチャーズ:https://delight-ventures.com/
加古さん:@kakosiz

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