メルカリに「梱包と発送のお任せサービス」を入れたら「小さめサイズ」で初出品する人の比率が高くなったワケ。MAU 1,755万人のフリマアプリに「配送方法」が与える影響
国内MAU1,755万人のフリマアプリ「メルカリ」さんにお話を伺いました。ダイジェスト版は漫画でまとめています。
・メルカリ川村さん ツイッター(@shun__kawamura)
・メルカリ(https://www.mercari.com/jp/)
【メルカリさんより告知】川村さんの部署で、プロダクトデザイナーやUXデザイナーの採用を募集中とのことで、ご興味ある人はどうぞ。
以下、note購読者向けに、インタビューの「テキスト+図解版」の詳細記事を配信しています。
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※ 株式会社メルカリ Logistics&Transaction , Product Owner 川村 俊輔さん
川村さんが働いている部署について教えてください。
Logistics&Transactionという、メルカリ上での「物流と取引」から市場を拡張していく、30名くらいの部署で働いています。
例えば、簡単に配送できる仕組みを用意することで、メルカリで取引される商品の幅を広げたりする、といった取り組みをしています。
「メルカリと発送」のおもしろいデータを教えてください。
メルカリで売った商品の、集荷や梱包をおまかせできる「梱包・発送たのメル便」というサービスを、リリースしたときの話です。
これは小さめの商品から、洗濯機やゴルフクラブまで、ドライバーの方に渡すだけで、梱包・発送してくれるサービスなのですが、
これを公開したところ、「初めて出品した人」の利用が増えて、通常の「らくらくメルカリ便」と比べると、初出品率が約2倍も高くなりました。
なぜ「梱包・発送のおまかせサービス」を出したら、「初めて出品する人」が多くなったんですか?
なぜかというと、もちろん「梱包や発送をしなくて良い」というところに、理由はあったのですけど、
意外だったのが「80サイズ」という、スニーカーくらいのサイズで送る人が多かったんです。想定より「小さいもの」にニーズがあった。
一見、小さいものなら「自分で梱包や発送すればいい」とも思えますけど、育児で忙しい主ふの方など、あまり外に行けない方もいます。
そうした方にとっては、小さなサイズでも「梱包や発送を任せられる」というところが、出品モチベーションにつながっていたんです。
なるほど、それは納得ですね。
ちなみに、80サイズを通常の「メルカリ便」で送ると900円かかりますが、それが「たのメル便」だと1,700円かかって、約2倍の価格になります。
それでも頼む人がいたんです。売りたい気持ちはあっても、梱包・発送がネックになっていた人って、想像以上に多かったんだなと。
当初のイメージだと、もっと大きいテレビなどでつかわれると思ったので、小さなサイズでも使われたのはびっくりしました。
ほかに「たのメル便」で特徴が出たデータってありますか?
「たのメル便」で出品された場合の、「出品者全体」と「初出品者」での商品単価を比べると、初出品者の商品単価が2倍高かったんです。
これは、価値ある商品を売りたいけど、リサイクルショップに持ち込むと安くなってしまいそうだ。とはいえ、メルカリを使うのも面倒だと感じていた方が、「たのメル便」をきっかけに出品してくれたのかなと。
「たのメル便」って、個人的にも便利だと思っていて。ヤマトのドライバーさんが2人来てくれて、購入者の自宅に設置までしてくれるんです。
お金をかけて粗大ゴミに出すよりは、メルカリで売って「たのメル便」で出したほうが、お得なケースは多いかなと思っています。
他に配送関係のおもしろいデータがあれば教えてください
全国の5,600箇所にある「PUDOステーション」という宅配便ロッカーから、メルカリの商品を発送することができるのですが、
PUDO発送をつかっている方は、つかっていない方に比べると、メルカリの継続率が2倍くらい高い、というデータが出ています。
また、PUDO発送を使っている方は、1人あたりの出品数も1.3倍ほど高い、といったデータも出ていますね。
これはあくまで相関関係で、発送を簡単にすることで「継続率や出品数」に良い影響を与えられるかも、というデータです。
ちなみに、緊急事態宣言の時期は、みなさん密を避けて非対面にいくので、コンビニ発送が少し減って、PUDO発送が伸びる瞬間もありました。
コンビニなどではなく「無人の宅配ロッカー」からの配送になることで、ユーザーからはどんな意見が出ますか?
以前インタビューした方は、頻繁にコンビニで発送するから「コンビニ店員に『メルカリマン』と呼ばれているかも...」と話していて。
つまり、最寄りのコンビニからよく発送していると、店員に「またあの人来た」と思わわれしまいそうで、ちょっと恥ずかしいと。
これは、ローソンの「スマリ」という、投函ボックスの話なのですが、無人だとそういうこともないので気楽だ、と話していました。
あと、コンビニのレジで発送しているときに、後ろに並んでいるお客さんの視線が気になる、という意見もよく聞いたりします。
ツイッターでは「PUDOが楽だからメルカリ続けてる」とか「近所にPUDOができて発送が楽になった」という意見も見かけます。
最近「ポスト投函で発送できるサービス」も始めましたね。
はい。メルカリで売れたものを、郵便ポストから発送できる「ゆうパケットポスト」を、日本郵便さんと企画・設計しました。
ちなみに、メルカリの出品物って、この「小型サイズ」が多いんですよ。
僕は週末に伊豆によく行くのですが、伊豆って最寄りのコンビニまで5キロあったりする。するとメルカリの発送も大変だなと思うんですね。
でも、徒歩10分の場所にポストはあったりする。なので、そうした地域に住む方にとっても、発送が便利になると良いなと思います。
どんな経緯ではじまったんですか?
コンビニより多くある郵便ポストから「メルカリの商品が送れたら便利だ」という感じで、日本郵便さんとの雑談からはじまりました。
そこから、時間をかけて準備しましたね。日本郵便さん側でもシステムを変更したり、全国でのオペレーションも考える必要もあるので。
実現するまでに「どういう課題」がありましたか?
郵便ポストって全て同じところに入るので、どの箱にどの商品が入っているか、どう商品とサーバー上のデータを紐付けるか、という課題があって。
そこはどう解決したかというと、箱ごとにユニークなQRコードを印刷して、固有のIDを持たせることで、商品データを管理できるようにしました。
大量につくる前提であれば、ユニークなQRを箱に印刷するのは、そこまでコスト的にも高くならないと、実現してくれたDNPさんから伺って、その仕組みなら出来るかもしれないぞ、という感じで進んでいきました。
「日本郵便さん側のメリット」はどんなものがありますか?
日本郵便さんのメリットは取り扱い数が増えること。
一方で、荷物の取り扱い事業は、メルカリやEC事業者が伸びていることで増えていて、いま配送業者さんの稼ぎ頭になっています。
そうした中で、郵便ポストをつかった便利なサービスを提供できれば、日本郵便さんの売上にも貢献できると考えています。
※ 以降は、マニアックな話をnote購読者向けにまとめています。メルカリのカテゴリ別シェアの変化の話、想定外だった実証実験の結果など、もしご興味あればぜひご覧ください。
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