1,500円からはじまったスペースレンタルが8年で急成長。年間GMVは32億円に。「スペースマーケット」が語る成長の裏側、利用シーン写真が売上に効いたワケ
スペースマッチングプラットフォームの「スペースマーケット」を取材しました。
「スペースマーケット」について教えてください。
重松:
スペースマーケットは「スペースの貸し借り」のマッチングサイトです。プラットフォームとしてのGMV(流通金額)は年間32億円を超えています。
このビジネスに可能性を感じたのは、六本木の駐車場で月6万円の場所を、時間貸しにしたら月35万円稼げるようになった、という話を不動産会社の方から聞いたことがあって。
つまり、月極から時間貸しにしたら「場所の収益性」が向上したということですよね。これはスペースでも同じことが起こり得るなと。
実際に、スペースマーケットでも、築古のヴィンテージマンションなどの、内装を綺麗にして「時間貸し」にすることで、家賃収入よりも大きく伸びたスペースがたくさん生まれています。
初期の成功施策:「利用シーン」を写真で訴求した
重松:
初期にやって良かったのは、プロのカメラマンと一緒にスペースを回って、きれいな写真を撮っていったことです。
とくに、写真で「利用シーン」を伝えたのは良かったです。写真で「こんな感じで利用されています」と伝えると、ユースケースが想起されます。
例えば、「古民家の写真」だけをのせるよりも、古民家で「流しそうめんができますよ」と写真で伝えると、一気に利用イメージがわきますよね。
1スペース1ユースではなく、1スペースマルチユースを訴求することで、用途が広がって「場所の収益性」を高めることができたんです。
まだ「スペースを借りること」の認知も低かったので、言葉で説明するより写真で伝えることが大事でした。これは売上にも貢献しました。
転換点になったこと①「今すぐ予約」で売上が急上昇
重松:
サービスが伸びたのは2016~2018年で、一番大きかったのは「今すぐ予約」という、ダイレクトに予約できる機能を入れたことでした。
もともとは、スペースを予約したときに、ホスト側が「承認」しないと借りられない仕組みでした。予約完了までにタイムラグがあったんです。
それを、空いていればすぐ予約できるようにしました。この機能によって、ユーザー体験が大きく改善して、急激に売上が伸びたんです。
待ち時間があると「予約できなかったらどうしよう」とストレスになるし、あまりに遅いと「別のお店を予約しよう」ともなります。
実際に、何割かは「予約したのに使えない」という残念体験が起きていて、これを解決できたことでリピート率がグッと伸びたわけですね。
転換点になったこと② 民泊の規制で「プロが参入」
重松:
2018年の「民泊新法」によって、一定の規制が生まれて、Airbnbなどの民泊を撤退した方が、スペースレンタルに参入してきたのも大きかったです。
経験値を持ったプロの参入が増えて、良スペースが全国に量産されていき、サービスのクオリティも上がっていきました。
スマホとリモートカメラを組み合わせれば、トラブルへの抑止力にもなり、無人で複数のスペースを安全に管理することができます。
スペースによっては1日に4~5回転できて実は収益性も高い。そういったことにプロが気づいてきたんです。想定外のビッグウェーブでした。
コロナ禍で売上低迷:「ニーズの変化」に適応した
重松:
コロナ禍では大きく打撃を受けました。以前は大人数のイベントやパーティも多かったのですが、そこが根こそぎ飛んでしまって。辛かったですね。
どうすればいいか考えました。大人数がダメなら少人数しかない。外出はできなくなったけど「働くこと」はみんなしている。そこで、初期に着目したのは「リモートワークのニーズ」でした。
リモートワークに特化したコンテンツに注力します。大人数での利用は金額は大きいですが、実は少人数での利用は高回転でリピートします。
例えば、家だと家族がいて仕事にならない方や、撮影やオンライン面談をしたい方が、自宅の近くにスペースを借りるケースも増えていたんですね。このように、ニーズの変化に合わせて施策を打っていきました。
コロナ禍で生まれた「新しいニーズ」
重松:
2021年に入ると「距離をとって少人数で集まれば問題はない」と考える方もだんだん増えてきて、少人数での利用が伸びはじめます。
とくに、気のおけない仲間と少人数で楽しむ「飲み会・女子会・誕生日会」などの用途での、スペース利用がすごく伸びました。
直近は「ワークボックス」の利用が急激に増えていて、カフェでオンライン会議やリモートワークをする、ユースケースを代替しています。
中には「リアルとオンライン」のハイブリッドのような形で、就活のリアル面接の予定の合間に、レンタルスペースを借りて「ウェブ面接」を受けて、時間を効率的につかっている学生さんなどもいます。
振り返ってみると、プラットフォームって「時代によって形を変えるもの」だなと思っていて、そこはすごく面白いなと感じます。
スペースマーケットさんは「新しいニーズ」を上手く捉えていますが、ニーズを拾うコツはありますか?
重松:
ひとつ工夫としては、スペースの予約時に「何につかうか?」を、ゲストにコメントで書いていただいて、それを定期的に追いかけています。
例えば「インドア花見」もゲストの方がそう使っていて、僕たちも体験してみた結果「これはいい!」となって、カテゴリ化して広めました。
思い返してみると、お花見って「肌寒い」「花粉症つらい」「トイレ混む」など、意外とみんなが困っていた課題もあったのだと思います。
それで、スペースに桜や造花を飾って「花見仕様」にすることで、楽しんでもらえるようになりました。収益性の高いスペースも多く生まれましたね。
他にレンタルスペースを使った「ユニークな取り組み」があれば教えてください。
重松:
ほかには、鉄道会社と連携して、高架下にレンタルスペースをつくったりしています。高架下って活用に困っていることが多いので、そこを貸し出して地元のお店のチラシなども置いておきます。
すると、住民の方がお店で食べものをテイクアウトしてつかってくれます。つまり、スペースをつくると「沿線の活性化」になるんですよね。
あとは、タワーマンションの「共用スペース」って、土日はパーティなどで稼働していますが、平日は空いているのでそこを貸し出してしまう。
すると、近隣住民の方がつかってくれて修繕費用を稼げたり、マンションに住むのを検討している人が見にきてマーケティングにもなります。
ほかには、メーカー別のキッチンが試せるスペースや、IKEAの家具が試せるスペースといった、取り組みも行なっています。
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【取材協力】
株式会社スペースマーケット:https://spacemarket.co.jp/
スペースマーケット:https://www.spacemarket.com/
CEOの重松さん:@masurao99
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