WEBとアプリでは「継続率が10倍も違う」月300万人がつかう「ユビーAI受診相談」のユーザー急増の裏側。ユーザー心理を考えた「優先度の設計」で数値が改善した話
月300万人がつかう「ユビーAI受診相談」を取材しました。
「ユビーAI受診相談」について教えてください。
敷地:
ユビーAI受診相談は、症状から「適切な医療機関」や「関連する病名」を、調べることができる無料サービスです。
公開から1年半で、月間利用者は300万人を超えていて、病院に行き慣れない10〜20代の満足度が、最も多いサービスになっています。
Ubieの社内には医師のメンバーもいるので、医師に監修してもらいながら、より良い内容になるように開発しています。
1年半で「月間300万人が利用」はスゴイですね。どのように広がっているのでしょう?
敷地:
プロダクトの改善を続けて、ユーザーの満足度がじわじわと上がった結果、SNSやクチコミで広がる速度が上がっています。
一番は「LINEシェア」が圧倒的に多くて。LINEの会話中に「具合の悪い人」がいたらシェアしてあげる、というケースが多いですね。
とくに、具合が悪くてもなかなか「病院に行ってくれない人」も多いので、そういうときの「説得ツール」として、使われているのかなと。
もちろん、初期はコロナ禍の影響も大きかったです。テレビで取り上げられたり、感染を避けて「受診控え」のようなことも起きていたので。
このサービスは「WEBで十分」な気もしますが、アプリの必要性をどう判断しましたか?
敷地:
僕たちも、半年以上は「アプリをつくるべきか」と迷ったのですが、WEBで検証しきった結果、「やっぱりアプリも必要だ」と判断しました。(アプリは2021年の7月に公開)
理由は、定着のためにはアプリが必要だから。実際にWEBよりアプリのほうが継続率が10倍くらい高かったです。
最初は、WEBでリピート率をあげようとしたのですが、そこがどうやっても難しくて。LINEの登録と組み合わせても、継続率が伸びませんでした。
なるほど、継続率が10倍も違うのですね。
敷地:
大きいのは、WEBだとデータが引き継げないことです。するとその人に適切なメッセージを通知するといった、最適化ができません。
あとアプリだと、繰り返しマインドシェアがとれるので、病院に行ってもらえる確率も、アプリのほうが10倍くらい高かったですね。
アプリだと、家族など「近い関係の人」に勧めやすいなど、ユースケースやタッチポイントが増やせる利点もあるのかなと。
これまでに「うまくいった施策」を教えてください。
敷地:
結果画面からの「シェア数」を伸ばした施策はうまくいきました。
当初はあまりシェアされていなかったのですが、SNSでのシェアを見ると、「経緯やストーリー」を説明している人がとても多くて。
例えば「すこしお腹が痛くて(状況)、ユビーをつかったら(サービス)、こんなことを言われたよ(結果)」という感じですね。
そういう、よくシェアされている文言を分析し、それを逆輸入したところ、シェア数と流入数が2倍以上に改善されました。
逆に「失敗した施策」はありますか?
敷地:
失敗したのは「優先度の設計」です。当初は「医療機関へ案内したい」という想いが前に出すぎて、結果画面で医療機関を目立たせていました。
でも、ユーザーは「病院になるべく行きたくない」と考えているから、納得する前に勧められても、病院に行かなかったんですよ。
それよりも、ユーザーが求めていたのは、まずは自分の身体がどんな状態かを「腹落ちするまでわかりたい」という納得感だった。
それがわかってからは、まずは「納得感」を重視したところ、結果的に医療機関のページへの遷移率も改善されていきました。
作り手の都合としての「こう行動してほしい」よりも、ユーザーの気持ちを考えて、それに適したコンテンツを提供しないといけませんでした。
なるほど。どうしたら「納得度」を改善できますか?
敷地:
例えば、質問のときに「なぜそれを質問しているか」の意図がわかるようにしたところ、結果画面への到達率を数%改善できました。
例えば、「いつもより疲れていると感じますか?」という質問のときには、「睡眠障害との関連性を調べています」のように表示します。
根拠があるほうが人は「納得感」を得られます。例えば、成績表をただ「3」と渡されるよりも、これを期待しての「3」のほうが納得できます。
ほかには「納得度」をどのように改善しましたか?
敷地:
あとは、該当した理由と「周辺の症状」も出すようにしたところ、医療機関検索画面への到達率を数%改善することができました。
具体的には、この回答をしたからこの症状の可能性がありますよ。周辺の症状にはこんなものがありますよ。など伝えるようにしました。
周辺症状を出すと「質問にはなかったけど、たしかにここは該当してるな」と考えてもらうキッカケになるので、納得感が得られやすいです。
また「複数の症状」から紐づく病気を調べられる点が、ネット検索にはないユビーの強みなので、その価値も伝わりやすくなったのかなと。
なによりも「まずは納得感」が大事だったんですね。
敷地:
そうですね。実験的に「この病気が進行すると、こんなことが起こります」と、恐怖感を押し出したメッセージを表示したこともあって。
でも、ユーザーが「納得感」を持つ前に、恐怖感を与えてもピンと来ないので、医療機関には行ってくれなかったですね。
恐怖感の訴求メッセージの「あり・なし」で、ABテストも実施しましたが、まったく効果がありませんでした。
ユビーのプロダクト運営で「ここは大事にしている」というところを教えてください。
敷地:
これはtoB(医療機関向け)の機能ですが、ユーザーが回答した結果を、診療に行く前に医療機関に「FAXで共有する機能」をつくったんですね。
ただ、機能のニーズが掴めなかったので、まずはエンジニアがせっせと手動でFAXを送って、ニーズが検証できてからつくり込みました。
使われない機能をつくり込んでも仕方ないですし、ユーザーニーズがしっかりわかってから、開発リソースをあてたほうがいいですよね。
たしかに、そうですね。
敷地:
あとは、社内の別プロダクトの事例ですが、お薬手帳をスキャンして、文字を自動で読み取る「OCR機能」があるのですが、これも最初は人の手で入力を補助しました。
これも理由は、はじめは精度が悪かったのもありますが、きちんと「精度が上がれば使われる」ということを検証するためです。
その検証がきちんとできてから、リッチに「OCR機能」の精度を上げていく方向に、開発リソースを投資していきました。
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【取材協力】
Ubie株式会社:https://ubie.life/
ユビーAI受診相談:https://ubie.app/
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