約1年でMAUが1,000万人に。プロフィールサイト「リットリンク」が語るサービス成長の裏側。「LINE中心」の設計がクチコミを生んだ理由と「かわいい」の差別化戦略
プロフィールサイト作成サービス「lit.link」を取材しました。
「lit.link(リットリンク)」について教えてください。
小原:
無料でつくれるプロフィールサイトです。SNSリンクやブログやページを、写真や動画をつかってまとめることができます。
2021年1月に正式リリースして、サイトを作成したユーザーは80万人、月間のアクセス数は5,000万PV、MAUは1,000万人を突破しています。
インフルエンサーに限らず、中高生の方たちにもつかっていただいていて、自分のプロフィールをまとめるだけでなく、推しを紹介する「推し活」などにもつかわれています。
「lit.link」はどのように生まれたのでしょう?
小原:
クリエイターエコノミー系のサービスに関心があり「lit.link」を作りました。ただ、開発をはじめて「最初の数ヶ月」は迷走していましたね。
先行サービスがあったので「どうにか差別化しよう」と機能を詰め込んでしまったんですよ。この機能もつけよう。あの機能もつけようと。
間違いに気付いたのは、デザインがある程度まで完成して、ユーザーとして想定していた、インフルエンサーの方に見せたときでした。
自信満々で「すごいものができたぞ」と思って見せたら、信じられないことに「これ意味がわからないです」と言われてしまったんです。
なんでも出来てわからないと。機能が多すぎて混乱させてしまったんです。
「意味がわからない」と言われてどうしましたか?
小原:
「機能を絞り込もう」と決断しました。ECサイトやWEBサイトと変わらないレベルの機能をつけても、若い人には理解してもらえないと。
それで「やらないこと」を大量に決めて。半分以上は機能を削りましたね。そこからは、あくまで「プロフィールサイト」の域を出ないようにしつつ、ベストなものをつくろうとしました。
それで今度は「絞り込んだもの」を見せると理解してもらえました。機能を捨てていなかったら「ユーザー層」が広がらなかったと思います。
リリースしたときの「手応え」はどうでしたか?
小原:
最初の手応えは全然ダメでした。YouTuberさんやブロガーさんに「lit.link」を紹介してもらったのですが、登録数がまったく増えなくて。
当初は、インフルエンサーをキャスティングして「ユーザー数を伸ばそう」という戦略だったのに、反響がなくて「これはまずい」となりました。
こんなスゴイ人に紹介してもらったのに、1週間で300人しか登録が増えないとなると、これはもう成立しない…。戦略が崩れてしまったんです。
ただ、そこから数週間たつと、少しずつ登録者やPVが増えていきます。
そこからは、何が「成長の起点」になりましたか?
小原:
成長のキッカケになったのは「Clubhouse」が日本で流行ったときに、なんとかこの波に乗ろうと、いくつか仕掛けたことがあって。
まずClubhouseで「みんなが困ってること」を調べたら、ユーザーページがなかったんですよ。毎回「ユーザーID」を検索する必要があった。
そこで、lit.linkに「Clubhouseのリンク」を設定すれば、IDをコピペして楽に検索できる機能を2日でつくったら、すごく話題になったんです。
Clubhouseユーザーにとって「便利な機能」をつくった結果、そこからもうひとつ自然に起こったことがあって。
それは、Clubhouseって音声で説明しますよね。そのときに資料は配れないから、資料を「lit.linkにまとめよう」という流れが生まれたんです。
「今からこの説明をします」というときに「lit.linkの資料を見てください」という流れができて、lit.linkの話題が増えていきました。
この2つがキッカケで、1日に数万PVだったのが、最大で1日50万PV程まで跳ね上がって、以降はPVのベースもかなり上がりましたね。
工藤:
あと、明確に「伸びはじめたな」と実感したのは、インフルエンサーというよりは、芸能人やタレントの方がつかってくれたときでした。
芸能人が「あの人もこの人も」と登録してくれたときに、lit.linkの知名度が上がっていき、ユーザー数が伸びるスピードも加速しました。
インフルエンサーと拡散力は同じでも、芸能人の方のほうが「あの人もつかってるんだ。なら私も!」となる力が強いのかもしれません。
lit.linkの流入元は「インスタが60%」だそうですが、なぜこんなにインスタのニーズが高いのでしょう?
小原:
インスタは、プロフィールにひとつしかリンクを貼れないので「複数リンクが貼れないこと」への、痛みが強いのだと思います。
とくに、インスタって「私をフォローしてね」というSNSなので、主体は「私」なんですよね。だから、プロフィールへのこだわりが強い。
一方、TikTokなどは「コンテンツ」が主体で、コンテンツ単位で消費される傾向があると思うので、プロフィールまで到達しにくいのかなと。
lit.linkは「LINE」からログインできたり、LINE中心の設計になっています。これはなぜそうしたのですか?
小原:
これは意図的にそうしていて、理由は3つほどあります。
ひとつは、登録ハードルを下げるためです。アプリだと「登録ハードル」が一気に高くなってしまいますよね。
ふたつめは、WEBより「LINEでつくれるよ」となったほうが、体験価値が高いと思ったんですね。感動するし簡単にできそうじゃないですか。
友達に紹介するときも「ググって」というよりも、LINEで「リットリンク」って入れたら出るよというほうが、クチコミしやすいと思います。
あと再ログインのときも、LINEの友達検索欄から「リットリンク」と入れて、LINE認証でポチッとログインするだけ。アクセスの導線が短いんです。
lit.linkではどのような「成長サイクル」でユーザーが増えていますか?
小原:
基本的には、PVが伸びるほど登録が増えていきます。登録につながるのは、ほとんど「フッターリンク」からですね。
ただフッターリンクから登録されるのは、どのプロフィールサイトもそう。でも伸びているサービスと、伸びていないサービスがあって。
僕らがlit.linkをつくってからも、競合サービスは10個くらい出てきていて、撤退しているサービスも多いんですよ。
そんな中で、どうして「lit.linkが伸びたか」というと、これは多分ですけど「個性を伝えられた」ってことだと思うんですよね。
「個性」ってどういうことなんでしょうか…?
小原:
例えば、デザインです。実際に「4ピクチャー」という、アイコンを4つ並べたようなデザインが、ユーザー増加の要因になっていて。
もともと、日本ではプロフィールサイトって、海外発の「Linktree」が1番だったのですが、デザインが「ボタンが横に並んでる感じ」だったんですよ。
すると、デザイン的にもlit.linkとの差が分かりにくくて、実際にlit.linkを見て「これ、Linktreeだよね」と勘違いされたり、サイトにアクセスしても気づかれないことも多かったんです。
それが「4ピクチャー」を導入した瞬間に、もうパッと見たときにも「これ何だろう?lit.linkってサービスなんだ」と認識されるようになった。それは「登録する理由」にもなりますよね。
実際に、登録数の上がり方も明らかに速くなったので、やっぱりデザインで「ユニークであること」が、伝わったのが良かったのかなと。
なぜ「デザイン」に注目することができたのでしょう?
小原:
僕自身がユーザーで、僕自身がデザインできたというのが、恐らくこの辺りに気づくことができた、最大の理由だったのかなと思います。
現場のメンバーが「こうすれば可愛いですよ」と言っても「いや開発するのにいくらかかるの?」と、CEOに反論されるってあると思うんです。
可愛いに対して、CEOって理屈で「やるべき」と言いにくい。でも、CEOがデザインしていれば「可愛いからやろう」と動き出せます。
本当にデザインCEOでよかったです。CEOとデザイナーを兼務してるので、Clubhouseのときの改善も、深夜にデザインツールを開いて、ガーっと描いて2日で実装しました。
ユーザーデータ① 「閲覧数よりクリック数が多い」
小原:
lit.linkのデータで面白いのは「閲覧数」より「クリック数」が大きくなるケースがあることです。つまり、1人がリンクを「複数クリック」するんです。
例えば、普通はサイトに100PVあったら、クリック率はせいぜい5〜10%。でもlit.linkでは、100PVからクリック数が300に届くこともあって。
プロフィールサイトは「どんな人かな」と興味を持ってくる人が多いので、1PVが2〜3クリックを生み出すのだと思います。
ユーザーデータ②「18歳のユーザーが多い理由」
小原:
lit.linkでもうひとつ面白いのは「18歳のユーザー」が突出して1番多いことです。これは持論ですが「理由がある」と考えています。
一昔前は「お金」を稼げば将来が安定しそうだったけど、今の子たちがはじめるのは「お金稼ぎ」よりも「影響力稼ぎ」だと思うんです。
なぜなら、発信力があれば「お金」がついてくるから。それをSNSを見て知っているから。だから、お金も含めた「将来の不安」を解消するために影響力を持とう、と考える人が多いのだと感じます。
これを僕らは「ソーシャルキャピタル」と呼んでいます。SNSでストックの資産をつくったり増やそうとしているわけです。
ユーザーデータ③「推し活での利用シーン」
宇都:
「推し活」の面白い活用例も多いです。例えば、最近って韓国アイドルの「オーディション番組」が増えているじゃないですか。
その「推し活」の文脈で「○○くんにぜひ投票してください!」といった、応援ページが「lit.link」でつくられていることがあって。
それも、複数のファンがページをつくって「一番出来が良かったもの」を、みんなでリツイートしているんですよ。
昔あった「前略プロフ」って自分が主語で「私の情報」だけ書いてたけど、これは主語が「私」じゃなくて「推しが」になっているんですね。
そういう発想は私たちにもなかったので、見つけたときは驚きました。
-----
【取材協力】
TieUps株式会社:https://tieups.com/
lit.link:https://lit.link/
小原さん:@Fumihiro_Ohara
工藤さん:@kudo_tieups
宇都さん:@utayk_
【告知】TieUpsさんでは、コミュニティSNS「WeClip」の未公開のビジネス機能のテストユーザーを募集中とのこと。WeClipは商品・サービスのファンづくりのコミュニティプラットフォーム。コミュニティ内の動きを分析することができるそう。ご興味ある方はこちらからお問い合わせください。
ここから先は
月刊アプリマーケティング
プロダクト運営について学べるマガジンです。アプリやプロダクトの売上やユーザー数を伸ばしたい人にオススメです。月に7記事ほどお届けします。