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常識から逆算して生まれた「プログリット」が年商30億円まで「仕組み化の力」で成長した方法。英語コーチングサービスの指標が「KPIの応援団長」を置いたら伸びた話。

プログリットさんを取材しました。

株式会社プログリット 代表取締役社長 岡田 祥吾さん、プロダクト開発責任者 太田 忠さん

⸺「プログリット」について教えてください。

岡田:
プログリットは「英語のコーチングサービス」です。本気で英語力を伸ばしたい方のためにサポートをしています。

2016年に創業してから、プログリットの受講者は累計18,000人に、会社の売上(2023年8月度)としては約30億円に到達しています。

事業の指標としては「満足度・継続コースの入会率・友人紹介比率」など、満足につながる指標をいろいろな角度から見ていますね。

高価格帯のサービスを成立させるには、同業他社の中でも「圧倒的に高い満足度」が必要になるためです。

⸺英語コーチングサービスの「プログリット」はどのように生まれたのでしょうか。

岡田:
根本にあるのは「英語は努力しないと身につかない」という考え方で、英語学習における「努力をサポートするサービス」を作ろうと考えました。

努力というのは「努力の方向性」と「努力の量」に分解できます。これらをコーチングで担保できれば英語力が伸びるはずです。

また、英語力が伸びることには価値があるため、これが正しいなら高価格でも成立するはず。このような仮説からスタートしました。

価格については「極力、高く売りたい」と思想から入りました。これは商売の原則でもありますが、業界の常識を変えたかったのも大きいんです。

英語業界って基本、単価が安くて儲からず、従業員の給料が低くて、非正規雇用が多くなるという、負のループに陥っている会社が多いと感じていて。

それを変えたいなら「当たり前を逆転させるべきだ」と、1つ1つ常識と逆に考えていきましたね。

⸺創業初期のプログリット事業の手応えはどうでしたか?

岡田:
共同創業者と2人で、2016年に自己資金で創業しました。事業としては初月からずっと黒字で、2人で暮らしていく分にはそれで十分でした。

でも、未熟な2人で会社をやっていくことには不安があり、経験のある方に出資していただき、経営指導をしていただこうと決めました。

そこから、先輩に紹介してもらった、投資家の瀧本哲史さんに投資していただけることになり、毎月メンタリングをお願いできることになりました。

そこからは、2人でやるのではなくて、この商売を思いきりスケールさせるにはどうしたらいいか、というスタイルに方向転換しました。

定例ミーティングでは、瀧本さんのトークを必死にメモって、1ヶ月間の宿題をもらって愚直に実行する。これを毎月続けていきました。

瀧本さんは、2019年にお亡くなりになってしまったのですが、「君たち2人は絶対に成功するよ」と言ってくださり、僕らを応援してくれました。

⸺瀧本さんからは「どのようなアドバイス」をもらいましたか?

岡田:
瀧本さんの最初のアドバイスは「来月に1人採用しましょう。」でした。僕らは「そうですか」と1人採用して、研修をして働いてもらいました。

振り返ると、プログリットの商売って「労働集約ビジネス」なので、スケールするためには「人を増やす」以外に方法がないわけですよね。

労働集約でスケールするのは難しい。でも逆に「仕組み化」できれば参入障壁になる。だから「それにチャレンジしよう」って意味だったのかなと。

次の月には「2人目を採用してください。採用した1人目に研修させなさい。」とアドバイスをいただいて、2人目の社員を採用しました。

僕らは研修しないで、採用した「1人目の人」が研修をする。これができれば、創業者が手をかけなくても人を増やせる体制になります。

これも結局は「仕組み化」に尽きるかなと。1人ずつ採用しても足し算の成長にしかならない。掛け算で成長するには仕組み化すべきだと。

次に進めたのは「研修プログラムのマニュアル化」でした。AさんがBさんに教えるのは良いのですが「Aさんが辞めたらどうするの?」となります。

となると「研修をマニュアル化すべきだよね」と。そうすれば、BさんもCさんも研修ができるようになり、研修に再現性が生まれます。

それから、瀧本さんから「本を出しましょう。」とアドバイスいただき「英語学習2.0」という本を出版しました。これも本当にやって良かったです。

本があるのとないのでは、事業の権威性も変わります。プログリットがこの本によって成長したのは間違いなくて、集客に大きく貢献してくれました。

本を出すことって「ノウハウの先出し」なんですよ。約1,500円を払ってもらえれば「プログリットのノウハウを全部教えますよ。」ってことなので。

このビジネスにおいて、これは非常に重要で「ノウハウはいかに出すか」なんですよ。ノウハウは隠せば隠すほど集客ができなくなります。

ノウハウは、検討中の方に「安心感」をもたらします。ここまでノウハウがあるなら「約60万円のコーチングも申し込んでみよう。」となるので。

社員が入社するときにも、この本を読んでもらっています。すると新入社員の知識や考え方がビシッと揃うので、新人教育にも役立っています。

その後にいただいたアドバイスは、瀧本さんが「上場しましょう。このビジネスは絶対に上場したほうがいいですよ。」とおっしゃったんですよね。

理由は、英語業界の競合サービスは山ほどあったけど、上場している企業は少なかったので、知名度や権威性という面でも有利に働くはずだと。

当時は、この言葉の意味をあまり理解できていませんでしたが、結果的には「本当にその通りだったな」と感じています。

お客様が増えていくのとは別に、世間がプログリットのビジネスを認めてくれたのは「上場してからだ」と感じます。上場するまではどれだけ成長していようが、周りも「ほんまか?」と半信半疑の反応でした。

着実にお客様は増えていましたが、「世間に認めてもらう」という観点では、上場して結果を出すしかなかったんです。

2022年の上場時に、瀧本さんと一緒に撮影した写真。

⸺プログリットのような「新しいビジネスモデル」のサービスを0から作るときに、どんなことを意識すべきか教えてください。

岡田:
最初は「自分を信じること」以外に方法はないと思います。僕らが救いたいお客様がいて、これが最高のサービスなんだ。これを突き詰めるしかない。

起業して1人目のお客さんが来てくれた。これすごく良いねと言ってくれた。それが2人になって。3人になって。100人になった。

これがずっと続いて、18,000人まで到達した。ある意味それだけなんです。「世界のたった18,000人に認めてもらえただけだ。」とも言えます。

周りが何と言おうが関係なくて。お客様にとって最高のプロダクトは何か?最高のサービス体験は何か? これを考えて実行する。これしかないです。

成功施策①:「オンラインコースの本格スタートで稼働率アップ」

岡田:
2018年から本格的に「オンラインコース」をはじめたことで、世界中の人がプログリットを受けられるようになり、顧客層の拡大につながりました。

あと、プログリットのような店舗ビジネスって、稼働率がめちゃめちゃ重要なんですよ。たくさんある店舗の「稼働率の平準化」が課題なんですね。

例えば、有楽町店にはお客さんがめっちゃ来る、でも六本木店には来ないとなると、六本木店の稼働率が低くなって、全体の利益率が下がります。

オンラインコースは、この「店舗の稼働率」を高めることに貢献しました。オンラインなら稼働率の低い店舗のコンサルタントが担当できるためです。

稼働率が平準化されて利益率も上がりました。これは大きかったです。ただ店舗にこだわっているので、今後もオンラインだけには絶対しません。

成功施策②:「KPIの応援団長を置いたら全指標が上昇」

岡田:
プログリットでは、社内に「KPIのアンバサダー」を置いているのですが、この仕組みであらゆる重要指標が圧倒的に上向きました。

例えば、お客様の継続率を引き上げるアンバサダーや、英語力を引き上げるアンバサダーが校舎毎にいて、社内で目一杯それを推進します。

言ってみれば「各指標の応援団長」みたいな感じですね。これは管理職ではなくてメンバーが担当します。期待と責任は人を成長させます。

この仕組みがあるかないかで、天と地の差ほどKPIの伸びが変わりました。うちは完全にこれで成長した会社だったなと言えるくらいです。

アナログな事業なので、全員が一致団結しないと伸びません。それで、同じモチベーションになれる仕組みとして、2019年頃に導入しましたね。

上司が言うわけじゃないので、メンバー間で協力体制も生まれやすいです。「同僚の○○さんが言ってるから協力するか!」という感じですね。

プログリットでは11店舗で、四半期に1度「ベスト校舎」を決めるのですが、優勝校舎を決めるのにも全部この指標が入っています。

⸺これまでに「失敗した判断」があれば教えてください。

岡田:
コロナ禍に判断を結構失敗したなと思っていて。コロナ禍の最初の1年目ぐらいのときって、プログリットは「上場準備中」だったんですよ。

上場準備中って予実管理が重要で、予算を下回れないんです。だから売上を減らすわけにはいかないぞと、広告費を増やして売上を伸ばそうとした。

逆風の中で思い切りアクセルを踏むと、シンプルにお金がものすごい勢いで減っていくけどお客さんは一向に来ない、ということが起こりました。

途中でこれは厳しいなと「一回上場準備やめます」と方針転換して。それで一回ディフェンスに回って、コスト削減に力を入れて持ち直したんですね。あのままずっと攻めていたら結構まずかったです。

当時は判断が難しかったです。苦しくても攻め続けるのも大事だと思いますが、ホントに駄目なときは撤退しなきゃいけません。

⸺プログリットのデータから「わかった発見」などはありますか?

岡田:
プログリットで、英語力がめちゃめちゃ伸びたお客様と、伸び率の低かったお客様を200名弱ずつ分析すると、いくつか発見がありました。

1つ目は「学習時間は裏切らない」です。伸びたグループの平均の学習時間は1日3.26時間でしたが、伸び率の低いグループは1日2.53時間でした。

2つ目は「朝学習を制するものは1日を制す」です。伸びたグループは朝方に学習時間の明確なピークがありましたが、伸び率の低いグループでは朝と夜の時間帯にダブルピークが発生していました。

夜に勉強すること自体は悪くありません。ただ夜は突然予定が入りやすいなど不確実性が高かったり、遅れたときにその日のうちに取り戻せる可能性が低くなる、というデメリットもあります。

そのため、なるべく朝の早い時間にやり切るほうが、英語力が伸びる可能性が高くなります。これをもとにプログリットでもコーチングをしています。

月間売上が1億円を超える「シャドテン」が1年間で継続日数を1.4倍に伸ばした話。

⸺「シャドテン」について教えてください。

太田:
シャドーイングに特化した「英語学習アプリ」です。ユーザーが音声でシャドーイングを行うと、英語のプロが添削して結果が戻ってきます。

当初は、プログリット卒業生のみを対象に提供していた「シャドーイングの添削サービス」を、2020年6月から一般向けに提供開始しました。

シャドテンの有料会員数は約6,500人。月間の売上は1億1,400万円に到達しています。累計の添削数は100万件を超えています。

単体のアプリとして利用される方と、プログリットの卒業後のコースとして利用される方の2パターンがありますが、前者のほうが多いです。

シャドーイングの学習方法は、英語話者の話している音声を聞いて、そこから2語3語遅れてスクリプトを見ながら自分でも発話するというものです。

プログリットでも「リスニングに効果がある」と活用されていた学習方法で、それを一般の方にも提供しようと「シャドテン」が生まれました。

初期はアプリもなかったので、PDFのスクリプトと音声ファイルを渡して、LINEの録音機能でシャドーイングをしてもらって添削をしていましたね。

使い勝手は悪くても学習効果は高かったので、その体験をより高めるためにアプリを開発することになりました。

⸺シャドテンの平均継続日数は「1年で1.43倍」に伸びたそうですが、どのように継続率を高めたのでしょうか。

太田:
プログリットでは、行動経済学者の相良奈美香さんに監修いただきながら、習慣化の理論をプロダクトにも適用しています。

習慣化で大事になるのは「トリガー・行動・報酬」この3つが重要で、これをいかに回していくのかを考えていますね。

まず、トリガーというのは「学習をいつやるか」です。人は何かタイミングを決めないとなかなか習慣化できないんです。

時間なら時間を決めたり、もしくは「朝起きたら何かする」など何かの行動とセットに使ってもらえる要素を、プロダクトにも取り込んでいます。

例えば、プッシュ通知で「学習リマインダー」をセットして、決まった時間に学習してもらえるようにするなどです。

次の「行動」というのは「目標とする行動」のことで、その行動のハードルを下げることが重要になります。シャドテンでは「シャドーイングの敷居を下げること」を意識しています。

例えば、「音声が速すぎて聞こえないよ」という障壁を避けるために、再生速度を変えられる機能を入れたりします。

そして「報酬」はアプリ内で褒めることです。課題を提出したらアニメーションで褒めたり、連続で提出したらメダルやバッジを表示します。

習慣化の指標については「毎日の課題の提出率」を見ていますね。もちろん継続できているかを見るために「継続日数」も見ます。

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【取材協力】
株式会社プログリット:https://about.progrit.co.jp/ 
プログリット:https://www.progrit.co.jp/ 
シャドテン:https://www.shadoten.com/ 
株式会社プログリット 岡田祥吾さん、太田忠さん、広報/PRの福本実子さん

【告知】プログリットさんでは各職種で採用中とのこと。ご興味あれば下記のサイトから詳細をご覧ください。

※ 以降は、+αの成功事例などを5つほどnote購読者向けにまとめています。シャドテンの売上を伸ばしたYouTubeマーケのポイント、学習リマインダー通知の効果を高めた施策、プログリットのブランド力に貢献した要素、などご興味あればご覧ください。

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