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年商10億円のオーダースーツD2Cブランド「FABRIC TOKYO」の成長の裏側。リアルにお店をだしたら「客単価2倍」になった理由、接客時間の短い人がリピーターになる理由

番外編として、オーダースーツのD2Cブランドの「FABRIC TOKYO」さんを取材しました。

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※ 株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役 森 雄一郎さん

「FABRIC TOKYO」について教えてください。

森:
2014年から運営している、スーツやシャツを「オーダーメイド」でつくれるブランドです。オーダースーツは39,800円からつくれます。

特徴としては、店舗(14店舗)で採寸いただくと、ECサイトからスーツやシャツが、いつでもどこでもオーダーメイドできることです。

2019年には「年商10億円」に到達しました。1回あたりの購入単価としては平均5.5万円くらいとなっています。

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どうして「オーダースーツ」を選んだんですか?

森:
もともとは、僕自身がオーダースーツをつくったことが、原体験です。

起業する前は、ベンチャーの営業で働いていたのですが、僕はすごく腕が長い体型で、ずっと「サイズが合わないスーツ」を着ていました。

そんな中、友人がオーダースーツを着ていて、僕をテーラーに連れて行ってくれて、オーダースーツを買ってみたんですね。

そしたら、着た瞬間に感動しました。今でもその感覚を覚えていて。そこから、持っているスーツ全てがオーダーになりました。

オーダースーツは心から人に勧められるなと。でも好きなだけで事業をやっても、ビジネスとしては成立しないかもしれない。

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どうやって「ビジネスになるか」を検証したんですか?

森:
ビジネスとして「いける」と思ったのは、2013年に渋谷で「スーツのビジネスマン100人」に、街頭インタビューをしたことでした。

結果、浮き上がってきたのは「体型にコンプレックス」を持つ人が82%いたこと。首が太い、肩幅がある、足が短い。みんな何かに悩んでいた。

そして、100人中9人しかオーダースーツをつくった経験がなかった。このギャップを埋めればビジネスになると思いました。

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提携する「スーツ工場」はどう探したのでしょう?

森:
ひとつは、商工会議所に連絡すると、その地域の「工場リスト」をもらえるので、そこから紳士服を縫っている工場を探しましたね。

最初は手探りでしたが、工場に連絡すると好意で「周辺の工場」を紹介してもらえたりもして、どんどん効率は上がっていきました。

また、海外の工場も探しました。中国のアリババで「オーダーメイド系のワード」を検索すると、そういう商品を売ってるお店が出てきます。

そこで、チャットで「オーダースーツがつくれるか」を問い合わせて、気になった中国の工場には現地まで見学にいきました。

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実際に「海外の工場」を見てみてどうでしたか?

森:
海外工場も悪くなかったのですが、中国の方って「やります・できます」という文化なので、みんな「できます!」と言ってくる。笑

でも、サンプルをお願いすると問題があったり。ただ中国の工場って全部できます。生地の裁断から納品まで。そして最小の発注ロットも大きい。

一方、日本の工場ってジャケットだけ縫う、パンツだけ縫うとか「分業制の工場」が多いんです。顧客によってカスタマイズする力も高い。

つまり、海外の工場は「大量に安く捌くこと」に長けていて、日本の工場は職人さんが多くて「手間隙かけてつくること」に長けていました。

結果、ブランドリリース初期で、品質は高くないといけないので、トータルの品質管理を考えて、国内の工場と提携することにしました。

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そこからブランドをスタートして「ここは転換点だった」というところがあれば知りたいです。

森:
もともと、ECサイトだけで販売していて、店舗もなかったんですよね。採寸もお客さんに自分でやってもらっていました。

ところが、お客さんからメールや電話で「オフィスに行くから測ってほしい」という問い合わせが複数きて。それに対応したらとても喜んでくれて、リピーターになってくれたんですよ。

それがヒントになって、浜松町にポップアップストアを出したのですけど、これがお客さんのニーズにがちっとハマった。

採寸数がグッと伸びて単価も2倍になった。これは見つけたと思いました。

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どうして店を置くと「購入単価が2倍」になるんですか?

森:
単価の問題なんだと思います。ネットだと「シャツ」ばかり売れるんです。でも、でもリアルだと「スーツとシャツ」をセットで買ってくれる。

シャツをネットで5,000円で買う。「失敗してもいいか」と割り切れます。でも、スーツは3〜4万円なので「失敗したら怖い」となってしまう。

だから、店舗を置くことでスーツを安心して買えるようになって、平均単価が上がったのだと思います。

そこからは「どう売上が伸びていった」のでしょうか?

森:
2016年1月に渋谷に「最初の店舗」を出しました。駅から遠かったんですけどお客さんがちゃんと来てくれて。

ポップアップや店舗を、色んなエリアに試しながら出店していきましたね。もちろん、失敗したケースもたくさんあります。

2016年には「年商1億円」くらいに到達して、そこから毎年3倍ずつ伸びて、2019年には「年商10億円」まで成長することができました。

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お客さんの購買行動でわかった「おもしろい分析データ」があれば教えてください。

森:
FABRIC TOKYOでは「接客時間が短い人」ほどリピーターになる率が高い、という分析データが出ました。

スーツって安くない商材ですし、じっくり接客したほうが満足度が高いはずと考えていたのですが、これは実際には逆でした。

うちのお客様って、洋服は好きだけど「洋服を買う時間」を楽しむお客様ではないので、買うまでのプロセスはスマートなほうがよかった。

なので、来店予約は「30分単位」なのですが、30分以内にはサービスをきちんと終えることも意識していますね。

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接客時間の短い人のほうが「リピーターになる」というのがおもしろいですね。

森:
そうです。良い体験を一度してもらえれば「あの店はスマートに買わせてくれたな」と、お客さんはちゃんと覚えてくれる。

最近では、FABRIC TOKYOに来る方って、「オーダースーツ屋さん」からの乗り換えも増えているんですよね。

ヒアリングをすると「無理なセールスが嫌」という意見は多くて。しつこく電話されたり、不要なオプションを勧められるのが苦手だと。

なるほど。最近ってスマホで「ほしいもの」を事前に調べてしまいますよね。

森:
そう。昔はお店側が「これがイタリアの仕立てですよ」と言って、店員とお客様の情報格差がビジネスになっていたんですよね。

でも、今って「お客さん主体の買い物」が求められていて。

うちは明朗会計だし、WEBで決済するから自分で選べばいい。お客さん主体で買い物できることが、「選ばれる理由」のひとつになっている。

FABRIC TOKYOでも、お客様の9割は「目的」を持って来店します。また採寸をされた方の9割は購入してくれますね。

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顧客主体求められる

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オーダースーツ・シャツの「おもしろい広がり方」があれば教えてください。

森:
「女性からの口コミ」が多いことです。彼氏や旦那さんに勧めてくれます。オーダーのギフトなら「服のサイズや好み」を外さないから。

例えば、彼氏のお誕生日に「これあげるよ」と、オーダースーツ・シャツのギフトを渡す。これは「もらって嫌な人」はいない。

そして、顧客体験として重要なのは「今度それ一緒につくりに行こう」と、次のデートの約束にもつながることなんですよ。

そこの体験はすごくよくて。実際にカップルの来店は多くて、皆さん一緒に楽しみながら買い物をされていますね。

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ギフトカードは「何割くらい」女性に買われていますか?

森:
9割くらいは女性に買われています。女性のハートを掴むってめちゃ重要。女性の支持を得られると、男性が意思決定しやすくなるから。

「FABRIC TOKYOのスーツまた買おうかな」「いいんじゃない?」と一言女性に言ってもらう。その一言って男性にとって後押しになる。

そのたった一言って重要で、それを女性から言ってもらえる、ブランド体験やデザインは今後も考えていきたいです。

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FABRIC TOKYO:https://fabric-tokyo.com/
FABRIC TOKYO 森さん(@yuichiroM

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