1本で月5,000万円を稼ぐ「ライブゲーム」ミラティブが「事業の火種」見つけた方法。テレビCMに失敗した理由と「数より熱狂」がコミュニティを強くする話
配信者360万人を突破した「ミラティブ」さんを取材しました。
「ミラティブ」について教えてください。
赤川:
2015年8月にスタートした、スマホ1台でゲーム配信できるアプリです。
配信者数としては360万人を超えていて、スマホゲームの配信者の数では、日本一のゲーム配信サービスになっています。
特徴としては、全体における「配信者の比率」が高いこと。現在では、アクティブユーザーの中の「配信者の比率」は約25%です。
ミラティブでいま熱いのは、配信とゲームを融合した「ライブゲーム」で、ライブゲーム関連の売上だけで、月に1億円を超えてきています。
ライブゲームというのは、そもそもなにがキッカケで、はじまったのでしょうか?
赤川:
はじまりは2017年頃に、ミラティブの中で、ルーレットアプリをつかった「ルーレットゲーム」が流行った時期があって。
これは、配信者がルーレットに「視聴者の名前」を入れて回して、当たった視聴者のお願いごとを聞くというものでした。
内容は「コラボ通話で一緒に歌って!」とか「配信者名をふざけて変える」のような、コミュニケーションを楽しむ可愛らしいもの。
このユーザーの発明した遊びが、体験がおもしろかったため、どんどん配信者に飛び火して、ミラティブで広がっていったんですね。
これは小さなブームだったけど、めっちゃ熱量がありました。こうした火種に薪をくべると、0→1の発明をするよりもうまくいくのは、コミュニティサービスでは鉄板なんです。
それで、このゲームとライブ配信とが融合した「ライブゲーミング」には、すごく可能性があるなと考えました。
そこから、どのように「ヒットタイトル」が出るまでに、至ったのでしょうか?
赤川:
2018年頃から、まずは「お手本となるタイトル」をつくるために、少しずつライブゲームのタイトルを開発して、仮説の検証を進めていきました。
試行錯誤の結果、7本目くらいに出した「エモモバトルドロップ」がヒットして、2021年の12月には、9日間で5,000万円の売上が出るまでになりました。
これは、視聴者が「配信者のプレイ」に介入できるのが特徴で、強力なマシンをプレゼントしたり、スコアの上昇に倍率をかけられます。
ライブ配信のマネタイズのキーに、ソーシャルな場で「粋であろうとする」という要素があると思っていて。これがライブゲームでも重要でした。
例えば、「勝つか負けるか」の瞬間にアイテムを投げると盛り上がるなど、コミュニケーションも含めて、盛り上がりが生まれていました。
ライブゲームを分析してわかった「おもしろいデータ」があれば教えてください。
赤川:
おもしろいのは、誰かのためにお金をつかうと、自分もそれに「相応しい行動」をとろうとして、自分につかうお金も増える、というデータが出ていることです。
つまり、ライブゲームで誰かのために課金すると、自分にも課金するようになって、よりゲームをプレイするようになる、ということなんですよ。
例えば、現実世界でゴルフをやってる人が、友達に「ゴルフはじめてみなよ」と言って、ゴルフクラブをプレゼントしたとします。
それなのに、一緒にゴルフに行ったときに、安っぽいクラブを使っていたら恥ずかしいですよね。すると、もっと高いクラブを買おうとする。
また、自分から誘ったのに下手だと恥ずかしいから、張り切って練習する。これと同じことがライブゲームでも起こっています。
今後ライブゲームはどうやって伸ばしていきますか?
赤川:
僕らだけで、タイトルを量産するのは難しいこともあり、パートナー企業を募集して、ライブゲームを増やすことを考えています。
僕がDeNAのMobageにいて「怪盗ロワイヤル」が出たときは、数人のチームで2-3ヶ月を投下すると、「月1億円の期待値が持てる」というのが、いろんなゲーム会社の興味を引きました。
先ほどの「エモバト」も、ミラティブ社内の10人以下のチームが、数ヶ月でつくったのですが、月に1億円の売上の期待値が見えてきています。
基本はレベニューシェア型で、はじめはミラティブ側で「開発費」もある程度は出すような形で、パートナーを増やしていく予定です。
ミラティブが「テレビCM」に失敗してしまった理由
赤川:
普通のライブ配信サービスって、配信者は配信をして、視聴者はそれをみてギフトを贈る、そこがパキッと分かれるケースがほとんど。
ところが、ミラティブでは、配信者が「配信者兼視聴者」としてほかの配信者にもギフトを贈る、そのほうが1人あたりの売上もずっと高くなる、というデータが出ていて。
そこにしばらく気づけなくて、視聴者をがんばって増やそうとしてしまい、停滞した瞬間がありましたね。
サービスが大きくなっても「熱量が大事」だったのですね。
赤川:
そうです。コミュニティサービスに火がつくのは「熱狂から」でしかない。これはここ数年でより確信が増してきていて。
見るべきなのは熱量。10%しか使っていなくても、使っている人は継続している。日を追うごとに使う時間が伸びている。そこを見るべきです。
例えば、新しい機能を出したときに「初日に100人がつかった」と聞くと、少なく感じる人が多いと思うのですが、これもちゃんと見た方がよくて。
そこから「翌週は110人がつかった」という結果なら、10人しか増えないと捉えるのではなく、週次で10%も増えたと捉えるべきなんです。
それくらい母数じゃなくて、初期は「熱量」をみるべきなんですね。
ミラティブの公開時も、リリースを派手に打ったのですが、それはノイズがただ増えただけ。翌週には残らないユーザーが増えただけだった。
なので、ライブゲームもプレスリリースは出さずに、約3年前からひっそりとスタートして地道にあたためてきました。
コミュニティサービスでは、初期は「縦に関係性を深めること」が大事と話されていましたが、次のフェーズでは何をすると効果がありましたか?
赤川:
縦に深まった人たち同士で「横のつながり」をつくるのが効きましたね。
Facebookでは「7人友達ができると継続しやすい」というマジックナンバーがあるけど、ミラティブにも「秘伝のタレ」みたいな指標があって。
具体的には言えないのですが、配信者が「この状態」になると継続率がめっちゃ高いし、マネタイズにも貢献してくれる、というのがあるんです。
例えるなら、年賀状を送る相手こそが「友達である」みたいな時代がありましたが、それに近くてこれをしてる人は、長く関係が続くんだみたいな。
なるほど。何をすると「横のつながり」ができますか?
赤川:
例えば、趣味が合いそうな人同士のマッチングや、ほかの配信に行くと自分の配信に人が増えやすくなる構造、などですね。
そうした仕掛けはたくさんあって。あの手この手で、縦に深まってきた人を「横にネットワーク化」しています。
結局、コミュニティが死ぬときって「いつメンばかり」になって新陳代謝が起こらないときなので、そうならないようにずっと意識しています。
数より「熱量が大事」というのは理解できたのですが、初期にそれを信じるのは大変そうです。
赤川:
ミラティブも初期はめっちゃ苦しかったです。全然ユーザーいないじゃん。やめたほうがいいよ。周りにそう言われたこともありました。
でも、一部の濃いユーザー層は、少しずつ少しずつ伸びていた。それが熱量を中心として伸びるとこうなるはず。それを信じて待ち続けた。
当時はまだDeNAの中にいたときの話ですが、そういう中で全身全霊で「自分の信用スコア」を削りながら、0になるまでに結果をだす勝負でしたね。
当時元ミクシィの副社長だった、原田さんという僕の師匠が、「この濃い熱量の伸びはいけますよ」と明確に言ってくれたことも、後押しになりました。
そういった「いつ来るかはわからないけど、いつか確実に来る波を沖で待ち続ける」という勝負みたいなものは、エンタメの0→1では必要なのかなと、改めて感じますね。
ミラティブさんでは、「ギフト機能」を開始したときに、丁寧にユーザーに説明していたのが印象的でしたが、これはなぜそうするのでしょう?
赤川:
運営がユーザーにやさしく寄り添うことは、コミュニティの雰囲気や優しさにも、影響してくるはずだというのがひとつ。
あと、多くのユーザーは、公式からの「お知らせ」を、詳しく見ていないものなので、濃いユーザーに向けて発信している側面もあって。
つまり「ヘビーユーザーが初心者に教える」という構造をつくったほうが、圧倒的に情報を届けられるんですよ。
さらに、ヘビーユーザーが初心者を「助けるメリット」があると、動いてくれやすいので、そういう構造も意識していますね。
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【取材協力】
株式会社ミラティブ:https://www.mirrativ.co.jp/
ミラティブ:https://www.mirrativ.com/
CEO 赤川さん:@jakaguwa
広報 廣田さん:@hrt_ryoka1216
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