スマホで増える「イマ思考」と「選択疲れ」、耳の暇と音声コンテンツ、インスタ映えとTikTok映え、メルカリのバラバラ消費など、スマホユーザー9つのトレンド(2019)
2019年(+α)に、若いスマホユーザーを中心にインタビューして、印象的だったユーザー行動やトレンドを9つまとめました。
※全体を正確に調査したものではありません、参考までにご覧ください。
1、計画を立てない「イマ思考」
スマホでいつでもどこでも、情報を得られるようになったことで、事前に計画を立てずに、予定を当日に決める人(イマから何する)が増えています。
たとえば、目的地だけ決めてホテルは「行きながら」調べる、友達と待ち合わせたあとにインスタ検索して「いま食べたいもの」を食べる。
これは、その日の状況や気分に合わせて、予定をカスタマイズするという意味では、「計画的な無計画」とも呼べるかもしれません。
前日に「スイーツ」と決めてしまうと、当日に「スイーツの気分」ではないかもしれません。そういう意味では、感情ドリブンな決め方です。
似たような形で、タイミーやUber Eatsで、暇な日に働きたい気分だったら、当日にバイトや仕事をうけて働く、という人も出てきています。
このような「イマ軸」で考える人が増えてるためか、Googleで「今日」を含んだ検索回数も、上昇傾向にあるようです。
2、暇な感覚の拡張「耳の暇」と音声コンテンツ
スマホに慣れて多くの人が、信号を待っているときを「暇だ」と感じる、エスカレーターに乗ってるときを「暇だ」と感じるように、
本来、暇ではなかった時間を「なんとなく暇だ」と感じる、とくに若い人が増えてきているように思います。
イメージとしては、「手の暇」「目の暇」「耳の暇」みたいなものがあり、そこに空白があると何かしらの手段で埋めようとする。
たとえば、お風呂に入っているときに「目や耳が暇だ」と感じて、お風呂にスマホを持ち込んでYouTubeを見る人がいたり、
お化粧や歯磨きのときに「耳が暇だ」と感じて、YouTubeをラジオ感覚で、耳で視聴している人がいたり、という感じです。
そうした「耳暇な時間」に、音声コンテンツが入るパターンも増えていて、動画を「耳で視聴する」というケースも増えつつあります。
AirPods(ワイヤレスイヤフォン)もそこに絡んでいて、ハンズフリーで快適に「ながら聴き」できる体験を、想像以上に後押ししています。
3、位置情報を共有する「位置コミュニケーション」
ここ1〜2年でつかわれるSNSに、大きな変化はありませんでしたが、位置情報共有アプリの「Zenly」は、10〜20代にそこそこ浸透しました。
「イマ×ドコ」を共有すると、その人が「何をしてるか?」がわかるため、コミュニケーションのコストを省略できます。
たとえば、家で暇そうなら遊びに誘えばいいなど、いちいち「今何してるの?どこにいるの?」と聞いて、返事を待つ必要もありません。
夜に会社にいたら「残業中だ」とわかるため、LINEやインスタで返事がこないことをムダに心配する、感情の負荷コストも削減できます。
また、定点的な位置情報により「いまどこにいて、どこに向かっているか」が可視化されるため、待ち合わせに便利という点も支持されています。
文字で伝えなくても「いま電車であと5分で駅に着く」など、手に取るように状況がわかりますし、目印のない場所でも合流できます。
4、映え感覚の多様化「ナチュラル映え」「TikTok映え」
映えの感覚が広がっていて、いわゆる「インスタ映え」と言われたものに加えて、新しい映えの感覚も出てきていると感じます。
自撮りを「SNOW」でバリバリ盛るより、UlikeやSODAでナチュラルな雰囲気で盛るような (なお「SODA」はSNOWの会社が出している)
つくり物よりナチュラル、彩度を落とした頑張らないおしゃれ、自然な自分をいい感じに撮りたい、という映えも支持されています。
そのため、美術館の「撮るアート作品」や、非日常を背景に自分を撮れる「ハワイのウォールアート街」なども、スポットとして人気です。
余談ですが、加工アプリは「整形後の予想」をうつす鏡、整形シミュレーションとしても機能していて、そこから整形に興味を持つ人も多いそう。
美容院で髪を染めるくらい、カジュアルに整形する人もいて、リスクはあるものの、人生の満足度を高める「コスパの良い手段だ」と考える人も。
整形メリットを「時短」と捉え、メイク時間が短くなり朝も寝られる、スッピンでコンビニに行ける、時給換算すれば元がとれるという意見も。
映えの話に戻ると、TikTokとインスタでは「映えの方向性」が違っていて、TikTokは動画なので「過程が目でみて楽しいか」も重要です。
わかりやすい例だと、インスタのイクラ丼は「完成形の写真」ばかりですが、TikTokでは「イクラをかける動画」が人気になっています。
5、スマホに情報が多すぎて「選択疲れ」
スマホと親指で「大量の情報」を得られるのは、便利なことに思いますが、多すぎる情報からの「選択疲れ」も引き起こしています。
飽食の時代にダイエットが課題になるように、情報洪水により情報に疲れることが課題になるのは、必然的なのかもしれません。
そのため、グーグル検索で大量の情報から探すより、インスタのストーリーで友達があげて褒めていた、旅行スポットと同じところにいく、
インスタのハッシュタグ検索で、無数の投稿からどの服がいいか探すより、YouTubeで「信頼できる人」が厳選した服の動画をみる、
カフェや歯医者を、検索で出てくる情報から絞っていくよりも、Googleマップで「近場で高評価」なところをパッとみるなど、
AIがレコメンドした情報や、価値観の近い「たった1人」のセンスを信じて、情報を取得する人を多く見かけます。
そうなると、単純情報より体験情報に価値がおかれやすく、GoogleをGoogle先生と呼ぶのならば、インスタはインスタ先輩として機能していて、
「写真を撮る≒先に体験している」であり、インスタはビジュアル体験プラットフォームとして、大きな意味を発揮していると感じます。
6、「時間のコスパ感覚」がコンテンツ消費に影響する
お金の意味での「コスパ感覚」だけではなく、時間に対する「コスパ感覚」というのも、シビアになっていると感じます。
おもしろいかわからない映画に2時間を捧げるなら、YouTubeで動画を20本みたほうが、満足度の期待値が高いと判断されやすくなっている。
スマホに「無料×短尺×良質」なコンテンツが増えたことで、ユーザーが「時間のお財布の紐」を締めるようになっている、というイメージです。
大好きなアニメの再放送を、ニコニコやAbemaで何度も見てしまうことや、ジブリ映画の実況が何度もツイッターで盛り上がることも、
確実にたのしめることが確約された「コスパの高い時間になるはずだ」と、無意識のうちに理解しているからではとも思います。
とくに、映画や書籍など「数時間のコスト」を捧げる必要がある、時間コストの高いコンテンツは、そうした傾向が強くなっていて、
映画や書籍をイラストや図解した、YouTube動画の人気が出ていたり、著者や出版社が書籍の「全文や一部」をネット上に公開したりと、
消費者に対して「時間コスパの高さ」を説得するための、検討から購入への階段をつなぐ「0.5段目」のコンテンツに、ニーズが出ています。
極端ではありますが、映画のネタバレを踏んでもいいから、おもしろいと確定している映画だけみたい、と思う人もいるということです。
7、スマホ時代の考察ドラマと「語り合うたのしさ」
2019年はドラマがヒットしました。「3年a組」「あなたの番です」などの、考察やミステリー系のドラマが、SNSやリアルで話題を呼びました。
毎週のように盛り上がる展開と、それを視聴者が「語り合うたのしさ」が、拡散や口コミにつながって、大きく話題が広がっていきました。
それだと「考察系のドラマ」しか人気にならないと思いきや、他ジャンルでも「語り合う楽しさ」を含んだ、コンテンツが人気になりました。
たとえば、AbemaTVの「オオカミちゃんには騙されない」では、恋愛リアリテイ番組のなかに、「オオカミ」という嘘つきを混ぜることで、
恋愛番組なのに「犯人がいる」という構図になっていて、誰が本当の恋 / ウソの恋をしているのか、考察しながらみるたのしさがあります。
オーディション番組「Produce101」は、視聴者投票でメンバーが選ばれる、自分が考えた「理想の推しユニット」を妄想するたのしさがあり、
誰が脱落してしまうのか、誰が選ばれるべきか激論するなど、そこにも「語り合う楽しさ」があったように思います。
共通点としては「パターンを増やす」で、ミスリードや伏線を混ぜていく、登場人物を多くするなどで、考察のパターン数が多いところ。
人によって「考察や正解のパターン」が変わるからこそ、ほかの人と議論する余白も生まれていて、話題が盛り上がったと感じます。
ドラマ視聴法の変化としては、スマホでの細切れ視聴、ダイジェストや見逃し配信による追いつく仕組み、なども興味深いポイントです。
8、メルカリ上で起こる「バラバラ消費」
メルカリなどフリマアプリが定着しましたが、ユーザーが企業のビジネスモデルを書き換えてしまう、「バラバラ消費」も起こっています。
わかりやすいものだと、福袋を購入した人が「いらないモノ」を出品して、それがバラバラに他の人に買われたりします。
都会の人がデパコスの「無料の試供品」を出品、地方の人が「お試し購入」してよかったら、再度メルカリで中古デパコスを安く手に入れる。
他には、月額で届けられる健康食品がイマイチなら、メルカリでバラ売りされることで、それが検討中の人に「お試し代わり」に購入される。
ハロウィンに揃えた仮装品を、そのまま「セットで出品」することで、もともと個別だった商品が、勝手にパッケージ化される。
そのような、ユーザーが便利だと思う方向にビジネスモデルを書き換えて、ましてや再構築してしまうような、事例をたくさん見かけます。
9、ユーザーがブランディングの舞台に上がってくる
これまで、ブランドは主に企業がつくるものでしたが、ユーザーが舞台の上にあがってきて、ブランドをつくるようにもなりました。
ユニクロのメンズ向けの服が、ダボっと着こなすと可愛いと話題になって、若い女性にメンズの服が売れたり、
コンビニ商品を組み合わせた、想像を裏切るようなレシピが、ツイッターやYouTubeで広がって、コンビニでも品切れになったり、
アンパンマングミに、レジン液を流すと可愛いスマホケースがつくれると、インスタ起点でアンパンマングミが売れたり、
化粧ブランドの「ちふれ」は、この色をこう使うと可愛いと、インスタグラマーやYouTuberに発信されて、10〜20代にも広がっていきました。
このような、企業の意図しない使い方や顧客層に、ユーザー先導でブランドがつくられる現象が、色々なところで起きています。
これは「動画」も後押ししています。WhatやWhenは情報量が少ないけど、How(どうやって)は一番情報量が多いため、
動画というフォーマットは、情報量の限界値が高く(動き・音声・工程)、ハウツー(動画+How)との相性が良いのだと思います。
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本記事は、noteで配信している「月刊アプリマーケティング」より、ピックアップしてお送りいたしました。
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