残資金8万円。給料が払えない。デザイナーコミュニティ「Cocoda!」の立ち上げ戦記、「みんなで受託」でサービス継続できたワケ
デザイナーのコミュニティサービス「Cocoda!」さんにお話を伺いました。ダイジェスト版は漫画でまとめています。
・alma 斎藤さんツイッター(@co_co_d3)
・Cocoda!(https://cocoda-design.com/)
【告知】デザイン人材をプロジェクトに巻き込める「Cocoda! team」が無料トライアル中なので、ぜひご興味あればご検討くださいとのこと。
以下、note購読者向けに、インタビューの「テキスト+図解版」の詳細記事を配信しています。
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※株式会社alma 代表取締役社長 斎藤孝俊さん
○ デザイナーコミュニティ「Cocoda!」について
Cocoda!は、デザインの機会と知見が得られるプラットフォームです。2018年9月に正式版を公開、現在のユーザー数は2万人となっています。
デザインの「お題」に取り組めたり、ポートフォリオを作成できたり、デザインを楽しく身につける機能を、無料で提供しています。
Cocoda!には「楽しいからデザインをつくる人」が多くて、楽しくつくっているうちに未経験からデザイナーに、就職した方もたくさんいます。
○ 事前登録は2,000人、つかってくれたのは「たった2人」
2018年5月に「Cocoda!」のβ版を出したところ、noteに書いたコンセプトに共感が集まり、2日で2,000人もの方が事前登録してくれました。
でも、はじめは「UIトレース機能」しかなくて、実際につかってくれたのはたった2人でした。みんなトレースしたい訳ではなかったんです。
めっちゃ焦りましたね。2人しかやってないぞと。ただコンセプトには共感してくれているから、解決方法が間違っているんだと。
当時は神戸に住んでいたのですが、Googleトレンドで「UIデザイン」で調べると東京でしか検索されていなくて。
それで東京に行くことにしたんです。一緒に創業した3人で神戸から東京に出てきて。3人でシェアハウスに住みはじめました。
○ デザインの観察と問いから生まれた「お題機能」
Cocoda!を使ってもらえるように、東京に来てからデザインの「お題機能」をつくりました。「お題」からデザインを考えてもらう機能です。
本当に使われるか検証するため、Cocoda!に登録した人に毎日毎日会って、「お題」からデザインするところを見せてもらいました。
最初は「名刺アプリをつくろう」とお題だけ提示していたので、どうデザインに落とせばいいのか、みんな全然わからない状態でした。
ただ、手が止まったときに「こう進めるといいですよ」横から何か言うと、考えるキッカケになって、手が動きはじめたんですよ。
たとえば、名刺アプリだったら「世にある名刺アプリってなんですか?」「Sansanです」「じゃあSansanをDLしましょう」みたいに。
「ターゲットは誰にしますか?」「どんなシーンでアプリを使いますか?」「どんな体験を重視しますか? 」問いがあると考えやすくなる。
そうやって質問して観察して。大きなヒントになった「問い」をメモする。これをめちゃくちゃ繰り返しました。
そのうち、僕らが問いかけなくても「問い」をページ上に載せておけば、ユーザーがデザインを自分でつくれるようになりました。
そして、Cocoda!に熱狂する人も出てきて。実際に2人Cocoda!をキッカケで、デザイナーに就職した人も現れました。
銀行員だった人がデザイナーに就職したり、研究職の人がデザイナーに就職したり、それを機能として提供したのが「お題機能」でした。
「お題機能」が完成して、2018年9月にCocoda!正式版を公開したところ、少しずつユーザーが入ってくるようになりました。
○ 初期はどのようにユーザーが増えていったか?
「お題機能」でつくったデザインを、ツイッターやnoteで発信してくれるユーザーの方が多くて、そこから登録者が増えていきました。
あと、想定外だったのですが、Cocoda!の「お題」をみんなでやろうと、ユーザー発のイベントが生まれていったんです。
沖縄でイベントが開催されたり、企業内のデザインチームが5人で集まって勉強したり、サービスから繋がりが生まれました。
その頃は、運営でデザインのイベントもやってましたね。有名なデザイナーの方に来ていただいて、みんなで交流したり。
そんな感じで、デザイナーの方は学習したり発信する意欲が高くて、いろんな広がりが生まれて、ユーザー数が伸びていきました。
○ 売上ゼロで資金が尽きる「残資金は8万円」
ユーザー数も増えてきて、ただ次に問題になったのは売上のところでした。どうサービスを収益化していくかです。
2018年9月に、企業とデザイナーをつなぐ「採用サービス」を始めたもののうまく立ち上がらなくて、2019年2月まで「売上はゼロ」でした。
初期に資金は調達していたものの、売上がなく2月には「資金が尽きそう。あと3ヶ月で会社が死んでしまう」という状況になりました。
結局、2019年5月に「お金がない」となって。8万円しかなかったのですがやばいとなったときは、給料が払えない状態でした。
会社を継続するため資金到達にも動いたのですが、ビジネスモデルが成立していなかったので、誰も資金を入れてくれませんでした。
今までは、ユーザーに愛されてさえいれば、デザインが重要な時代がきて、企業が向こうからきてくれるはずだ、そう考えていました。
でも、お金がないとサービスは継続できませんでした。
○ みんなで受託業務して「ギリギリで給料を支払った」
売上をつくらないといけない「じゃあどうするのか」という状況で、みんなで受託の仕事をすることを、選択をしました。
僕も、5月のタイミングで「この会社にいることを考え直したほうが良い」と伝えたのですが、それでもみんな付いてきてくれました。
経営者としては、力不足を痛感しましたし、申し訳ない気持ちでしたが、「みんなここだけ踏ん張ろう」と受託の仕事をはじめました。
受託といえど、すぐ給料を払えるかわからず「一旦お休みしてもらう」という伝え方をして、何人かは会社から離れてもらいました。
もちろん、その前後で辞めていく人もいました。8人いたところから、5人くらいまで人数が減り、そこから受託をスタートしました。
受託をはじめると、デザイナーはクラウドソーシングでUIの仕事を取ってきたり、エンジニアのメンバーは伝手で仕事を取ってきてくれました。
そういう、ほぼ個人で取ってきた仕事を会社に入れてくれて、ギリギリで給料を払いました。なんとか稼いでみんなで分け合って。
その間に、僕ともう1人が「どうにかして売るぞ」ということで、Cocoda!の採用サービスの営業に行きました。
それで、8月に採用サービスでなんとか売上が立って、会社から離れてもらっていた人にも、戻って来てもらえました。
○ 変わった経営意識と「Cocoda!の現在」
そうした経験を経て「経営の意識」は変わりました。それまでCocoda!というサービスは「僕のものだ」と思っていたんですよ。
僕が一番守らなきゃいけないんだ、僕がなんとかしなきゃダメなんだと。
でも、みんなの覚悟を聞いているうちに、僕についてきてるんじゃなくて、みんなCocoda!の思想のもとに集まった人たちなんだ、みんな経営者なんだなって、強く思うようになりましたね。
2020年8月現在は、社員と業務委託合わせて12人、7,000万円の資金調達も完了することができました。
これからも「誰もがクリエイティブに生きられる社会」をつくるべく、より事業と組織を成長させていきます。
※ 以降はオフトークという形で、プロダクト運営の成功事例などnote購読者向けに4つまとめています、ご興味ありましたらぜひご覧ください。
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