資金が尽きて会社が潰れる...から崖っぷちのリニューアルに成功。直近半年で1.2億円が課金されるアプリに成長した、カラオケの配信アプリ「トピア」が語るピボットの裏側。
カラオケ配信アプリの「トピア」を取材しました。
※ 株式会社アンビリアル 代表取締役 前原 幸美さん
配信アプリの「トピア」はどのように始まったのでしょうか。
前原:
はじめは、VRっぽい世界観をスマホで表現しようと考えて、VTuberになって配信できるアプリとして、トピアを2018年に公開しました。
ところが、VTuberの初期のブームは、アプリの公開時には落ち着いていて。想定よりもユーザー数が伸びなかったんです。
本当なら、VTuberのトレンドに乗って、ユーザーが急増する予定。しかし、数ヶ月たった時点でアクティブユーザーは「数千人」でした。
なるほど、そこからどうしたのでしょうか?
前原:
8,000万円ほど資金調達していたのですが、資金も半分ほどまで減っていて、売上も立っていない。このままだと資金が尽きてしまうと。
メンバーも10名ちょっといたので。ピボット(方向転換)しなければこのままだと生き残れない、ということになりました。
残された時間は半年、大きな手を打つならラスト1回。そういう状況でした。
そこから「カラオケ配信アプリ」になるわけですよね、なぜあえて「カラオケ」を選んだのでしょう?
前原:
いくつか候補がありました。ゲームやカラオケなどです。カラオケを選んだ理由は、まずカラオケアプリには「絶対的な王者」がいなかったこと。
また、カラオケなら「特別なトークスキル」がなくても、誰でも配信を続けやすいと考えました。うまく喋らなくても配信が成立するからです。
マネタイズ面でも、カラオケは「1曲ごと」に区切りがあるため、歌い終わりに「よかったよ」とギフティングされるイメージも湧きました。
あと、トピアの一部のユーザーが、音源を自分で用意して「カラオケ配信」を元々やっていたんですよね。そこもヒントになりました。
ピボットするときには、メンバーには「資金が尽きそうだ」という話はしましたか?
前原:
正直に言いました。正直に「資金がもう尽きそう」と。だけど「カラオケ+ギフティング」は見込みがあるしやり切りたい、とみんなに話して。
結果的に、そこで辞める人はいなくて、開発もスケジュール通りに進んで、カラオケ配信アプリに無事リニューアルできました。
はじめは、JOYSOUNDさんと提携して、300曲しかない状態からスタート。300曲には「ボカロやアニソンの人気曲」を厳選しました。
トピアのプロフィールに「歌い手リスナーです」と書く人が結構いたので、歌い手やボカロが好きな層が多いと判断したためです。
アプリの「リニューアルの結果」としてはどうでしたか?
前原:
想像以上にうまくいきました。リニューアルから1ヶ月、配信者(ライバー)が1.6倍になり、課金額も1.5倍に伸びました。
カラオケ機能がついたことで、見ていただけの人が「これならできる」と、配信をはじめてくれて「ライバー数」が増えたのが大きかった。
ライバーは「鶏と卵」でいうと卵。カラオケへのコンセプト変更によって、ライバー層が拡大して、そこにファンがついて課金額が伸びました。
リニューアルから、2ヶ月後には月の課金額が3.3倍に、5ヶ月後には月の課金額が約10倍に、と数字が伸びていきました。
このときは「首の皮一枚つながった」という感覚でした。プロモーションをするお金もなかったので、うまく伸びて本当に良かったです。
ピボットから得られた「教訓」があるとしたら?
そこから軌道に乗ったのですね。「現在のトピアの数値」はどのような感じになっていますか?
前原:
ここ半年間の累計課金額でいうと1.2億円以上、月の課金額は2,000〜3,000万円の規模まで成長してきています。
コミュニティとしても伸びていて、配信+視聴時間としては月間2,700万分、配信のコメント数は月間1,800万コメント、を超えています。
ユーザーの利用時間は「1日あたり平均3時間」となっていて、ユーザーがハマるコミュニティが出来つつあります。
※ ユーザー男女比は「50:50」くらい、年齢層は18-34歳で約8割を占める。現在はカラオケの楽曲数は15,000曲まで増えている。
アプリを運営していて「意外だったこと」を教えてください。
前原:
アプリの外でも「有名になりたい層」より、アプリ内の「コミュニティや体験を大切にしたい層」のほうが、実は多かったこと。
そのため、イベントの賞品は、広告出演権や有名ボカロPの楽曲提供より、アバター衣装にするほうが、意外にも売上や参加者が多くて。
理由は、みんなで手に入れた証として、アプリ内で見続けられるためで、想像よりも「コミュニティ内の一体感」を求めるニーズが強かった。
僕らも、最初は「アバターのほうが嬉しいの?」という感覚でしたが、その後いろんなユーザーさんの配信を見に行った結果、僕らの主観と求められているものにギャップがあることを痛感しましたね。
ユーザー全体における「配信者の比率」は38%だそうですが、配信者率を高めるための工夫はありますか?
前原:
配信の障壁になることは、なるべく排除しています。例えば「アバター」があると沈黙が多少あったり、間ができても大丈夫なんですよね。
顔出し配信よりも、音声配信のほうがトークで勝負しないといけないので、気を遣うと思うんですけど、アバターがあるとそれが緩和されます。
同じような理由で、配信慣れしている人って、よくBGMを流すんですけど、デフォルトでBGMを流せるようにして、雰囲気を和らげています。
他にも「配信ハードルを下げる工夫」はありますか?
前原:
あと、配信に人が来ないときは、アプリ上に「人が来るまで歌っていてね」と出して、ひとりで歌練を促進するような工夫もしていますね。
雑談配信だと、誰もこないと待つしかないけど、カラオケなら歌練ができるので、歌いながら待っている設計にしています。
なにか「数値を改善できた施策」があれば教えてください。
前原:
配信の視聴時間やコメントによって、コインがもらえる「トピボックス」という仕組みを入れたところ、当時の継続率が1.2倍になりました。
これを入れたことで、推しの配信者にギフトを投げるために、他の人の配信枠を回って無償コインを貯める人も、かなり増えましたね。
「ユーザー理解」のためにやっていることを教えて下さい。
前原:
アプリのアップデート直後は、ユーザーさんの「本音」を拾いやすいため、配信をこっそり見にいって声を拾うことです。
もちろん、イマイチだった場合は、ストレートに批判されますが、普段なら本音を引き出すって難しいですし、本当に改善に役立ちます。
配信アプリの場合は、「新機能のお試し会」を配信してくれる人が必ずいるので、見にいって正直な感想を確かめています。
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【取材協力】
トピア:https://topia.tv/
株式会社アンビリアル:https://unbereal.co.jp/
前原さん ツイッター:@ymae619
【告知】トピアさんでは採用も強化中。マーケターやエンジニアなど探しているそうです。ご興味ある方は下記のサイトよりどうぞ。
※ 以降は、マニアックな事例を5つほどnote 購読者向けにまとめています。課金率を1.5倍に改善できた施策、マッチングの工夫で継続率が20%改善、配信アプリでKPIを分析する工夫、などご興味あればご覧ください。
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