読み放題をやめたらアプリの収益性3倍に。チャット小説の「peep」が語る、サブスクの読み放題から「強いIP」が育たない理由と、ボタン文言変更で収益性1.2倍になった話
300万ダウンロードのチャット小説アプリ「peep」さんにお話を伺いました
※ taskey株式会社 CEO 大石 ロミーさん、CTO 深見 将一さん、peep事業推進部 部長 相澤 一樹さん
「peep」について教えていただけますか?
相澤:
peepという、e-Storyアプリ(チャット小説)を運営しています。ダウンロード数は300万を超えていて、2,000作品が掲載されています。
ユーザー層は「22歳まで」が60%と若くて、iOSが80%くらいを占めます。現在は40名ほどで運営しています(インターンや業務委託を含む)
どのような経緯で「peep」が生まれたのですか?
大石:
もともとは「世界でヒットする作品」を生み出すことを目的とした会社で、当初は「taskey」という小説投稿サイトを運営していました。
僕はそこで「書き手」としても活動していたのですが、従来の縦書きの小説を読むユーザーって、どんどん減っていくなと感じました。
それで、スマホで見やすい「新しい小説のインターフェイス」をつくろう、というコンセプトで開発したのがpeepでした。
最初は「アプリに掲載する作品」はどう集めましたか。
大石:
アプリ公開時に「100作品くらいは欲しい」と思って、知り合いの作家さんに声をかけさせていただき、作品をつくっていきました。
ただ、それだけだと「50作品」しか集まりませんでした。それで、残りの50作品は僕が自分で書くことにしました。
結局、3ヶ月くらいで50作品をどうにか書き切って、アプリをリリースすることができましたね。
そのときに生まれたのが「監禁区域レベルX」という作品で、累計で120万人に読まれた、今でもpeep上で一番読まれている作品です。
大石:
IPというコンテンツは、工場で量産することもできません。そういう属人的な部分があるというのは、今でもうちの個性になっていて。
だから、僕が書くことは一生続けていくと思います。今でも月の半分くらいの時間は、僕自身が作家としてコンテンツをつくっています。
深見:
うちは社長がコンテンツをつくる会社でもあり、コンテンツ好きな人が集まる会社です。大石も「コンテンツと心中する」と言っています。笑
ユーザーが大きく増えたキッカケがあれば知りたいです。
大石:
2018年の8月に、キヨさんというYouTuberに「監禁区域レベルX」を実況いただいたときは、peepのユーザーが急増しましたね。
リンクも張っていただいてなかったのに、毎日1万人弱は増え続けていて、毎日サーバーが落ちるくらいの勢いでした。
当時は、月500万円くらい広告費を使っていて、ある程度の流入はあったのですが、それに加えての急増でサーバーが落ちてしまったんです。
YouTubeで「監禁区域レベルX」が注目を集めたものの、当時は「3話まで」しかなかったので、急いで続きもつくりましたね。
深見:
キヨさんのpeep実況は、一番多い動画だと約1,000万再生されていますね。そこから他のYouTuberさんの実況も増えていきました。
※ 約1,000万再生されている、キヨさんの「peepの実況動画」
これまでpeepの運営で「ここは転換点だったな」と思うところはありますか?
大石:
2020年に「サブスク(読み放題)」から「従量課金」に移行したことです。これは明確に成功したなと感じています。
従量課金に切り替えたことで、1ユーザーの収益性(ARPU)が3倍くらいに改善されました。なのでこれは「昨年の最もよかった判断」でした。
背景としては、日本には良いコンテンツに従量課金する土壌があったこと。
日本の漫画市場って、年間4,000〜5,000億円あるのですが、漫画というのは従量課金で成功しているモデルですよね。
peepは漫画ではないのですが、可処分時間を奪い合うコンテンツとしては、共通するところも多いと思っています。
実際に、ユーザーにアンケートをとったら、peepを「漫画アプリだと思って読んでいる人」が、30%もいたんですよね。
イラストや背景で補完された小説を「漫画と変わらない感覚」で読んでいる10〜20代の人が多かった、ということです。
ほかに「従量課金への転換」で変わったことはありますか?
大石:
サブスク読み放題モデルで失敗したのは、転換率と会員数を伸ばすために、とにかく「新作を放り込もう」という考えになってしまったこと。
短い作品も「読み放題」なら収益化できます。つまり「話数が短い新作」をたくさんつくると効率が良いんですね。
でもそうすると、3話とか5話のコンテンツって、映画にすることも漫画にすることもできなくて、peep内で閉じてしまいます。
それだとIPは育ちません。今人気のコンテンツも、ゲーム会社さん、アニメ制作会社さん、出版社さん、いろんな会社に育てられたものですよね。
だからこそ、ビジネスモデルを切り替えて、早くコンテンツを長尺化して、従量課金でいったほうがいい、と判断しました。
ただ、従量課金って積み上がる売上もないですし、本当にクオリティの勝負になる。そういう意味では、覚悟も必要でした。
現在はどのような流れで「作品」をつくっていますか?
深見:
peepにある2,000作品は、すべてオリジナルコンテンツです。社内に編集部を設けていて、作家さんと話し合いながらつくっています。
最初は「読み切り」からはじめるんですよ。例えば「10話」で読み切りを出してみて、数値が良かったら連載していきます。
そこから「読者の反応」が良かったら、今度は映像化(シネマコンテンツ)していく、そのように段階を踏んでいますね。
相澤:
読者の反応が良い傾向があるのは「トレンドを踏まえた作品」です。例えばフードデリバリーの配達員が実は殺人犯だった、とか。
○ 1、課金画面に「無料コインへの誘導」で継続率アップ
相澤:
スターコインの課金ページに、無料でコインがもらえる「クエスト」の導線を入れてみたら、どうなるか検証したことがあって。
結果としては、課金率や1ユーザーの収益性(ARPU)はそのままに、クエストの利用率を2倍に改善することができました。
クエストの利用ユーザーって、アプリの継続率が1.5倍くらい変わるんです。なので、アクティブユーザー増加にもつながる良い施策でした。
課金ページに「無料でもらえる仕組み」を置くのに不安もあったのですが、ユーザーの「選択肢を増やす」って良いことですよね。
結局、課金ユーザーは「課金する」と決めているし、無料ユーザーは無料でつかうので、それぞれに訴求するのはプラスになりました。
○ 2、一度「YES」をもらうようにしたら収益性が1.25倍に
相澤:
peepで作品を読むときの「読むボタンの文言」を、少し変えてみたところ、収益性が大きく変わったことがありました。
もともとは、コインが足りていない場合は「スターコインを課金して読む」のように、購入を促す文言と一緒に訴求していたんですよ。
それを「初めから読む」と「続きから読む」にして、コインが必要なら購入してもらうようにしたら、収益性(ARPU)が1.25倍に上がりました。
最初のパターンだと「続きを読む・課金する」を同時に聞いているけれど、質問を分けて一度「YES」をもらってから、もう一つの選択肢を与えたほうが、次に進んでもらいやすかった。
○ 3、チュートリアルで「STEP数」を表記したら突破率がダウンした
相澤:
チュートリアルの突破率を上げるために、STEP①②③とSTEP数を表記するようにしたところ、逆に突破率が20〜30%下がってしまいました。
仮説としては、終わりが見えたほうがより突破しやすくなるかなと。でも、3つSTEPがあるとわかると、逆に離脱してしまったんです。
peepは広告からの流入が多くて、一定数「これが読みたい。早く読みたい」というユーザーが多いから、そうなったのかなと。
これは失敗した施策でしたね、社内で大騒ぎになってすぐ戻しました。
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peep:https://peep.jp/
ツイッター:大石さん(@oishi_romy)、深見さん(@fukamiiiiinmin)、相澤さん(@kaaazukii8)
【告知】taskeyさんでは採用募集中。マーケター、エンジニア、PdM、コンテンツプロデューサー(編集者)を探しているそう。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
※ 以降は、マニアックな話をnote購読者向けにまとめています。施策4〜9の課金アイテム構成で収益性が1.2倍に、出し分けバナーで収益性が1.2倍に、YouTube広告の効果を高めるコツなど、ご興味あればぜひご覧ください。
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