初期投資300万円。学生に名刺配り勧誘。音声配信アプリ「Radiotalk」創業者が語る「最初の50人」を集めた方法と、音声を科学する「レコメンドアルゴリズム」のつくり方。
音声配信アプリ「Radiotalk」さんにお話を伺いました。ダイジェスト版は漫画でまとめています。
・Radiotalk 井上さんツイッター(@JD_KAORI)
・Radiotalk(https://radiotalk.jp/)
以下、テキスト版の詳細インタビューです。
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※ Radiotalk株式会社 代表取締役 井上佳央里さん
○ Radiotalk(ラジオトーク )について教えてください
だれでも番組をつくって、音声配信できるアプリです。2017年8月に公開、現在は6万番組・30万コンテンツが配信されています。
再生回数としては、ここ1年で5.5倍に伸びています。1人あたりの再生時間としては、1日に平均50分くらい聴かれていますね。
また、1日の再生時間が平均50分のうち、7〜8割の時間はバックグラウンド再生です。
社員としては5名で運営していて、業務委託やインターン生も入れると20名ほどの体制になります。
○ 配信者の「最初の50人」をどう集めたか
リリースの瞬間にコンテンツが0だと、誰もアプリを使ってくれないので、公開前にβ版をつくって、配信者とコンテンツを集めました。
最初の50人については、アナウンス専攻や放送研究会に入っている学生に、ひとりずつ会いにいって集めていきましたね。
自分自身がそういう学校出身なので、母校にいって知らない学生に名刺を配ったり、公開収録などに行って声をかけていきました。
ちょっとすみません。さっきの発表みてたんですけど。と声をかけて。それで学食とかに行って勧誘する。もうナンパ活動に近いです。笑
ツイッターで検索して、放送系の学校に通ってる学生を探して、リツイートから似たような人を辿ったり、名古屋に遠征にいったりもしました。
「音声なんてやる人いる?」とも言われましたが、「未来は絶対にそうなるから!」と説得して信じさせる、という無理矢理なこともしました。
立ち上げはそんな感じで、最初の50人を泥臭く足で集めて、その50人の紹介でまた人が来てくれました。
○ Radiotalkは「社内ベンチャー制度」から生まれた
Radiotalkは、エキサイトの「社内ベンチャー制度」からできたサービスで、最初はエキサイトブログのプロデューサーとしての業務をこなしながら、業務外でRadiotalkの公開準備を進めていましたね。
最初の投資金額は300万円くらいだったので、開発費にほぼ回してギリギリまで良いものをつくって、あとは泥臭い作業をやっていきました。
社内にエンジニアもいなかったので、初期はフィリピンでのオフショア開発でつくりましたね。それで、段階的に目標KPIを設定していって、達成したら社内からエンジニアを増やせる、という条件だったんです。
それもあり、初期バージョンのRadiotalkは「機能も品質も最低限」でした。配信エラーも頻繁に起きるし、検索など当たり前の機能も一切ナシ。
Radiotalkの公開日には、問い合わせフォームから「知らない素人の話なんて聞きたくない」みたいな辛辣な意見が送られてきました。笑
それでも「最初の100人」が使ってくれたから、目標KPIを達成できました。
ボロボロのプロダクトでしたが、コアなユーザーが「1人あたり月37回」も配信してくれたから、運営を続けていけることになりました。
○ 音声レコメンドのアルゴリズムについて
現在Radiotalkでは、30万のコンテンツが配信されてますが、「誰にいつどの音声を届けるか」という、レコメンドのアルゴリズムを重視しています。
アルゴリズムの様々な改善によって、1人あたりの消費コンテンツ数も、4.0/dayから7.5/dayまで、この1年で約2倍に改善できました。
たとえば、コンテンツは「ネタと人と感情」の3軸で分けていて、それを人力と機械学習をつかって、107つの軸に分類しています。
ネタ軸はわかりやすいものだと「ドライブ中におすすめ」とか。怖い話の中でも「霊的に怖いホラー」と「奇妙な話」で分けてるものもあります。
感情軸というのは、癒し系な女の子がおっとり喋るのがいい、若い男の子が2人で掛け合いするのがいい、という雰囲気やテンションのことです。
自動再生の仕組みも、どこから訪れたかで変えていて、Aさんの番組をAさんのアカウントで再生したら、Aさんの番組が連続で流れる。
一方で「# 失恋エピソード」というハッシュタグから再生したら、連続でそのタグがついた番組が流れるようにしています。
○ 音声は「人とシーン」のパーソナライズが大事
音声コンテンツって、人とシーンのパーソナライズが大事なんです。
音声では「ぴったりくる」のが重要で、みんながおもしろいと思うよりも、この人のこのシチュエーションでちょうどいい、が大切なんですね。
以前の失敗例で言うと、万人にウケるコンテンツがあると考えて、これは鉄板で面白いというものを、運営が選んでおすすめしていました。
でもそれは上手くいかなくて。もっと「似てるもの」を流すようにしたら再生時間が伸びました。人の好みが如実にあらわれるのが音声なんだと。
すごく生っぽいんです。音声って。耳でトークに集中するから、息遣いも好きな人なら心地良いし、嫌いな人のものだと敬遠されてしまう。
音声コンテンツの「ぴったりくる」の重要度は、動画やテキスト以上だと思っていて、そこが音声のむずかしさでもあると感じます。
○ その人の好きな「声や話し方」を分析して、声質によってアルゴリズムも変えている。
声質でもアルゴリズムを変えています。音声は「高さ・大きさ・音色」という要素を持っていますが、とくに音色のところに特徴があります。
たとえば、高さで「女性の声」と判定できても、女子校のようなワーキャーした感じと、1人でじっとりと独白してるのでは、まったく違います。
同じ高さでも、ギターとピアノの音は違います。それが「音色」なんです。人の声でも同じことが言えるんですね。
小説なら好きな「文体」、漫画なら好きな「絵柄」があるように、音声にも好きな「声や話し方」があるんですよ。
そこで、聴いている音声の「音色」の傾向から、好きなそうな音声をレコメンドするようにしています。
漫画でたとえると、「ガラスの仮面」の美内すずえさんの絵柄が好きなら、「エースをねらえ!」の山本鈴美香さんの絵柄も好きだろう、みたいな。
でも、そこに「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦さんが来たら、ちょっと違うかもみたいな、同じ括りでも求められるものが違ったりする。
そういうところからも、リスナーが配信者を好きになるチャンスを、増やしていくように意識しています。
○ 外出自粛でユーザー数はどう変化したか?
ユーザー数はここ3ヶ月で2倍ほどになりました。3月→4月で1.5倍になり、4月→5月で1.3倍になり、6月に入っても伸び続けていました。
とくに配信者が増えたのが大きかったです。4月にリモート収録の機能を入れたところ、それを起点にバイラル係数が伸びたんですね。
リモート収録ができるようになったことで、これまで配信者が1人でシェアしていたのが、ゲスト参加者もシェアしてくれるようになります。
毎回いろんなゲストを呼べるから、配信者も配信回数が増えるし、ゲストも配信をはじめてくれる、そういう良いサイクルが生まれました。
1回体験すると「こんなに簡単なら自分もやろう」となりやすく、リモート収録が「配信体験」として機能したのがよかったです。
○ 音声を「テロップ動画化する」SNS共有機能つけたら、RT数+13%、WEB流入+25%に
音声コンテンツって広がりにくくて、狭くて深い「村」になりやすいけど、パッと拡散されて世界進出することは中々できません。
そこで、配信コンテンツの音声を認識して「自動でテロップ文字」を入れる機能をつけて、動画形式でSNSに共有できるようにしたんです。
結果としては、ツイッターでのRT数が+13%増えて、ツイッターからのWEB流入も+25%増加しました。SNS上の拡散や再生数は伸びました。
ただ、拡散を生む「着火剤」になった一方で、流入後の再生数にはつながりませんでした、この背景には音声特有のある理由があったんです。
○ OGP画像に「再生時間」で再生率40→60%に改善
なぜ流入しても再生されないか、それは記事だと勘違いして流入した後に、音声だと気づいて「今は聴けない」と離脱されやすいためです。
そこで、OGP画像に「再生時間」を書くことで、ツイッターのタイムラインで「これは音声のコンテンツだ」と、わかるように工夫しました。
すると、WEB訪問者の「再生ボタン」クリック率が40→60%に改善されて、音声の再生率が大きく上がりました。
音声コンテンツって「再生ボタン」を押すまでのハードルが高いので、事前に「これは音声だ」ということを明示するのが大事でした。
そうしたことで「後で聴こう」と思ってもらえたり、「今は聴けないから」という離脱が起きにくくなって、数値が改善したのかなと。
○ Radiotalkのマネタイズについて
基本は、配信に投げられる「差し入れ」(投げ銭アイテム)ですが、企業さん向けの音声コンテンツ事業にも取り組んでいます。
4月には学研さんの問題集の音声版をRadiotalkで公開、小学生が紙と鉛筆だけあれば勉強できる、家庭学習用の音声を配信しました。
他には、アイドルの和田彩花さんに、友達のような距離感で話しかけられながら、美術館をめぐる体験ができる音声を配信したり、奈良の古墳を回りながら、NMB48メンバーの音声が聴けるコンテンツを配信したりしています。
そうしたBtoBの音声事業というか、いろんな外部企業さんと取り組みする、音声の事業にも取り組んでいますね。
【Radiotalkさんより告知】音声配信をはじめたい、Radiotalkの配信者を活用したいなど、音声に興味のある会社さんはぜひ連絡ください! とのこと。
※ 以降は「オフトーク」という形で、マニアックな運営話をnote購読者向けに6つまとめています、もし興味がありましたらぜひご覧ください。
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