3,200万人がつかう「TimeTree」ユーザーインタビューで「心の声」を聞く3つのコツ。TikTokのフォーマットバズで「数十万人超」のアプリユーザーが英語圏で増えた話。
共有カレンダーアプリ「TimeTree」を取材しました。
※ 株式会社TimeTree CEO 深川泰斗さん
最近の「TimeTree」のユーザーデータを教えてください。
深川:
TimeTreeは登録ユーザー数としては、世界3,200万人を突破しています。一番は、家族で使われているケースが多いです。
90%くらいの方は、カレンダーを共有して使っていると思います。新規登録後の7日間のユーザー定着率は、75%前後をうろうろしていますね。
国別でみると、日本のユーザーが半数強、続いてアメリカ、ドイツ、台湾、イギリス、韓国といった順番で、利用者が多くなっています。
※ 会社のメンバー数は「60名ほど」になっているそう。
TimeTreeは「馴染みのレストラン」のように運営
ユーザーとのコミュニケーションを起点に、プロダクトを改善している事例があれば教えてください。
深川:
TimeTreeには、カスタマーサポートとして対応したり、常連さんに話を聞いたりする、ユーザーリレーションというチームがあって。
そのチームが主導になって、3ヶ月に1回、新規開発は一切やめてしまって、細かいバグや使いにくい箇所の改修だけをやる、バグフィックスウィークという取り組みをしています。
小さいバグなどって、いつまでも手をつけられずに残りやすいので、それを解決するためにはじめた取り組みですね。
具体的にはどのような問題を改善していますか?
深川:
例えば、カレンダーの「曜日の色」の問題を解決しました。日本では「土曜は青・日曜は赤」ですが、これってグローバルで見ると特殊なんです。
そこで、グローバルに合わせて「土曜日を黒」にしたのですが、アジア圏の人からは「もとに戻して」と言われてしまいました。
そこで今度は、端末の地域によって、アジアなら「土曜日は青」に、それ以外は黒にしたところ、うまく解決できました。
このときに、要望を問い合わせしてくれた方には、ひとりひとりに「本件を対応しましたよ」と、後から報告するようにもしました。
すると「わたしの声が届いた」と喜んでくれて、レビューやツイッターにTimeTreeのことを書いてくれる人も増えます。
これは、初期に僕自身がサポートをしていたときからやっているのですが、このようなことを今でも大事にしていますね。
ユーザーインタビューもよくするそうですが、そのときに「意識していること」があれば教えてください。
深川:
これはセオリーかもしれませんが、感想ではなくて事実を聞くこと。どうですか? と聞くより、今日どうしましたか? と聞いたほうがいい。
あと、漠然と喋ってしまわないように「何をたしかめるのか」はしっかりと事前に決めますね。この機能で困ってることが何か聞きたい、とか。
まずは、たしかめたいことを決める。そしてそれを知るためには、なにを聞けばわかりそうかを考える、これを意識しています。
※ 定期的に「TimeTree Day」という、オフィスパーティーを開いて、ユーザーとコミュニケーションも取っている(現在はオンライン)
なるほど。「本音を話してもらう工夫」は何かありますか?
深川:
アイスブレイクはすごく大事にしますね。
例えば、はじめに「僕らは厳しい意見ほど大喜びですので」というと、そこでみなさん笑ってくれて、本音を言ってもらいやすくなります。
やっぱり、みなさん優しいので、良く言ってくださることが多い。なので、カジュアルに本音を喋ってもらえるようにするのは大事ですね。
あとは、社内では「妻インタビュー」もよくやります。ちょっと家族に意見を聞いてみます、という感じです。
本音を言ってもらいやすいですし、生活スタイルがわかっているから、こういう人にこれはダメなんだと、クイックにわかるのがいいですね。
質問のときの「聞き方のコツ」があれば教えてください。
深川:
本当に知りたいことを聞くときは、ハードルを設定して質問します。
例えば、「この機能が100円なら買いますか?」とか、「この3つでひとつしか選べないとしたらどれですか?」のように質問します。
単に「この機能いいと思いますか?」と聞くと、みんな「いいと思います」と答えやすいので、そうならないようにするためです。
もちろん「有料なら要らない」となることもあります。すると、あまり強くは求められていないのかなと、より本音がわかります。
アプリの運営で「成功した施策」があれば教えてください。
深川:
初期のヒット施策として、様々なユーザーさんの使い方を紹介する「みんなの使い方」というページを、つくったことがあったんですね。
ただ、初期は「家族の利用例」を紹介していればよかったのですが、使い方もだんだん多様化していたので、もっと細かく事例をカタログ化できないかという課題がありました。
そこで「みんなの使い方2」として、ツイッター等で見つけたおもしろい使い方をしてる人に、話を聞かせてもらって利用事例をまとめていきました。
ゲームのクランでイベント管理につかっています、高校のテニス部でつかっています、いろいろな事例を集めました。
結果としては、その利用事例をみたユーザーさんの、カレンダーの作成率が2倍強に改善する、という成果にもつながりました。
最近で大きくユーザー数が伸びたキッカケはありますか?
深川:
TimeTreeがTikTokで話題になり、今年アメリカでユーザー数が伸びました。アメリカのApp Storeで総合 37位まで上がりましたね。
高校生が「これいいよ」と紹介してくれた動画が広まって、とくに高校生や大学生の仲良しグループで、使ってくれる方が増えたんです。
アメリカはバイトで忙しい人が多いみたいで、カフェでみんなでだらだら喋れる日とかを、予定を共有してぱっと見つけたいそうです。
※ 実際のTikTokの投稿。50万以上の「いいね」が付いている。動画の投稿者にもコンタクトしてインタビューを実施したそう。
TikTokで「一人の学生の動画」から広がったんですね。
深川:
はい。はじめは一人の学生の動画からでしたが、そこから「私もTimeTreeをこう使ってるよ」という動画がたくさん増えてきました。
これはTikTokの特徴で、ひとつのフォーマットがヒットすると、それを真似して投稿する人が、どんどん増えるみたいなんですよね。
TikTokで動画が広がったことで、英語圏全体で伸びる効果もありました。
TimeTreeには、「3万円まで経費を自由につかえる制度」「有給を実質無制限にとっていい制度」があるそうですが、これはどんな意図で用意しているのですか?
深川:
みんなに「主体的に仕事してほしい」と考えているからです。
TimeTreeは、各自の「こうした方が喜ばれるはず」という、主体性や創造性の積み重ねによって、評価してもらえるアプリになっています。
でも、何もなしにみんなに「創造性を発揮してね」と言うのはむずかしい。それと自由の幅がある制度って、裏表だと思うんですよね。
有給に制限がなければ、いつ仕事していつ休んで、と自分で考えられます。なので、こうした自由の幅の大きい制度をつくっています。
もしリリース時に戻れるなら「ここはこうすればよかった」と思うことはありますか?
深川:
パソコンのブラウザ版のTimeTreeは、わりと早くに開発したのですが、もっと後回しにしてもよかったと感じますね。
初期にアプリ版で、家族の次に「仕事で使う人」が増えはじめていたので、ブラウザ版をつくればもっと早く広がると考えたんです。
しかし、これは読み違えていました。実際は「デスクワークではない仕事」で使っている人が多くて、そこはあまり関係なかったんです。
これまでに印象的だった、利用ケースはありますか?
深川:
手術が必要だったりする小児科チームの方々が、TimeTreeで病院内の予定を共有されていたのが、とても印象的でした。
急に手術が必要なときに、どの病室だったら受け入れ可能ですとか、今から集まれるかとか、手術のスケジュールを組むのに使われていて。
そのユーザーさんからは「TimeTreeがあるおかげで、救われた命がたくさんあります」とも言ってもらえて、すごく嬉しかったですね。
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【取材協力】
TimeTree:https://timetreeapp.com/intl/ja/
株式会社TimeTree:https://timetreeapp.com/intl/ja/corporate
CEOの深川さん:@preface
広報の渡部さん:@ShinyaWatanabe_
【告知】TimeTreeさんでは採用も募集中。各種ポジションでメンバーを探しているそうです。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
※ 以降は、マニアックな事例を7つほどnote 購読者向けにまとめています。ユーザーが「どこに価値を感じているか」がわかる質問、メモ作成数を10倍に伸ばした施策、チェックしているKPI、などご興味あればご覧ください。
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