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年間売上は26億円「通期黒字化」まで到達した駐車場シェアリング「アキッパ」が語るプロダクト成長の裏側。エリア内の密度を高めたら成長した話、3つの成功施策。

アキッパさんを取材しました。

akippa株式会社 代表取締役社長 CEO 金谷 元気さん、執行役員 CPO 井上 直登さん、プロダクトマネージャー 熊谷 佳樹さん

⸺「アキッパ」について教えてください。

金谷:
2014年にサービスを開始した「駐車場のシェアリングサービス」です。全国の約4.5万件以上の駐車場を時間単位で予約して利用できます。

会員数としては累計410万人。2023年12月期の売上高は約26億円、純利益は8,597万円となっていて、創業以来「初の通期黒字化」を達成できました。

利用できる駐車場は多様で、月極駐車場の空いている区画や、商業施設や個人宅の空きスペースなどが登録されています。

とくに伸びているのは「通勤・通学」ニーズで、コロナ禍前と比較すると、「通勤・通学」を目的とした利用の売上は約3倍に伸びていますね。

⸺「アキッパ」のアイディアはどのように生まれたのでしょうか。

金谷:
一番最初は「200個の困りごと」を社内みんなで書き出して、その中で市場や課題が明確にあったアイディアを選びました。

事業案と考えると、200個出すのは難しいですけど、普段の生活の中で「困っていること」だと考えると、誰でも意見を出すことができます。

社員の藤野が出した困りごとは「駐車場は現地で満車だと知るから困る」というものでした。そこから駐車場のシェアリングになったんですね。

僕自身も「ユーザーとして使いたい」と思いましたし、駐車場の数の勝負にもなると思ったので、営業力という強みも活かせそうだと感じました。

模造紙に「200個の困りごと」を書いた。

⸺アキッパを公開するまでには「どんな準備」を進めましたか?

金谷:
はじめはアキッパの開発と並行しながら、リリースの半年前から「掲載する駐車場」を集めていきました。

最初はホントに地道で、自転車で大阪と東京を走り回って、月極駐車場の看板を見つけては電話をかけて「掲載しませんか?」と交渉していましたね。

駐車場のオーナーは地主さんが多いので、看板の近くに自宅があるんです。なので、電話してその場でアポを取ってお伺いしました。

サイトのイメージを載せた紙をお見せして、「1日単位で使いたい人をネットから連れてきます。初期費用もかかりません。」と説得していましたね。

初期から「メディア型」に振っていて、書類にサインいただければ「あとは全部やります。写真も撮ります。」とこちらで全部対応しました。

ネットに馴染みの薄いオーナーさんも多かったので、予約が入ったらFAX(インターネットFAX)で情報を届けるようにもしました。こうして、サービス開始までに700箇所の駐車場を集めることができました。

⸺初期のユーザーはどのように集めていったのでしょうか。

金谷:
駐車場を使ってくれるユーザーさんは「広報」を頑張って、様々なメディアで取り上げていただいた結果として増えていきました。

2014年4月にアキッパを公開し、翌月には全国放送の情報番組で取り上げてもらえるなど、ありがたいことに多くのメディアで紹介いただきましたね。

初期から広報で意識したのは、企業側が「取り上げてほしいこと」よりも、番組のディレクターさんの気持ちになって、メディア目線で「どんな画なら撮りたいと思ってもらえるか?」を想像することでした。

例えば、街中にごく普通の個人宅があって、その駐車場にユーザーさんが車を停めて去っていく画が流れたら、「何これ!?」となりますよね。

また、テレビ番組は「新聞や雑誌」を見てリサーチしていると聞いたので、新聞に最初はプレスリリースを送っていましたね。そこから実際に、新聞に掲載していただけて、テレビの取材にもつながりました。

企画を送るときには「数社セットで提案すること」も意識しました。宣伝っぽくならないように、同じカテゴリのサービスも含めて提案したんです。

例えば、スペースマーケットさんも含めて「シェアリングサービス特集として紹介いただけませんか?」と提案します。実際に有名テレビ番組なども含めて5回くらいはセットでご紹介いただけました。

メディアの方は忙しいため、面倒なことは率先してやるようにしました。取材対象になりそうな方に出演交渉をしたり、取材の場所を準備したり。

また封筒を開けなくても「中身」がわかるように、透明の袋に入れてリリースを送付したのも、目を通してもらいやすかったのか反応が良かったです。

成果としては、広報活動によってメディア露出が増えたことで、初月の売上は2万円でしたが4ヶ月後には約100万円まで売上が伸びました。

⸺エリアの開拓を「どのように進めたか?」をぜひ教えてください。

金谷:
初期の駐車場の開拓については「球場やスタジアムの周辺」は、駐車場が足りない感覚があったので、そこを主に開拓していました。

ただ、2016年の資金調達後に「スタジアムの周りだけでは限界が来るから、1つの都市単位で成立するかを検証しよう。」という議論が出てきて。

それで、大阪エリアで「大阪の環状線内」を集中開拓することにしました。エリアの中を「250〜500メートル四方」で区切って、その中に1つは駐車場があるという状態を目指しました。

結果的には、エリア内の駐車場を開拓していくと、これまで稼働していなかった駐車場の稼働率が上がっていき、売上も伸びていって大阪エリアで黒字化することができたんですよ。

このときデータでわかったのが、エリア内の「駐車場の密度」を一定以上に高めると「1台あたりの売上が上がる」という現象でした。

そこから、自信がついて東京や福岡や名古屋でも同様に展開しました。同じように「500メートル四方に1つ」のような密度を意識しました。

アキッパの先行指標は「駐車場の数」でした。駐車場の数が伸びていけば、売上も遅行指標として伸びてくるはずだろうと。

投資家の方にも「先行指標としての駐車場の数」が評価されて、初期に投資をしていただくことができましたね。

⸺その後はどのように成長していったのでしょうか。

金谷:
エリアを拡大していき、2018年に会員数が累計100万人を突破、2019年には月間売上が1.4億円を突破して、黒字化が目前に迫っていました。

しかし、コロナ禍になりイベントが減ったことで駐車数が減ってしまい、前年同月比で売上が40%減り、月に数千万円の赤字が出てしまいました。

ただ、データを見ると唯一「通勤とビジネス需要」が伸びていたんですね。勤務場所の近くまで車でいって駐める人が増えていたわけです。

それで、方向転換して都心のオフィス街や工業地帯の駐車場を開拓すると、2020年秋には前年同期比で「コロナ前の売上」を超えることができました。

通勤需要は一時的かと思いきやずっと伸びています。その後、イベント需要も回復して通勤との2本柱になり、2023年12月期に黒字化に到達しました。

他には、代理店による開拓、スポーツクラブとの提携、イベント興行主との公式駐車場の連携なども、アキッパの成長に貢献してくれました。

井上:
この「利用目的」については、もともとは軽い気持ちで事後アンケート的に取得してみたところ、分析の解像度がめちゃめちゃ上がったんですよね。

やっぱり「どのエリアで、どんなニーズがあるか?」って事業的な価値がすごくあるなと。駐車場をどこに増やせば良いかの参考にもなるので、回り回ってドライバーさんの満足度にもつながります。

それで、2018年頃から予約時に「必須」で選択していただくように変更したのですが、それがコロナ禍のニーズ分析にもつながりましたね。

成功施策①:LPのデザインを「スマホデザインファースト」にした。

熊谷:
アキッパでは、フェスや花火大会と連携した「公式駐車場」の運営をお任せいただくケースが最近かなり増えています。

駐車場は「完全予約制」にできるため、興行主様としても渋滞が起こることを避けられますし、参加者の方も朝から駐車場を探す必要がなくなります。

ただ課題としては、イベントごとに「特設LP」を作るのですが、LPの制作にかなりの工数がかかってしまっていました。

そこで、スマホのLPデザインをベースにして、PCはそれを流用するようにした結果、デザインとコーディングの工数を約40%削減できました。デザインの品質も担保できていると感じています。

これによって、限られたリソースで多くのLPを作れるようになりました。

LPのアクセス比率は、約70%が「スマホから」だった。

成功施策②: 「紙の駐車券で渋滞を緩和」

熊谷:
現場を見てオペレーションを改善できた事例です。当初は公式イベントの駐車場では、入口で「スマホの画面の予約情報」を見せて入場する形を想定していました。

ところが、現地に見に行くと「スマホで画面を探している」うちに、たちまち渋滞が起きてしまうなと。

そこで解決策としては、駐車券の機能を開発し、それを事前に印刷していただいて、車のダッシュボードに「駐車券」を置いて、ガラス越しで確認するようにしたところ、渋滞を起こさずにすみました。興行主の方にも喜んでもらえました。

これはオペレーション的にもハッピーでした。現地で誘導するのは警備員の方やアルバイトの方なので、なるべくわかりやすい方が良かったんです。

ドライバーの方の「印刷された駐車券」の持参率も90%を超えています。現場を見にいったからこそ、課題を解決することができました。

ただ「印刷された駐車券」の持参が最終ゴールだとは思っていなくて、興行主様とオペレーションに寄り添いながら、駐車場体験をより便利になめらかにしていきたいと考えています。

成功施策③:オーナー向けアプリを開発したら「アクティブ率が改善」

井上:
2023年に、駐車場のオーナー様が「予約状況や収益の管理」などができる、オーナー向けアプリ(β版)を開発したのも良かったです。

成果としては、駐車場オーナーさんの管理画面のアクティブ率も、Webからのアクセスと比べるとアプリは8倍くらい高くなっています。

Webだと予約があったときに「たまに見に行くもの」だったのが、アプリになったことで「頻繁に見るもの」に近づいたのかなと。

ドライバー様からスタンプで「ありがとう」というメッセージが届いたり、人と人とのつながりを感じられる設計も意識しています。

⸺アキッパで「大切にしている指標」について教えてください。

井上:
もちろん、売上・予約数・駐車場数も追うのですが、アキッパっぽい指標という意味では「ルーキー率」を大切にしています。

これは、新規のドライバー側のユーザーさんが「翌月にどれくらい使ってくれるのか」という、初回の成功体験を示す指標です。ここが伸びてくるとLTVが高まって売上インパクトもかなり大きくなります。

なぜこれが大事かというと「駐車場を予約して使う」って、カルチャー的にまだ根付いていないと思うんです。当たり前ではないですよね。

ホットペッパービューティーさんは「美容室を予約して行く」というカルチャーを広めています。食べログさんは「飲食店をネット予約する」カルチャーを広めています。アキッパもそうなりたいと考えています。

なので、アキッパで「初めて予約して駐車場を使ってみる」という体験が根付きそうかを見る上でも、ルーキー率を大事にしています。

熊谷:
他にアキッパの特徴としては、ドライバー向けとオーナー向けのプロダクトでアプローチが大きく異なっているところです。

例えば、ドライバー向けについては、ユーザーニーズも属性も多様なので、利用目的別にインタビューをして課題を探求しています。

利用目的は「非日常」と「日常」の2つに分けていて、そこからさらに細かく「試合観戦、お買い物、通勤通学」などに分類しています。

日常ユーザーは、決まったエリアや駐車場を何度も予約して使います。通勤通学で職場や学校の近くを何度も利用するというイメージです。

非日常ユーザーは、都度「目的地」が変わります。ライブやスポーツ観戦に行くときに、会場周辺の駐車場を利用するというイメージです。

日常ユーザーは低めの単価でたくさん利用する傾向があり、非日常ユーザーは回数は少なくても単価が高い傾向があります。

⸺「外部との提携」などで成功したものがあれば教えてください。

金谷:
自動車保険の保険代理店さんに、アキッパの駐車場を代理店として提案してもらう取り組みは、うまくいったなと感じています。

自動車保険が解約されるときって、免許を返納して車を手放す方も多いため「個人宅の駐車場が空いてしまう瞬間」でもあるんですよ。

その空いた駐車場に対して、アキッパを提案してもらうと「オーナーの収入にもなる」ということで、タイミング的にも効果的でした。

この取り組みは、SOMPOホールディングスさんと資本業務提携をして、SOMPOさんとDeNAさんの合弁会社に総代理店になっていただき、提携している保険代理店さんにアキッパを提案していただいています。

また、プロスポーツクラブと提携して、クラブにアキッパの駐車場の代理店になっていただく取り組みもうまくいっています。

スタッフの方が、スタジアム周辺の駐車場を開拓して、試合の当日に駐車できる場所が増えることで、試合のチケットも売れやすくなるんですよ。

駐車場が使われたらクラブの収入にもなりますし、ファンの方々もクラブに還元されるということで、駐車場を積極的に使ってくださっています。

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【取材協力】
akippa株式会社:https://akippa.co.jp/  
アキッパ:https://www.akippa.com/   
akippa株式会社 金谷 元気さん、井上 直登さん、熊谷 佳樹さん

【告知】akippaさんでは各職種で採用中。PdMやUI/UXデザイナーなど探しているとのこと。ご興味あれば下記サイトからご覧ください。

※ 以降は、+αの事例を6つほど『ここだけの話』として、note購読者向けにまとめています。駐車場のレビュー投稿数を伸ばした工夫、サブスク収益や指標にインパクトした改善、代理店との取り組みを成功させるコツ、などご興味あればご覧ください。

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