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200万人が登録したAIチャットサービス「AIチャットくん」のpiconに聞く、プロダクトの作り方と広め方。「使い始める理由」と「使い続ける理由」の両輪が大事なワケ。

LINEでChatGPTがつかえる「AIチャットくん」を取材しました。

株式会社picon 代表取締役CEO 山口 翔誠さん(正社員3人 業務委託含めると約15人の会社)

picon社のこれまでについて教えてください。

山口:
2016年に創業して、7年間で10以上のプロダクトをつくってきました。

一瞬話題になるものはつくれたのですが、僕らは日本中で使われるものを目指していたので、納得のいく結果はずっと出せていませんでした。

例えば、YouTubeを見ながら通話できる「Talkroom」は、一時期は話題になったのですけど、継続して使われなくてクローズしてしまったり。

eスポーツの賞金付き大会を検索できる「プライザ」は、25万ダウンロードはされているものの、まだ満足できる水準ではなかったり。

使い続けてもらえないと、最終的にはビジネスにはならないんですよ。面白そうだから1回使って終わり。これではやっぱり成立しなくて。

こうして2023年になって。今までは投資いただいた資金で運営していたのですが、さすがに「そろそろ収益を稼がないといけないね」と。

それで「2023年の半年間で稼げなければ、もう受託開発の会社に変えよう」と決めて。2023年の3月にリリースしたのが「AIチャットくん」でした。

結果としては「AIチャットくん」は、3ヶ月で登録者数としては200万人に、総メッセージ数は6,000万件に到達することができました。

プロダクトで挑戦できる「最後の半年間」だったのですが、AIチャットくんが成長したおかげで、もう少しこの挑戦を続けられそうです。

スマホアプリ版も公開されている。

LINEボットの「AIチャットくん」はどのように生まれたのでしょうか?

山口:
はじまりは3月2日に「ChatGPT」のAPIが使えるようになったことでした。今までは「GPT-3」というAPIしか使えなかったんですね。

このアップデートにより、精度の高い回答が早く返ってくるようになって、APIの使用量もすこし安くなる、そういう変化が起こったんです。

それを見て、このクオリティならみんなが感動するものがつくれるはず、LINEで出せば多くの人に使われるかもしれないと。

ただ僕らはLINEボットを開発したことがありませんでした。それでChatGPTに作り方を聞いて、助けてもらいながら半日で開発しました。

公開するとツイッターで話題になり、当初は「LINEで小さく検証しよう」という感覚でしたが、3日で20万登録と想像以上の速度で成長しました。

出してみて思うのは、ChatGPTを「知っているけど使ったことがない人」が意外と多かったこと。公式だと英語のサイトで登録する必要があります。

すると「なんか怖いな、難しそうだな」と離脱してしまう人も多かったと思うので、LINEだけで使える手軽さがよかったのかなと。

反響があって嬉しい一方、APIの使用料で会社が潰れるかもとか、サーバーが落ちるんじゃないかとか、課題もたくさん出てきました。

APIの使用量も放置すれば数千万円かかります。そこで、すぐに月額プランをつくったり、サーバーコストを削減する打ち手を進めましたね。

そうした課題を解決しつつも、初期はツイッターからはじまって、テレビや新聞などのメディアや、YouTuberさんに取り上げられて広がりました。

AIチャットボットはたくさんの競合が出てきたが、なぜ「AIチャットくん」は急成長できたのか?

山口:
類似のプロダクトはたくさんあって、10個以上は出ていると思うのですが、最初に「認知をどう取るか」という勝負だったと考えています。

なので、プレスリリースやマーケティングを頑張ったのはよかったですね。本当にこればかりは「認知ゲー」だったなと考えていて。

なぜなら、僕らも競合も「差別化した機能」をつくりにくいんですよ。すると最初に「これだ」というものが出ると乗り換えも起こりづらくなる。

つまり、そのポジションでの「認知」を最初に取れるか。一番最初に信頼感のある形で認知を取り切れるのか。ここが一番大事でした。

認知を高める施策で最も成功したのは、サービス名を「ChatGPT Turbo」→「AIチャットくん」と、わかりやすい名前に変更したことです。

SNSで話題になったときにも、「AIチャットくん」というわかりやすい名前がスクショに出ると、そこから登録者を増やすことができます。

名称のわかりやすさは、認知や口コミにもつながります。SNSで「AIチャットくんが」と言及してもらえる確率も上がります。人っぽい名前にしたことで「相談しやすさ」も高まります。

ChatGPT Turboだと、検索しづらいし、覚えづらいので、「これ何なの?」と思われて終わることも多かったと思いますね。

初期に「判断に迷ったこと」はありますか?

山口:
判断に迷ったのは「ニッチに寄せるべきか」でした。心理カウンセラーや面接官みたいな「特化型」にしても成立するはずだと考えたんですね。

でも、プロダクトって特化すればするほど、一部のユーザーにはグッと深く刺さりやすくなる半面、マスには刺さりづらくなるという、トレードオフのようなものがあると思っていて。

結果としては、ニッチに寄せずに広くつくる選択をしたことが、3ヶ月という期間で200万登録まで成長できた、ひとつの要因になったと思います。

AIチャットくんで「印象的だったユースケース」があれば教えてください。

山口:
ChatGPTって「メールの文章作成」「仕事の効率化」みたいな、ビジネスのツールとして使われることが多いじゃないですか。

でも、AIチャットくんのユーザーをSNSで観察すると、「AIに友達感覚で人生相談する」という感じで、使っている人がとても多いんですよ。

例えば、「会社の上司がウザいんだけど。」とか「結婚してる人を好きになっちゃった。どうしよう」とか、人間の友達には「相談しづらいこと」を相談して、感情に寄り添ってくれるロボットのように感じてくれている。

AIなら誰かにバラしませんし、人間関係にも気遣わなくていい。24時間いつでも答えてくれる。感情的にもならない。だからなんでも相談できる。

ユーザーは「話を聞いてほしい」「肯定してほしい」みたいな、心が満たされることが目的になるような、使い方も求めていたんです。

話題になったツイートにも「絵を描きます」とAIに話して、「素敵ですね!完成したら見せてください!」と応援してもらう使い方があったり。

あとは「確定申告を頑張りました」「お疲れ様です!」とか、「今から打ち合わせです。」「頑張ってください!」みたいな使い方に、「それ私もやりたい!」と共感の嵐が起きていました。

0からプロダクトをつくる時に「ここは必ず抑える」と意識しているポイントはありますか?

山口:
これは「なぜ使い始めるのか」「なぜ使い続けるのか」という、2つの質問にちゃんと答えられること、それを最小工数で検証することだと思います。

例えば、Talkroomは「使い始める理由」は明確ですが、「使い続ける理由」がないんですね。すると、一発屋芸人みたいなアプリになりやすい。

逆に、FRYDAYSには「使い続ける理由」があるけど、「使い始める理由」が弱いんですよ。すると、良いプロダクトだけど伸びないねってことになる。

FRYDAYSは、カップルでの利用が多いのですが、それだと1人を招待して終わり。もっと友達と使われていたら、一気に5人とかに広がりやすい。

なので、新しいプロダクトをつくるときは、この2つが揃って「両輪」で走れているのか、というのをめちゃくちゃ意識していますね。

AIチャットくんでは、「使い始める理由」は強いのですが、そこから「使い続ける理由」をどうつくるのかは、今後の課題だなと感じています。

ユーザーインタビューを起点に、企画することも多いそうですが、どう進めることが多いですか?

山口:
アプリをつくる前に、エクストリームユーザー(極端な行動をしている人)をSNSで見つけて、ヒアリングをさせていただくことが多いですね。

言い換えると、変わった代替手段を使っている人の生態系を調べて、「その行動を楽にできるように」という発想でプロダクトをつくります。

例えば、賞金付きのゲーム大会を楽に検索できる「プライザ」は、そうしたユーザーへのヒアリングなどをもとに開発しました。

実際に、賞金付きのゲーム大会に、毎日出ている人にお話を聞くと、4人のチームで「共有カレンダー」にぎっしり予定を入れていたんですよ。

さらに、大会を検索して登録するのも手間がかかるので、予定を管理する「専用のマネージャー」まで入れていたんですよね。

そういう、エクストリームな行動をする人を調べて、その人を楽にするにはどんなプロダクトをつくればいいのかと考えます。

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【取材協力】
株式会社picon:https://picon-inc.com/
AIチャットくん:https://picon-inc.com/ai-chat
picon 山口さん:@shosemaru

【告知】piconさんでは各職種で積極採用中。特に「AIチャットくん」の成長フェーズを担うCPOポジション候補や、技術を活用しながら開発面からリードするCTOやエンジニアの方を探しているそうです。 多くの方に使われるサービスづくりにご興味ある方は、下記のサイトよりどうぞ。

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