自分で操作する「一手間」を入れたら継続率が改善。アプリ累計750万DLの「LIFULL HOME'S」に聞く、Webからアプリへの「検索条件」を引き継ぐ体験デザインの事例。
LIFULL HOME'Sさんを取材しました。
⸺「LIFULL HOME'S」について教えてください。
安藤:
日本最大級の「不動産・住宅情報」サービスです。アプリ版のダウンロード数は累計で750万ダウンロードに到達しています。
LIFULL HOME'Sでは物件情報の掲載だけでなく、Webサイトやアプリを通じてユーザーのみなさんが、不動産会社へ「お問合わせ」することをビジネスモデルの中心においているため、重要指標は主に「お問合せした数(反響数)」を追っています。
アプリの成長は主に、Webコンテンツからの自然流入で増えています。とくにここ2年ぐらいは「Web to App」に力を入れているんです。
実際に、Web経由でのアプリの流入数は伸びていて、この約1年でiOSではMAUや問合わせ数(反響数)が30%以上成長しています。
アプリは「よし使おう」と思ってダウンロードされる方も多いため、Web版よりも「継続率・物件閲覧率・利用回数」などが大きくなる傾向も見られます。
施策①:アプリの「検索結果の画面」にWebの検索条件を引き継ぐ。
鈴木:
LIFULL HOME'Sでは、Webで物件を検索したユーザーが、アプリをダウンロードしたときの「検索条件の引き継ぎ方」を検証したことがあります。
当初の仮説としては、Web版で「検索していた条件」を引き継いだほうが、スムーズな体験になるのではないかと考えたんです。
そこで、Webからアプリをインストールした場合には、起動時に物件の条件を引き継いだ形で「検索結果」を表示するデザインを検証しました。
結果としては、検索結果の表示数は増えたものの「物件の閲覧数」「問合わせ数」「アプリの継続率」は逆に下がってしまったんです。
理由としては、初日に「アプリを操作する機会」を奪ってしまうと、その後のユーザー行動にもマイナスの影響が出てしまうのではないかなと。
この結果を受けて、また次の検証を進めていきました。
施策②:アプリの「条件設定の画面」にWebの検索条件を引き継ぐ。
鈴木:
次に行ったのは、検索結果に直接ランディングするのではなく、ひとつ手前の「条件設定の画面」に検索条件を引き継ぐという形です。
すると、今度は「検索結果の表示数」「物件閲覧数」「問合せ数」などの指標が上昇するという結果になりました。(継続率は横ばい)
ここからわかってきたのは、初日に「アプリをきちんと体験してもらう」というステップを入れることが大事だったということです。
つまり、単純に「スムーズであるほど良い」というわけではなく、希望条件に合ったものを「自分で操作する体験」を挟むほうが良かった。
何も操作せず検索結果が見える体験と、条件を設定して一手間かけて探した体験だと、後者のほうが「やった分ちゃんと見よう」ともなりやすいのだとわかりました。
安藤:
初日にどのレバーを動かしたら、自分にとって「良いこと」をしてくれるのかを学習してもらうことが大事だった、とも言えるのかもしれません。
このレバーを動かしたら「自分の思うように動いたぞ。やった!」みたいな学習を最初にしてもらって、信頼関係を築くようなイメージですね。
⸺プロダクトの運営において「これはやって良かった」という取り組みがあれば教えてください。
鈴木:
わたしたちは、アプリのリリース前にエンジニア・デザイナー・企画の3職種が集まって探索的なテストを実施しています。
このテストの内容を、過去のユーザーインタビューの情報をもとにした、ドッグフーディングに変更しました。これはそのユーザーの背景や目的に沿ってアプリを使ってみるという検証方法です。
例えば、春に上京してきた女子大生が、東京の賃貸をこんな条件で探したいと思いながら探している、みたいにその人になりきって探してみます。
これまで「東京」しか検索したことのない人が、改めて「自分の土地勘のないエリア」で検索してみるだけでも、結構発見があるんです。
これを続けることで「他者の視点」が自分の中に生まれて、これまで見えていなかった課題や不具合を発見できる機会が明確に増えました。
社員の数だけ「見える課題」が増えたことで、それに対して「どんな機能や解決策があり得るだろう?」と議論をすることも増えましたね。
例えば「引っ越したことがない」「家を買ったことがない」という社員も、これを続けるとユーザーの理解を深めることにもつながります。
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【取材協力】
株式会社LIFULL:https://lifull.com/
LIFULL HOME'S:https://www.homes.co.jp/
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