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世界で四半期の売上120億円「Duolingo」の日本展開の裏側。ユーザー理解を起点にテレビCMを成功させた方法、テスト受講率を2倍に改善したABテスト。

語学アプリの「Duolingo」さんを取材しました。

Duolingo 日本カントリーマネージャー 水谷 翔さん

「Duolingo」について教えてください。

水谷:
楽しく無料で効果的に外国語が学べる「語学アプリ」です。世界でダウンロード数は5億以上、MAUは5,650万人に到達しています。

日本のユーザーの特徴は「真面目と謙虚」です。連続利用記録の平均日数では世界1位、学習時間は世界2位(2021年)になっています。

日本人の「謙虚さ」があらわれた点としては、アプリ内で「初級者か・中級者か・上級者か」と聞かれたときに、基礎がわかっていても「初級者です」と答えるユーザーが多いことです。

他国では「中級者」と答える人が多いです。社内の人に話したときにも「基礎がわかっていても初級者という感覚なんだね」と驚かれました。

日本版は社員は水谷さん1名、ほかは業務委託メンバーやPRの専門会社と連携しながら運営。

2020年に日本展開を開始したときに「何からはじめていったのか」をぜひ教えてください。

水谷:
日本展開を本格スタートしたのが2020年11月で、そこからの約2年で日本のアクティブユーザー(MAU)は、ざっくり3倍に成長しています。

はじめは、アンケート、ユーザーインタビュー、認知度調査といったリサーチを、1ヶ月程かけてじっくり実施していきましたね。

言い換えるとリサーチとは、誰がターゲットで、そのターゲットにどんなベネフィット(価値)が刺さるか、この2つを特定していくことです。

認知度調査をすると、競合サービスと比較して「認知度」を上げていけば、ブランドの浸透率が上がりそうだとわかりました

その結果をもとに、年末年始のキャンペーンや、インフルエンサー施策などを進めると、2021年1月からアクティブユーザーが伸びていきました。

たくさんの施策の中で「大きく成功した施策」は何で、どう実施していったのでしょうか?

水谷:
とくにユーザー数が大きく成長したのは、2021年5月に実施した「ゴロゴロしながら言語が学べる」という、テレビCMがキッカケでした。

このCMがどう生まれたかというと、Duolingoのある20代男性ユーザーに、インタビューをしたところからです。

そのユーザーの方は「2年間毎日、お風呂でDuolingoを続けています。」とおっしゃっていて。お風呂でスマホをつかう人もいるんだなと。

その日は、そこで話が終わったんですよね。お風呂でスマホをつかうことに気を取られて、話をあまり掘り下げなかったんです。

でも後日思い返しているとき、そこが引っかかって、電話を掛け直して聞いてみたんですよ。「すみません、なぜお風呂でつかうんですか?」って。

すると「インスタがDuolingoに置き換わった感じですかね。」と言われて、それを聞いてピンときたんですよね。

これってポジションとしては、勉強の手段というよりも「リラックスタイムのエンタメ」に近いんだなと。つまり、ユーザーが価値を感じているのは、「ボーッとしながら外国語が学べる」というところなんだと。

インスタやTikTokって、リラックスしてボーッと見るじゃないですか。その延長線上でつかわれていることに、はじめて腹落ちしたんですね。

そこから生まれたのが「ゴロゴロしながら学べる」というテレビCMで、このクリエイティブを起点に、ユーザー数を成長させることができました。

 Duolingo社内でグローバルでみても、四半期で「最高クラスに成果の出た施策」になった。

ユーザーインタビュー起点の改善も多いそうですが、なにか「意識しているポイント」はありますか?

水谷:
ユーザーインタビューをするにも、時間やエネルギーが必要なので、意識しないと遠ざかってしまうものです。なので、まずは意識的にやること。

僕の場合、戦略や施策を考えるとき、なんか考えがまとまらない瞬間って、結局のところ「ユーザー理解が乏しいとき」だなと思うんですね。

そんなときに、ユーザーの声を聞いてみると、そこにヒントが全て詰まってることが多いので、詰まったらそこに立ち返るようにしています。

初期に失敗したなと思うのは、インタビューで準備していた質問を「全部埋めよう」とすると、なかなか成果につながらなかったことです。

というのも、表面的に「そうなんですね」と返して、そのまま「じゃあ次の質問」と進めてしまうと、発見がないまま終わりやすいためです。

質問を消化しきれなくても良いので、質問に対して「深ぼっていくこと」を意識的にやると、発見やヒントを得られるようになりました。

インタビューで「この質問は毎回のように聞いている」みたいな良い質問があれば知りたいです。

水谷:
一番キーになる質問は「Duolingoの何が楽しいですか?」なんですよ。その回答の中にユーザーが感じる「本質的な価値」が含まれています。

例えば「ゲームみたいで楽しい」と返ってきたら、さらに「ゲームみたいだと何が良いんですか?」と深ぼっていくと、発見を得られやすい。

インタビューの一番の目的は、ユーザーが「ここがいいよね」という価値を感じるポイント(本質的なベネフィット)を探ることです。

そして、そのユーザーが感じるベネフィットを、広告クリエイティブなどのメッセージに置き換えていくというのが、自分のやり方ですね。

Duolingoさんには「ABテスト」をくり返しながら改善する文化があるそうですが、日本での「ABテスト事例」があれば教えてください。

水谷:
はじめに語学力を測るテストを、「テスト」から「レベル診断」のような柔らかい表現に変えたところ、それだけで受講率が2倍になりました。

もともとは、日本のユーザーは他国と比較しても、アプリのはじめに言語力を測定するテストの受講率が低い、という課題があって。

そこで、ユーザーに話を聞いてみると、実は「テスト」という言葉に「怖い・緊張する」という感情を持つ人が多かったんですね。

それで、テストの表現を「ABテスト」で検証したところ、指標をうまく改善することができました。

Duolingoでは、こうしたABテストを四半期で500回くらい繰り返しながら、世界中のユーザーにつかってもらえるアプリを開発しています。

社風としても「何を学んだのか?」を大事にしているので、施策としても「やったらやりっぱなし」というのは許されないんです。

例えば、僕が「この施策はダメだった」と報告すると「そこから何を学んだの?」とすごく聞かれます。本当にここは徹底していますね。

YouTubeでの「インフルエンサーマーケティング」は、どんなところがポイントになりましたか?

水谷:
インフルエンサーマーケティングは、絶対条件として「ファンのエンゲージメントが高くないとワークしない」というのはあって。

つまり、良い紹介の仕方をしてくれても、熱量を持った視聴者がいないと「じゃあやってみよう」とは、なかなかならないんですね。

例えば、YouTubeのコメント数は、すぐにわかるエンゲージメントの強さの証拠で、僕はこれを「動くファンがいるか」と表現しています。

そこがまず絶対条件で、あとは「言語との結びつき」があるかも重要です。旅行によく行くとか、勉強方法を発信しているとか。

やってみて気づいたのは、紹介してもらうよりも、体験してもらって「素のリアクション」を視聴者に見てもらう方が反応が良いことでした。

例えば、アプリを触って「こうなんだ!ここは便利だね!」と体験してもらうと、視聴者も「やってみようか」と動く傾向があったんです。

さらに案内役の人を入れて、「ここは実はこうだよ」「ここ押すとゆっくり発音してくれるよ」などと、ナビゲートするのも効果的でした。

ユーザー行動を分析してわかった「おもしろい発見」などがあれば教えてください。

水谷:
2021年にテレビCMを実施したあとに、40~50代のユーザーの割合が増えたのですが、実はこの層はサブスクに転換しやすい傾向があります。

若年層より所得が大きいのもありますが、ひとつ大きい要素としては、家族が利用のモチベーションにつながっていることです。

例えば、子どもに英語を学んでもらいたいとして、自分が学んでいなければ説得力に欠けますよね。なので、そこが学習モチベーションになります。

子どもに「英語を学びなさい」と言ったら「お母さん喋れないじゃん」と返されたという話は、ユーザーインタビューでもよくお聞きしますね。

【取材協力】
Duolingo:https://ja.duolingo.com/
Duolingo 水谷さん(@YeahThatSho1

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