この1年で売上3倍に。お家で試着ができる試着購入ECサービスの「DROBE」が語る、スタイリストのAI化で「服の選定時間」を50%以下に改善した話、広告でニーズ検証に成功した方法
5万人が登録する、服の試着購入サービス「DROBE」さんを取材しました。
※ 株式会社DROBE COO 長井 大輔さん
「DROBE」について教えてください。
DROBEは、その人のために選んだ商品を、自宅で試着いただいて気に入ったものだけ購入できる、という「試着購入サービス」です。
いらないものは無料で返送できますし、自宅にあるアイテムと合わせながら着られるので、自宅が試着室になるイメージで使っていただけます。
現在は160ブランドと提携、会員数でいうと5万人ほど(昨年同期比 2倍)、売上は昨年同期比で3倍ほどに、伸びているという状況です。
AIとスタイリストを組み合わせて、1回あたり5点の商品を送るのですが、1点以上はご購入いただける確率は、80%ほどになっています。
商品は「どのような仕組み」で調達しているんですか?
二つありまして、ブランドさんからお借りする「消化仕入」というものと、あとはDROBE側で買い取って在庫を持つものがあります。
自宅が試着室になる感じで、新品で届けて「商品のタグ」はつけたまま試着いただいて、不要なモノは返品いただいています。
最初はどのような感じでスタートしたのでしょう。
最初は、服のスタイリングのサービスには、ニーズがあるか検証するため、広告にページを出してテストをしてみました。
具体的には「対面・チャット・ビデオ通話」3パターンのページをつくり、Facebookやインスタの広告に出してみたんです。
すると「対面とチャット」には、3時間で約100件の予約が入ったのですが、「ビデオ通話」には予約が1件も入りませんでした。
最初は「あれバグかな?」と思ったのですが、そうではありませんでした。対面とチャットだけに集中して予約が入ったんです。
1予約あたりのコストも、1,000円以下(数百円)という感じだったので、これはニーズがあるかもしれないと感じましたね。
※ 当時2018年で、まだビデオ通話も当たり前ではなく、プライベート空間でビデオ通話することにも抵抗があったのではないか、とのこと。
そこからはどのように検証を進めていきましたか?
そこからは、テスト的に100〜200人に、サービスを提供しました。最初は、僕たちで洋服を調達して、直接ユーザーさんに届けたりしましたね。
サービスを公開してから「ここは転換点だった」と思うところがあれば教えてください。
最初は、チャットでユーザーと会話をしながら、スタイリストが商品を選んでいたのですが、それを「AIが商品を選ぶ仕組み」に切り替えたこと。
過去のデータをAIに学習させて、商品を選ぶようにしたら、購入率や単価がほぼ同等というパフォーマンスが出たんですね。
最初は、1顧客あたり160分かかっていた服の選定時間も、AI導入によって、60分まで短縮することができました(60%減 ※現在は更に短縮)
これは、公開から半年後くらいの、2020年の2月のことでしたね。
ある意味「スタイリストのAI化」に成功したということです。このときからAIとスタイリストの分業を進めるようになりました。
重要だったのは、スタイリストがどの情報を見て何をお送りしたか、結果的にユーザーさんが何を買われたか、この2つのデータでした。
ほかに「うまくいった施策」があれば教えてください。
ユーザーさんに発送する前に、WEBで事前に商品を確認できるようにして、「いる・いらない」を回答できるようにしたこと。
ただ、僕はこれは最初は「反対」でした。なにが届くかわからない楽しみ、セレンディピティが減ってしまうと思ったから。
でも、実際にやってみると、数値がよくなりました。安心感をうまく醸成しつつも、セレンディピティは残せる、という良い施策になった。
AIで好みをドンズバに当てると「もう持ってる」となります。そうなるとご満足いただけませんが、事前に確認できればこれも防げます。
なぜ「セレンディピティ」をそこまで大事にしようと思っていたのでしょうか?
お客様から「事前に商品を見れないの?」とも言われてたのですが、自分で選んでしまうと「コンセプトが壊れる」と思っていました。
テスト時に、目の前で箱を開けていただいたときの「お客様が喜んだ顔」が鮮明に残っていて、それを過大評価してしまったのだと思います。
ユーザーの顔って大事だけど、顔を見すぎてしまうと「自分の感覚」に影響してしまうので、感覚を信じすぎないことが大事なのだなと。
DROBEは「データで判断する文化」は強いのですが、それでも失敗してしまいましたね。ニーズとしては「お客様の意見」が正しかったです。
DROBEで「意外だったニーズ」はありますか?
ネットに慣れた人が「ECでも試着できたら」ということで使うと思ったら、逆に「ネットで服を買ったことない人」がユーザーに多かったこと。
ECではあまりうまく買えない人や、トレンドを見ても「自分に合った服がわからない」といった方に刺さっていました。
自宅だとパートナーに「似合う?」と意見も聞けます。店員の視線も気にせずに試着できる。店舗のような体験で買えるEC、という点がウケていた。
ユーザーさんと話すと、ECより「店舗との対比」で語る方が多いんですよ。つまり、ECとの差分より「店舗との差分」が価値になっていた。
DROBEの「おもしろいデータ」があれば教えてください。
時間や手間を削減したいユーザーよりも、年代に合わせた服が知りたいユーザーのほうが、購入率はかなり高くなっていますね。
都道府県別の、購入系のKPIには「ほぼ差がない」です。これだけECが普及してくると、東京と地方であまり変わらないのかもなと。
あとは、DROBEの購入者にアンケートをとった結果、ほぼDROBEで服を買うようになった人が、約30%いるということもわかりました。
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DROBE:https://drobe.jp/
DROBE 長井さん(@daisukenagai)
【告知】DROBEさんでは採用募集中とのこと。エンジニアやマーケターなど探しているそう。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
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