3年で検索流入が50倍に。MAU1,000万人に成長した「LIPS」が語る、Googleボットさんへの「おもてなし思想」と、アプリとWEBでは目的が違うため「最適なUI」が変わる話
700万ダウンロードのコスメアプリ「LIPS」さんにお話を伺いました。
※ 株式会社AppBrew 木全 佳梨さん、堀江 慧さん、阿部 栞さん
「LIPS」について教えてください。
木全:
コスメのクチコミアプリです。アプリは700万ダウンロード、全体のMAUは約1,000万人、クチコミ数は累計180万件を超えています。
LIPSでは性別年齢を問わず「なりたい自分」を追いかける人のために、心地よい体験をしてもらえる場所を提供しています。
ここ数年だとLIPSは「WEB版」が伸びているそうですね。
阿部:
WEB版は、地道なコンテンツの改善が、Googleアップデートで評価されて、自然検索からの流入が3年間で50倍に成長しました。
考え方としては、自分が「Googleボットさんの気持ち」になって、どうなったら評価したいかを考えるようにしていますね。
たとえば、Googleが提唱する「E-A-T」という概念があります。これは情報発信者がどれだけ信用できるのか、というものです。
※ E-A-Tとは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字をとったもの。
LIPSの場合は、ユーザー投稿サービス(CGM)なので、投稿者の信頼性がわかる「フォロワー数や累計いいね数」を置きます。
あと、商品ページにも「この商品はクチコミが多いですよ」と示すために、クチコミの投稿数も表示していますね。
実際に、そうした数値を置いたほうが、評価が上がる感覚もあります。
WEB版で「うまくいった改善」を教えてもらえますか?
阿部:
商品ページに「動画」を入れるようにしたら、WEBの滞在時間が15%くらい改善しました。これはLIPSのWEB史に残るくらい良い改善でした。
具体的には、その商品に動画クチコミがあって、一定のいいねを集めている場合に、投稿の先頭に表示されるようにしています。
無条件に動画を出してしまうと、クオリティをコントロールしにくいので、ユーザーに一定評価された動画のみ表示していますね。
ほかに「WEBで成功した施策」があれば教えてください。
阿部:
WEB版では、投稿の一覧画面で、2カラム(画像1枚)よりも、1カラム(画像3枚)で並べたほうが、ページを見てもらえました。
これはWEBのユーザーは「目的思考が強いため」だと考えています。
WEBユーザーって、経路としては「ほぼ検索エンジン」から流入していて、目的も「情報を効率的に探したい」という人が多い。
もしかしたら、ドラッグストアで「コスメの商品名」をスマホで検索して、時間がない中で迷っているかもしれませんよね。
だから、たくさんの情報からパッと効率よく探せる、1カラム(画像3枚)のデザインが好まれたのかなと。
なるほど、たしかに納得感があります。
阿部:
一方で、アプリの場合は、1カラムより2カラムのほうが、良かったんです。
アプリユーザーは、目的もなく「暇だからアプリを開く」という人も多く、そこまで効率を求めていないのだと思います。
だからこそ、サクサクと「色々な人の投稿」が見られる2カラムのほうが、ユーザーの目的には合っていたのかなと。
LIPSで「意外な結果」になった施策はありますか?
堀江:
ユーザーの声として「10代の投稿は参考にならない」という意見が20〜30代からかなり出ていたことがあって。
そこで、要望通りに年代で区切って、20〜30代に「10代の投稿」が出ないようにしたところ、逆に「閲覧する投稿数」が減ってしまったんです。
つまり、ユーザーの要望の通りにしたら、逆効果になってしまいました。
どうして「逆の結果」になってしまったんですか?
堀江:
恐らく、実は良い投稿の大部分も「10代の投稿だった」ということかなと。ごんぎつねの「ごんお前だったのか...」に近いかもしれません。
1回目の結果に疑問もあったので、2020年に追試テストもしたのですけど、そのときも継続率は改善せず、同じような結果になりましたね。
木全:
いい投稿をみたときには「10代の投稿って良い」と思わない、でも合わない投稿をみたときは「10代の投稿ってイマイチ」と残りやすいのかも。
アプリ版での「改善例」もぜひお聞きできますか?
堀江:
アプリのオンボーディングで、もともとは「年代や肌質」を聞いて、それをもとに投稿をパーソナライズしていたんですね。
それを、「好みの投稿」を2択で聞いてパーソナライズするようにしたら、継続率や閲覧投稿数を改善できました。DAUやMAUにも効いています。
つまり、粒度の荒い「年代や肌質」を参考にするよりも、好みのクチコミを直接聞いてしまったほうが精度が上がったんですね。
これは、マッチングアプリのデザインをヒントに実装しました。
堀江:
LIPSでは、オンボーディングの直後に「おすすめの投稿」が出てきますが、そこで興味のある投稿を見せられるかが、ひとつの勝負です。
そこで新規ユーザーの場合は「最初の24時間に読んだクチコミ数」を指標にしています。この指標は一定数までは継続率とも相関します。
結果的に、好みの投稿を使ったことで、最初の24時間の閲覧投稿数が10%、7日後の継続率が5%アップしました。
今は「最初のパーソナライズ」に使ってるのは、この2択の情報だけです。ほかの質問をする必要もなくなりましたね。
プロモーションはどのように実施していますか?
木全:
許可をもらったユーザーの「人気の投稿」をもとに広告の素材をつくって、GoogleやFacebookの広告などに出稿しています。
最近は「大衆に受けるもの」よりも、黒髪地雷メイクのような「この人には刺さる」みたいな広告のほうが、明らかに効果が高いんですよね。
逆に、商品がきれいに写っていて、使用感も説明されている、「これは広告に出すと良さそう」という投稿って、大体うまくいかないです。
最近感じる「コスメのトレンド」があれば教えてください。
木全:
今の化粧品ってどんどん進化していて、そこまで大失敗しないので、クオリティよりは、「エモの部分」が強くなっていると感じます。
エモの部分というのは、誰々ちゃんの顔になりたいとか、こういう系統の顔になりたいとか、「自分のためのメイク」という価値観などです。
推しのための「冨岡義勇の女」になるメイクや、五条悟のようなキャラ風のメイクを、投稿して楽しんでいる方もいますね。
※ 非日常的なメイク写真を、LIPS等に投稿して「コスプレとメイクの中間」のような感覚で楽しんでいる。
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LIPS:https://lipscosme.com/
株式会社AppBrew:https://appbrew.io/
【告知】AppBrewさんでは採用募集中。マーケター、エンジニア、デザイナーなど探しているそうです。ご興味ある方は下記のサイトよりどうぞ。
※ 以降は、マニアックな事例を7つほどnote購読者向けにまとめています。WEB版で直帰率を「15%改善」した施策、ネガティブフィードバック起点にD7継続率を「6%改善」した施策など、ご興味あればぜひご覧ください。
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