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日米160万ダウンロード「ラクサス」が語る「超お金持ち層」がブランドバッグ借り放題アプリをつかう理由。テレビCMをシンプル化したら効果が3倍になった話。

ブランドバッグのレンタルアプリ「ラクサス」さんを取材しました。

ラクサス・テクノロジーズ株式会社 創業者 取締役 Founder 児玉 昇司さん

「ラクサス」について教えてください。

児玉:
ラクサスは、高級ブランドバッグがレンタルできる、月額制サービスです。いつでも4万点のバッグが交換自由で使い放題になります。

ダウンロード数は、日米で160万ダウンロード。有料会員の平均の継続率は90%以上。ユーザーにバッグを届けた回数は、累計60万回にのぼります。

2015年の2月にはじめてから、ずっと使ってくれている方もいて、初期から契約してくれているユーザーは、今でも約20%を占めています。

2019年に株式会社ワールドの子会社に。その2019年にはラクサスは黒字化していて、2022年には「年間利益で5〜6億円の規模」にまで成長している、とのこと。

「ブランドバッグのレンタル」が受け入れられるかは、どのように判断したのでしょうか?

児玉:
ラクサスの公開前に、AとBの2つの女性のグループに、机の上にブランドバッグを並べて「これ月6,800円で借りる?」と聞いてみたことがあって。

そしたら、ひとつめのAグループは、全員が「ノー」と言ったんですよね。みんな「高級ブランドを借りてまで持つなんて恥ずかしいです」と。

「社長、いまどきダサいです。今はプチプラです」「40万円のバッグよりも2万円のプチプラです」「そうだそうだ」そんな感じの反応でした。

それを聞いて、これは無理かなと思って「もうバッグ要らないから、好きなの持って帰っていいよ」と言ったんですね。Bに聞くまでもないと。

そしたら「ありがとうございます。じゃあヴィトン」「私も」「ジャンケンしよう」って。ん?ちょっと待てちょっと待て。言ってること違うぞと。

それで、やっぱりBグループを呼んできて、聞き方を変えてみたんですね。「あなたの友人知人は、このブランドバッグを借りると思いますか?」と。そしたら全員「イエス」になったんですよ。

「私は借りません。でも前職の先輩なら借ります」「友人なら借りますよ」この友人知人というのが、実は「本当の自分」なのだと思います。

自分の話だと、責任を取らないといけないから。でも、友達と言えば「友達の話なので」と無責任になれるから、本音が出てくるわけです。

そうした本音に触れたことで、これは可能性があるのではないかと感じて、ラクサスをスタートしました。

ラクサスを運営してわかった「意外なユーザー層」などがあれば教えてください。

児玉:
僕はお客様に電話をかけて、お話を聞くこともあるのですが、意外だったのは収入の多い「超お金持ちの人」が、想像よりも多かったことです。

彼女たちはバッグをたくさん持っています。なのに、なぜ使うかというと、生き方を着飾る「ファッション」として捉えてくれているからです。

買って捨てるではなくて「エシカルな生き方」をしていますよと。周りの人にも「ラクサスってエシカルなのよ」と話してくれます。

実際に、お客様に「レンタルに恥ずかしさはないのですか?」と聞いても、「ラクサスを使っていると言うとわたしの株が上がる」と言うんですよ。

もちろん、使いたくても使えなかった「ヴィンテージのバッグを使いたい」といった利用ケースなどもあります。

こうした、超お金持ちの人たちには「安いよ安いよ」では響かないけど、「エシカルですよ」が刺さっているんです。

そうした「超お金持ち」の人たちも、ラクサスにバッグを貸し出してくれているのでしょうか?

児玉:
そうです。お金持ちの人は「売る」のが嫌らしいんですよ。裕福でなくなった感じがするらしくて。それで我々に使わないバッグを貸してくれる。

彼女たちの言葉をつかうと、バッグは大事な「恋人」だけど、いきなり別れるのは嫌だから、遠距離恋愛をしてから別れたいのだそうです。

奥様がパートナーからもらった使わないバッグを、捨ててしまうと波風が立ってしまうので、クラウドに預ける感覚で貸してくれる方もいますね。

中には「700万円分のバッグ」を預けてくれる主婦の投資家の方もいます。その人は「株よりも良い」ということで、ラクサスの公開データを参考に、バッグを仕入れてラクサスに預けて収益を上げているんです。

ラクサスの運営で「成功した施策」を教えてください。

児玉:
2021年に実施した、テレビCMを「シンプル」にしたら、テレビCMの効果が大きく伸びたことがあります。

以前のCMは「利用シーン」を想像してもらうCMでした。デートのときに使えますよとか、彼氏の親と会うときに便利です、みたいな。

でも、もっと簡単に「アプリで借りて、自宅に届いて、コンビニで返せる」と歌とダンスで伝えて、それ以外をバサッと切ったんですね。

そしたら、それが馬鹿当たりしたんですよ。わかりやすくしただけでグーンと伸びていって。一時期はテレビCMの効果が約3倍になりました。

なぜそうしようと思ったかというと、旧CMは最後の1秒で「レンタルだったらラクサス」のような一言セリフを入れていたのですけど、シンプルなバージョンが刺さっていたんですよね。

そんなに変わるのなら、全体をシンプルにしたほうが、いいのではないかと思ったんです。その仮説がうまく当たりました。

テレビCMって何億円も赤字を掘るので、親会社にも納得してもらうのが大変だったのですが、挑戦させてくれてとても感謝しています。

逆に「うまくいかなかった施策」なども知りたいです。

児玉:
ラクサスには、お手紙が毎日のように届くんですよ。みなさん便箋をわざわざ用意してくれて、お手紙を書いてくれるんですね。

それで、こんなにいただけるなら「紙を入れたらもっと書いてくれるはず」とお手紙用の紙を同封したことがあるのですが、これは逆効果でした。全然書いてくれなくなった。ABテストもしたのですけど。「書かされている感」が出ると、ダメなのだなと思いました。

成功したのは、お手紙を「アプリ内で紹介」したことです。載せてくれたとなるとまた書きたくなるし、載るかもと思うと書いてくれやすくなる。

アプリに掲載したことで、好循環が生まれました。紙を入れて「書いてください」はダメだったけど、書いてくれたものを「紹介する」はよかった。

ラクサスの運営で「ここはポイントだった」と思うことがあれば教えてもらえますか?

児玉:
「コミュニティの質」を高め続けてきたことです。シェアリングエコノミーは、良質なコミュニティをつくれば、コストを下げることができます。

つまり「1%のクレーマー」には、退場してもらったほうが良いんですよね。実際に「クレーマーには謝らないしお断りしよう」と決めています。

当初、月額29,800円じゃないと成立しないと思いましたが、月額6,800円で提供できているのは、そこがひとつの理由になっています。

ラクサスの場合は、99%の「いいお客様」の継続率を伸ばせるなら、1%のクレーマーのお客様が減ってしまっても問題ありません。

実際に、返ってきたバッグをリペアするまでに3日かかっていたのが、今は23分になっています。綺麗に使ってくださる方が増えたからです。

バッグがリクープするまでの期間も「24ヶ月→20ヶ月」に短縮できました。利益化の早さはあとで強烈な利益として返ってきます。

批判もあるかもしれないけど、僕は社員のほうが大事なんですよ。クレーマー気質のお客様は社員をいじめてきます。サンドバッグのようにひどい言葉で殴ってくるんですね。怒っている人はいつも怒っています。

それを「お客様は神様だから」と全て許してしまうと、社員が疲弊してしまいます。世の中にサステナブルを求める時代なのだから、僕は社員に対してもそうありたいと思うんですよ。

基準としては「友達かどうかで選んで」と言っています。こんなひどい言葉をぶつけてくる人は友達じゃない、と思えば切ってしまってもいいと。

他にこれまでに「ターニングポイントだった」と感じることがあれば教えてください。

児玉:
はっきりと「これはエシカルな活動です。あなたが使っても良いんですよ。これを使うのがいい女ですよ。」と強く伝えるようにしたことです。

嫌われてもいいから、好かれる理由を伝えようと。「エシカルは良いこと。むしろ使わないといけません。」くらいの気持ちで、サイトやアプリなどで伝えるようにしたことが、結果として売上の成長につながりました。

以前に会議をしていたときに、新規ユーザーが「ラクサスを使わない理由」を考えようみたいなことを、社内で話していたことがあって。

僕はそれに違和感がありました。売れない理由を考えても意味ないよねと。「でも売れない理由をなくせば売れますよね?」それは違うよと。

なぜなら「売れない」を潰しても「売れる」にならないから。売れないと売れるの間には大きな「どうでもいい」があるからです。

言い換えると「好き」と「嫌い」だけじゃない。間に「どうでもいい」がある。だから、嫌いをなくしても「どうでもいい」になるだけだよと。

よく「おじさんが嫌われる5つの理由」という記事があります。あれを全部その通りにしてもモテない。なぜなら「どうでもいい」になるだけだから。

ビジネスは好かれないと無視されちゃうから。好きになってもらわないといけない。嫌われないものじゃなくて、好かれるものを作ろうよと。

その好かれる理由というのが、「ラクサスはエシカルですよ。使っていると尊い人ですよ」と、しつこく伝えることだったんですね。

赤い服を着ない人が「赤が似合ってますよ」と言われたら、赤着ても良いんだとなりますよね。これと同じで「許可を与える」ことも大切です。

これをはじめてから「良い人」がより集まるようになって。おかげさまで利益もより出るようになりました。かなり効果があったと思います。

購入ではなくて「シェア」だから起こっている消費行動というのはありますか?

児玉:
印象的だったのは、お客様から「1万円のバッグを仕入れてほしい」と言われたことがあって。ただそのブランドは取り扱っていなかったんですよ。

でも1万円なら買えばいいじゃないですか。それで聞いてみたらお客様はこう言っていたんです。「いやいや、私が使いたいのは1回だけなんです」と。

なるほどとすぐ買ってくると、そのバッグはグルグルと回りはじめて。1万円のバッグが何度もレンタルされて、すごく利益に貢献してくれました。

また「買うには勇気がいるバッグ」はシェアと相性が良いと思います。少し変わったデザインのバッグも、ラクサスでは人気ですね。

お店だとバッグって「赤・青・水色・黄色」はなかなか売れないんですよ。中古市場でも超安い。でも、ラクサスだとバンバン借りられています。

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【取材協力】
ラクサス・テクノロジーズ株式会社:https://corp.laxus.co/
ラクサス:https://laxus.co/
CEOの児玉さん:@shoji_kodama

【告知】ラクサスさんでは、各職種で採用も強化中。エンジニアやマーケターなど、募集しているそうです。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。

※ 以降は、マニアックな事例を4つほどnote購読者向けにまとめています。ラクサスが「3ヶ月半額」にしている理由、テレビCMに少しの工夫を加えて500〜1,000人の加入者を増やした話、などご興味あればご覧ください。

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