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会社の倒産危機から「顧客を絞りに絞って」金融特化でARR6億円に。ベルフェイスが語る「顧客を絞ること」の大切さ、数千万円の収益を生んだ「お手紙施策」

オンライン商談ツールの「ベルフェイス」さんを取材しました。

ベルフェイス株式会社 代表取締役 中島 一明さん

「ベルフェイス」について教えてください。

中島:
オンラインの商談ツールです。お客様にネット検索から「接続ナンバー」を発行してもらうだけでオンライン商談ができます。

2015年の創業から2020年までの5年間は、ITや人材系などのSaaS企業を中心に幅広い業種でつかわれていましたが、現在は基本的には「金融系企業」に特化してサービスを提供しています。

立ち上げ初期に「これはやってよかった」と思うことがあれば教えてください。

中島:
かなり初期から「誰もが知る会社」の事例をつくったことです。これをやり切ったことが、事業の効率性に相当の影響を与えました。

なぜなら、はじめに「誰もが知る会社」の事例をつくれば、大企業やほかの業界に対しても、その事例をもとに提案できるようになるからです。

具体的には、伝手を頼ってリクルートさんや楽天さんに提案して、ベルフェイスの顧客になっていただき、初期の頃に事例化をしましたね。

これはSaaSへの出資経験の多い株主がいらっしゃって、その方から「BtoBは事例が全てだ」という、アドバイスをいただいたのがよかったなと。

初期のベンチャーであるほど「みんなが知ってる会社」の事例を必死につくるべきです。事例ができたら大手にいこうではダメ。これは逆なんですよ。

ベルフェイスの成長で「ここはポイントだった」と思うところがあれば教えてもらえますか?

中島:
5億円の資金調達をした直後に、照英さんを起用した「営業はヒラメ筋だ」というタクシーCMを打ち出したことが、事業の成長につながりました。

ポイントは、クリエイティブにお金を掛けることを徹底して、露出はさほど多くなくても「1度見たら忘れられないCM」になるように振り切ったこと。大手に比べると、予算も大きくなかったので一点突破しようと。

当時はタクシー媒体が出はじめたばかりでもあったんですよ。広告の費用も「今の1/3くらいの価格」で実施できましたし、BtoBのプロダクトだったので、決裁権のある部長以上がよく乗るタクシー広告とも相性が良かった。

結果的としても、直接的なリードからの受注において、「タクシー広告を見て問い合わせしました」と明確に算出できたものだけでも、約1.7倍の投資対効果がありましたね。

5億円の資金調達のあとは、次が50億円の調達になったのですが、そのときに投資家の方たちと話すと「CMで見たよ」「勢いあるよね」というところからスタートできました。知ってる・知ってないでは全然違います。

なので、そういった「知ってるよ」「勢いがあるね」という演出も含めて、事業を本当に後押ししてくれた広告だったなと。

急成長している中で、そこから「ターニングポイント」になった出来事を教えてください。

中島:
コロナ禍に入って、国内のオンライン商談市場が、一気にレッドオーシャン化したことですね。突如競合になったのはZoomやTeamsでした。

ZoomやTeamsが、急激に「社内会議」で使われるようになり、そして今度は「営業・商談」でも使われるようになって、競合化したんですね。

契約の更新を迎えた半数以上の顧客が、「ベルフェイスさん今までありがとうございました」といって、どんどん解約していったんですよ。

半年くらいたつと、5年積み上げてきた収益基盤はガタガタになり、成長戦略は土台から崩壊して、ユニットエコノミクスも成立しなくなりました。

例えば、月間のリード数が約10分の1になる、問い合わせから受注できなくなる、これまで成立していたものが成立しなくなったんですね。

反省点としては、結局は「簡単にスイッチングできた」ということですね。だから伸びていたのに解約されてしまった。もっと業務フローに組み込まれることを意識すべきでした。

その状況からどう判断して「方向転換」しましたか?

中島:
解約率が高くなる中で「金融のお客様」だけは解約率が低いどころか、むしろ利用率が上がっていたんですよね。それで、金融業界に一点突破することを決めました。

金融業界でリプレイスが起きなかった理由のひとつは、多くの金融企業ではセキュリティの観点から、画面共有が禁止されていたからです。もし営業担当が「誤まった画面」を共有して、その画面がキャプチャされてしまえば、情報漏洩で大問題になります。

その点、ベルフェイスには、クラウドで事前に設定した資料だけを共有することができる機能があって、画面共有をしなくても資料を提示してプレゼンできたんですよね。

また金融業界の中でも「個人向けの営業」のユースケースでの利用率が伸びていました。これが顧客分析からわかってきたんです。

例えば、証券会社のコールセンター部門では、高齢者のお客様が多い。でも感染リスクがあって対面ではなかなか会えない。

そのときに、電話の延長で「パッと証券情報を見せられる」ということで、電話に視覚情報を付加できる、というユースケースがハマっていた。

そこから金融業界へのシフトを進めて、2年間で「金融業界のARR」は6億円まで到達しています。ドラゴンボールのサイヤ人のように、我々は死にかけるたび強くなる、フェニックスベンチャーとして、再度成長しています。

この転換から「得られた教訓」を伝えるとしたら、どのようなものを挙げますか?

中島:
恐れずに「顧客を絞り込むこと」だと思います。これってどの本にも書いてあることなんですけど、面白いほどにいざとなったらできないんですよ。

というのも、お問い合わせは複数の業界からくるし、営業活動をしていると様々な会社とも接点が生まれる。すると「ここもここも出来れば同時に狙いたいよね」と誘惑に駆られる。ここが本当に難しい。

それでも、ターゲットを恐れずに絞って、リソースを投下してNo. 1になる。一言でいうと「振り切れるかどうか」が大切だったなと。

基準としては、誰からも「これ絞り込みすぎじゃない?」と突っ込まれるくらいがちょうど良い。私が投資家ならそういう会社に投資したいです。

広すぎると、営業サイドも開発サイドも「結局フォーカスできていない」となるんですよ。リソースが分散して競争力がなくなるんです。

プロダクトに特徴があって、「ハマる・ハマらない」の濃淡がつきやすく、バーティカルに攻めるのなら徹底的に絞る。

我々は金融業界の中でもとくに「銀行と証券」に絞り込みました。業種や営業手法が違えば、ニーズも違うのでしっかり絞り込む。

銀行の窓口に座っている人と、保険の営業マンだと、属性が違うんですよ。フォーカスできないと力が分散します。だから絞りに絞ること。

本当にちょっとでも「広すぎるかな?」と思ったら大体広い。今回の経験によって、そこが知識から血肉になりましたね。

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ベルフェイス株式会社  取締役 西山 直樹さん

金融企業の開拓を進める中で「ここはポイントだった」と感じることがあれば教えてください。

西山:
金融ってかなり特殊な業界なので、この分野に精通した会社や人を、うまく巻き込めるかどうかが、重要なポイントだったのかなと思います。

もともと、金融業界に縁もゆかりもない自社だけで、マーケットを攻めていこうと思ったら、2年間でこの結果は出ていなかったと思うんですよ。

会社を巻き込むという意味だと「アライアンス」です。自社だけで売るのは難しかったため、Salesforceさんと組ませてもらいました。

もともと、プロダクト間の連携はしていたのですが、我々が金融機関を攻めたいというときに「一緒に組みませんか?」と持ちかけましたね。

Salesforceさんって「金融公共の部門」が花形なんです。世界的に見てもこのセクターが最も売上を伸ばしているくらい得意領域なんですね。日本中の金融機関ともパイプを持っています。

Salesforceさん側としても、ベルフェイスともサービスが連携しているので、セット販売することで販売単価や解約率にも良い影響が見込めます。

金融系の企業を開拓するときに「うまくいった施策」があれば教えてください。

西山:
効果があった営業手法のひとつは「お手紙を送付すること」でした。

きっかけとしては、Salesforceさんにエンタープライズ営業を学びに行って、一番効果が出ている施策は何かと聞いたら「手紙」だったんですよ。 

それで、どんな紙を使っているかとか、内容も参考にさせていただきつつ、ベルフェイスでも検証しながらやってみたら成果が出ました。

効果的だったのは「競合他社の名前や事例」をどんどん入れるようにしたことです。競合企業や先進企業の事例などを、もちろんロゴの使用許諾などをとってから盛り込みましたね。

やはり、競合の動きはみなさん意識されますし、中小企業のデジタルの先進的な取り組みなどにも、興味を持ってもらいやすかったです。

具体的になればなるほど、イメージを持ってもらえて「会ってみよう」と思ってもらえるので、その会社が抱える課題を盛り込むことも大事でした。

例えば「御社のこの課題を解決するために○○という機能を開発しました」など、記事や決算書などを読み込んで、提案するイメージですね。

なので、事前リサーチはとても大事です。こうした内容を入れるようになってから返信率も上がりました。 

送ってみて感じたのは、手紙を読んで秘書の方に「この方とのアポを手配してください」と言ってくれる人は、先進的な考えを持っていて、変化に対しても前向きな方が多いこと。 

なので、商談になると「いい商談になる確率」がそもそも高かったと感じますし、そういう意味での効率はよかったのかなと。

また僕らが手紙を送るような、営業役員や営業部長の方って、自分自身も営業のときに手紙を送ったり、泥臭くやっている人たちなんですよ。

なので、ネット時代になっても「手紙を送る」ということを、地道にやっている企業に対して「だったら会ってみよう」と思ってくれたのかなと。

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【取材協力】
ベルフェイス株式会社:https://corp.bell-face.com/
ベルフェイス:https://bell-face.com/
代表取締役の中島さん:@k_nakajima_bell
取締役の西山さん:@nishiyama620

【告知】ベルフェイスさんでは各職種で採用強化中。エンジニアや金融業界向けの営業など募集しているそう。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。

※ 以降は、マニアックな事例を4つほどnote購読者向けにまとめています。顧問を活用して金融企業を開拓した方法、オフラインのユーザー会の効果、継続率を高めるマジックナンバー分析、などご興味あればご覧ください。

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