Chompyが語る「フードデリバリー事業」の立ち上げ戦略。エリア限定のネットワーク効果がUXに影響する話、リピート率と注文回数が1.5倍の配達方法「らくとく便」の裏側。
渋谷発のフードデリバリーの「Chompy」さんにお話を伺いました。ダイジェスト版は漫画でまとめています。
・SYN 大見さん ツイッター(@shuheeeeei)
・Chompy(https://chompy.jp/)
【SYNさんより告知】Chompyのエンジニア、デザイナー、グロース担当、など採用中とのことで、ご興味ある方は以下よりどうぞ。
以下、note購読者向けに、インタビューの「テキスト+図解版」の詳細記事を配信しています。
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※ 株式会社シン 代表取締役 大見周平さん
○ Chompyについて
大見:
Chompyは、日常の食に寄りそうフードデリバリーアプリです。配達エリアは渋谷からスタートして、順次エリアを拡大しています。
20名ほどで運営していて、ユーザー会員数は5万人、登録店舗は1,000店、配達員数は1,500人、という状況ですね。
今は「リピート率」を一番大事にしています。内部の数値がよければ、あとは流入を増やしていけば、全体の流通額は伸びていくためです。
Chompyでは、1回目に注文してくれたユーザーが、2回目以降も注文してくれる割合が、70%くらいとなっています。
Q:立ち上げのときに「Chompyの掲載店舗」はどう集めましたか?
大見: 去年の8月頃に、店舗さんにメンバーで営業しはじめて。最初の200店舗までは自社メンバーで集めましたね。
渋谷で働いているメンバーも多かったので、自分が好きなお店や、このお店が入っていたら熱い、そんなお店を持ち寄って営業しました。
当時はコロナ禍でもなかったので、今より「デリバリーなんて…」という空気でしたし、断られることも当然たくさんありました。
○ もっとも効果的だったのは「飛び込み営業」
Q:店舗への営業はどうすると上手くいきましたか?
大見:
営業は電話も飛び込みもDMもやって、手探りでいろいろ試したのですが、結局一番よかったのは「飛び込み営業」でした。
フードデリバリーって、店舗数が増えれば売上が伸びる構造、じゃなくなる瞬間があって。なぜなら、店舗さんにユーザーが紐づいているから。
でも、そういう強いコミュニティを持つ店舗ほど、リアル店舗が忙しくて、デリバリーの意味を感じにくい。
なので、そうしたお店に加盟いただくには、直接コンセプトを説明して、1回目はダメでも、2回目3回目とアプローチすることが大事でした。
サービス名も決まってない中、「はじめは渋谷特化でめっちゃ頑張るので、よろしくお願いします!」と、会って気持ちや価値観を伝える。
そういう活動を続けると「そういうのなら待ってた」「嫌いじゃないね」と言ってもらえることも出てきました。
○ エリア別のネットワーク効果の話
Q:Chompyでは、エリアを「渋谷中心」に拡大しています。主要なエリアにピンを打つように広げないのはなぜですか?
大見:ピンを打つように広げられるほど甘くないのは、店舗さんが一気に増やせないのと、店舗さんを増やせたとしても、ユーザーが流れ込むまでは、店舗さん側の体験が悪くなるからです。
フードデリバリーのUXって、地域で分散されちゃうんですよ。ネットワーク効果といっても、それはエリア限定のネットワーク効果でしかない。
渋谷のネットワーク効果は新宿ではワークしない。渋谷と新宿は4キロほ離れているので、新宿からだと渋谷の20〜30%のお店しか出てこない。
Q:渋谷でつかうChompyと、新宿でつかうChompyでは、ある意味では「別のサービス」ということですよね?
大見:そうです。実際に、Chompyは新規エリアでは「リピート率が低い」ということもわかってきていて。
例えば、渋谷の人が「このお店もあるの!?」となる熱量って、三軒茶屋の人には伝わらないじゃないですか。
すると、せっかく良いお店があっても、注文される可能性は低くなるし、エリアによって「サービスの満足度」が変わってしまう。
だから、今のところは「同心円状」にエリアを広げていて、獲得済みの店舗さんがあるところから、地続きに拡大していますね。
○ アプリで「屋台街やフードフェス感」を再現する
Q:アプリの運営で「大事にしていること」を教えてください。
大見:大事にしている方向軸のひとつは、店舗さんの魅力をユーザーに伝えてファンになってもらう、ということです。
アプリ上では、屋台街やフードフェスのような、ワクワクした雰囲気や、直感的に情報量が入ってくる状態を、再現したいと考えています。
例えば、ジューという音や湯気など、調理の工程を見せて、シズル感を感じてもらえるように、動画のストーリーを入れています。
Q:動画のストーリーから売上が伸びることもありますか?
大見:はい。「うさぎ」さんというラーメン屋さんでは、自家製のラー油をつくっている動画をのせたら、注文数が伸びたんですよね。
ラー油の動画をみて、みんな「この辛い感じ良いなあ、今日は坦々麺いっちゃおうか」と、食欲がそそられたのかなと。
屋台街を歩く時ってそうじゃないですか。パーッと見て、あれ食べたい、これ食べたい。こっちがそそられるなと。シズル感で絞られていく。
写真やテキストから「食欲探しをする」ってわりと疲れるけど、動画だと直感的にいまの自分の「食いたい気分」に気づけますよね。
○ Chompyにレビュースコアを出さない理由
Q:Chompyでは「★5」のようなスコアがないですよね。これには理由があるのでしょうか?
大見:評価の平均スコアって、マジで危ないんですよ。一瞬でハックできてしまうし、おいしさって主観だからです。
僕は麻婆豆腐が好きなのですが、Chompyの麻婆豆腐のお店を分析すると、ものすごいスコアが低かったんですね。
とくに「辛い」「脂っこい」という意見が多い。でも好きな人からすると「何を言っている、辛いのが最高じゃないか」と思うわけです。
要は期待値がずれていて、ニッチジャンルの美味しいものって、過剰に低く評価されやすい。逆に大衆受けする優等生は評価されやすい。
それに依存すると、安定感はでるけど尖りがなくなる。もっとグルメって多様でいい。だから平均スコアを出すと全然ダメだなと。
なので、お客さんから「おいしさ・コスパ・盛り付け」のスコアはいただくのですが、お店側へのフィードバックの活用などに留めています。
○ 送料が無料になる「らくとく便」の仕組み
Q:ほかに運営で「大事にしていること」はなんですか?
大見:もうひとつは「流通の仕組み」をロジカルにつくることです。
例えば「らくとく便」という、事前に注文してもらう代わりに、決まった時間に送料無料で届く、というサービスをつくりました。
Q:ユーザーにはどんな変化がありましたか?
大見:Chompyの週間リピート率って、通常は約10%で底を打つのですが、「らくとく便」の利用者だと20%になります。
さらに「らくとく便」利用者は、週の平均利用回数も通常の1.5倍もあって。注文単価は下がるんですけど、平日昼の利用が多くなる。
おそらく「利便性と納得感」を高めたことで、外食やコンビニでの買物を、リプレイスできたのかなと。
Q:「らくとく便」の配達の仕組みを教えてもらえますか?
大見:途中の地点に「軽バン」を配置して、架空の中継所みたいなものをつくることで、配達コストを下げています。
飲食店を3店舗くらい回る配達員と、オフィスビルなどを回ってお客さんに届ける配達員、役割を2つに分ける感じですね。
通常800円ほど配達コストがかかりますが、これだと300円まで落とせて、飲食店さん側の手数料でペイできるから、送料無料にできていて。
この仕組みだと「3店から1品ずつ」頼むこともできる。お弁当とサラダとデザートを別々のお店から送料無料で届けられます。
※ ちなみに「軽バン」でお店側を回ろうとすると、都心だと交通渋滞や一方通行の道があって、自転車の3倍くらい時間かかるそう。配達は自転車がもっとも機動力が高くて、配達時間を安定させられると。
Q:ユーザーはどんな風に増えていますか?
大見:Chompyは広告を打ってないので、流入のほとんどが「友達招待コード」からなんです。ソーシャルの活用は重要ですね。
注文後に「シェアボタン」を入れたら、Chompyは写真が綺麗で映えることもあり、招待コードつきでシェアしてもらえました。
これを加速させる「グループ注文機能」も入れていて。2人以上で買うと送料無料になるので、バイラル的にもめちゃめちゃ効くんですよ。
とくにコロナ禍に入る前は、オフィスでの利用がすごく多かったです。
※ 以降は、マニアックな話をnote購読者向けにまとめています。Chompyの高LTVユーザーの特徴、初期の配達員の集め方、Slackユーザーコミュニティーの利点など、ご興味あればぜひご覧ください。
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