見出し画像

Chompyが語る「フードデリバリー事業」の立ち上げ戦略。エリア限定のネットワーク効果がUXに影響する話、リピート率と注文回数が1.5倍の配達方法「らくとく便」の裏側。

渋谷発のフードデリバリーの「Chompy」さんにお話を伺いました。ダイジェスト版は漫画でまとめています。

画像21

画像21

画像21

・SYN 大見さん ツイッター(@shuheeeeei
・Chompy(https://chompy.jp/

【SYNさんより告知】Chompyのエンジニア、デザイナー、グロース担当、など採用中とのことで、ご興味ある方は以下よりどうぞ。

以下、note購読者向けに、インタビューの「テキスト+図解版」の詳細記事を配信しています。

---------

画像18

※ 株式会社シン 代表取締役 大見周平さん

○ Chompyについて

大見:
Chompyは、日常の食に寄りそうフードデリバリーアプリです。配達エリアは渋谷からスタートして、順次エリアを拡大しています。

20名ほどで運営していて、ユーザー会員数は5万人、登録店舗は1,000店、配達員数は1,500人、という状況ですね。

今は「リピート率」を一番大事にしています。内部の数値がよければ、あとは流入を増やしていけば、全体の流通額は伸びていくためです。

Chompyでは、1回目に注文してくれたユーザーが、2回目以降も注文してくれる割合が、70%くらいとなっています。

画像4

Q:立ち上げのときに「Chompyの掲載店舗」はどう集めましたか?

大見: 去年の8月頃に、店舗さんにメンバーで営業しはじめて。最初の200店舗までは自社メンバーで集めましたね。

渋谷で働いているメンバーも多かったので、自分が好きなお店や、このお店が入っていたら熱い、そんなお店を持ち寄って営業しました

当時はコロナ禍でもなかったので、今より「デリバリーなんて…」という空気でしたし、断られることも当然たくさんありました。

画像6

○ もっとも効果的だったのは「飛び込み営業」

Q:店舗への営業はどうすると上手くいきましたか?

大見:
営業は電話も飛び込みもDMもやって、手探りでいろいろ試したのですが、結局一番よかったのは「飛び込み営業」でした。

フードデリバリーって、店舗数が増えれば売上が伸びる構造、じゃなくなる瞬間があって。なぜなら、店舗さんにユーザーが紐づいているから。

でも、そういう強いコミュニティを持つ店舗ほど、リアル店舗が忙しくて、デリバリーの意味を感じにくい。

なので、そうしたお店に加盟いただくには、直接コンセプトを説明して、1回目はダメでも、2回目3回目とアプローチすることが大事でした

サービス名も決まってない中、「はじめは渋谷特化でめっちゃ頑張るので、よろしくお願いします!」と、会って気持ちや価値観を伝える。

そういう活動を続けると「そういうのなら待ってた」「嫌いじゃないね」と言ってもらえることも出てきました。

○ エリア別のネットワーク効果の話

Q:Chompyでは、エリアを「渋谷中心」に拡大しています。主要なエリアにピンを打つように広げないのはなぜですか?

大見:ピンを打つように広げられるほど甘くないのは、店舗さんが一気に増やせないのと、店舗さんを増やせたとしても、ユーザーが流れ込むまでは、店舗さん側の体験が悪くなるからです。

フードデリバリーのUXって、地域で分散されちゃうんですよ。ネットワーク効果といっても、それはエリア限定のネットワーク効果でしかない。

渋谷のネットワーク効果は新宿ではワークしない。渋谷と新宿は4キロほ離れているので、新宿からだと渋谷の20〜30%のお店しか出てこない。

画像16

Q:渋谷でつかうChompyと、新宿でつかうChompyでは、ある意味では「別のサービス」ということですよね?

大見:そうです。実際に、Chompyは新規エリアでは「リピート率が低い」ということもわかってきていて。

例えば、渋谷の人が「このお店もあるの!?」となる熱量って、三軒茶屋の人には伝わらないじゃないですか。

すると、せっかく良いお店があっても、注文される可能性は低くなるし、エリアによって「サービスの満足度」が変わってしまう。

だから、今のところは「同心円状」にエリアを広げていて、獲得済みの店舗さんがあるところから、地続きに拡大していますね。

画像5

○ アプリで「屋台街やフードフェス感」を再現する

Q:アプリの運営で「大事にしていること」を教えてください。

大見:大事にしている方向軸のひとつは、店舗さんの魅力をユーザーに伝えてファンになってもらう、ということです。

アプリ上では、屋台街やフードフェスのような、ワクワクした雰囲気や、直感的に情報量が入ってくる状態を、再現したいと考えています。

例えば、ジューという音や湯気など、調理の工程を見せて、シズル感を感じてもらえるように、動画のストーリーを入れています。

画像20

Q:動画のストーリーから売上が伸びることもありますか?

大見:はい。「うさぎ」さんというラーメン屋さんでは、自家製のラー油をつくっている動画をのせたら、注文数が伸びたんですよね

ラー油の動画をみて、みんな「この辛い感じ良いなあ、今日は坦々麺いっちゃおうか」と、食欲がそそられたのかなと。

屋台街を歩く時ってそうじゃないですか。パーッと見て、あれ食べたい、これ食べたい。こっちがそそられるなと。シズル感で絞られていく。

写真やテキストから「食欲探しをする」ってわりと疲れるけど、動画だと直感的にいまの自分の「食いたい気分」に気づけますよね

画像17

○ Chompyにレビュースコアを出さない理由

Q:Chompyでは「★5」のようなスコアがないですよね。これには理由があるのでしょうか?

大見:評価の平均スコアって、マジで危ないんですよ。一瞬でハックできてしまうし、おいしさって主観だからです。

僕は麻婆豆腐が好きなのですが、Chompyの麻婆豆腐のお店を分析すると、ものすごいスコアが低かったんですね

とくに「辛い」「脂っこい」という意見が多い。でも好きな人からすると「何を言っている、辛いのが最高じゃないか」と思うわけです。

要は期待値がずれていて、ニッチジャンルの美味しいものって、過剰に低く評価されやすい。逆に大衆受けする優等生は評価されやすい

それに依存すると、安定感はでるけど尖りがなくなる。もっとグルメって多様でいい。だから平均スコアを出すと全然ダメだなと。

なので、お客さんから「おいしさ・コスパ・盛り付け」のスコアはいただくのですが、お店側へのフィードバックの活用などに留めています。

20201215_Slide_H22のコピー

○ 送料が無料になる「らくとく便」の仕組み

Q:ほかに運営で「大事にしていること」はなんですか?

大見:もうひとつは「流通の仕組み」をロジカルにつくることです。

例えば「らくとく便」という、事前に注文してもらう代わりに、決まった時間に送料無料で届く、というサービスをつくりました。

画像7

Q:ユーザーにはどんな変化がありましたか?

大見:Chompyの週間リピート率って、通常は約10%で底を打つのですが、「らくとく便」の利用者だと20%になります。

さらに「らくとく便」利用者は、週の平均利用回数も通常の1.5倍もあって。注文単価は下がるんですけど、平日昼の利用が多くなる。

おそらく「利便性と納得感」を高めたことで、外食やコンビニでの買物を、リプレイスできたのかなと。

画像8

Q:「らくとく便」の配達の仕組みを教えてもらえますか?

大見:途中の地点に「軽バン」を配置して、架空の中継所みたいなものをつくることで、配達コストを下げています。

飲食店を3店舗くらい回る配達員と、オフィスビルなどを回ってお客さんに届ける配達員、役割を2つに分ける感じですね。

通常800円ほど配達コストがかかりますが、これだと300円まで落とせて、飲食店さん側の手数料でペイできるから、送料無料にできていて。

この仕組みだと「3店から1品ずつ」頼むこともできる。お弁当とサラダとデザートを別々のお店から送料無料で届けられます。

画像9

※ ちなみに「軽バン」でお店側を回ろうとすると、都心だと交通渋滞や一方通行の道があって、自転車の3倍くらい時間かかるそう。配達は自転車がもっとも機動力が高くて、配達時間を安定させられると。

Q:ユーザーはどんな風に増えていますか?

大見:Chompyは広告を打ってないので、流入のほとんどが「友達招待コード」からなんです。ソーシャルの活用は重要ですね

注文後に「シェアボタン」を入れたら、Chompyは写真が綺麗で映えることもあり、招待コードつきでシェアしてもらえました。

これを加速させる「グループ注文機能」も入れていて。2人以上で買うと送料無料になるので、バイラル的にもめちゃめちゃ効くんですよ。

とくにコロナ禍に入る前は、オフィスでの利用がすごく多かったです。

画像10

※ 以降は、マニアックな話をnote購読者向けにまとめています。Chompyの高LTVユーザーの特徴、初期の配達員の集め方、Slackユーザーコミュニティーの利点など、ご興味あればぜひご覧ください。

ここから先は

2,380字 / 5画像
アプリやプロダクトの成功事例が学べるマガジンです。プロダクトの売上やユーザー数を伸ばしたい人にオススメです。成長プロダクトのインタビュー、効果のあったマーケティング施策、事例やデータなどが中心(月に7記事ほど)多くの過去記事も5年ほど遡って読めます。クレカ決済だと初月無料なのでお試しでもぜひ。

月刊アプリマーケティング

¥2,000 / 月 初月無料

プロダクト運営について学べるマガジンです。アプリやプロダクトの売上やユーザー数を伸ばしたい人にオススメです。月に7記事ほどお届けします。