0から立ち上げて、サブスク会員計11万人。「GREEN SPOON」が語る、SNSやメディアで話題を呼ぶ「ブランドの体験設計」のコツ、1つの「言葉の発見」で売上が伸びた話
主菜やスープが冷凍で届く「GREEN SPOON」さんを取材しました。
GREEN SPOONについて教えてください。
田邊:
GREEN SPOONは、野菜たっぷりの「冷凍デリ」が届く宅食サービスです。電子レンジにかけるだけで素材が料理になります。
2020年3月に開始して、会員数(サブスク)は累計11万人を超えています。単品販売もありますが、全体の85〜90%はサブスクになっています。
忙しく働く女性を中心に、「食で自分を大切にしたい。でも簡単にヘルシーに済ませたい」といった人に、多く利用されています。
GREEN SPOONはどのように立ち上げていったのでしょう?
田邊:
最初は、本当に何もないところから始まりました。お金もツテも作り方も何もなかったので、夢と情熱でブランドをつくろうとしました。
最初に「スムージーのD2Cをやろう」と思った瞬間に、お金がないと食品のサービスはつくれないので、まず4,000万円を資金調達しました。
そこから、原材料を集めるために、鎌倉の農家に「ピンポン」と訪ねて行って「野菜を仕入れさせてくれませんか?」とお願いしました。
工場も探さないといけません。全国の工場に電話をかけました。それで、「パーソナルスムージーを"100種類"つくりたいんです!」とお願いしていったのですが、ホントに誰も相手にしてくれませんでしたね。
でも、1社だけ「よくわからんが作ってやる!」と、ある方に紹介いただいた大阪の工場さんが面白がってくれて。そこから、話が進んでいきました。
ただ、僕は「パーソナルスムージー」というコンセプトを考えていたので、スムージーを100種類はつくりたいと思っていました。
しかし、食品は種類を絞ることが鉄則。「100種類はやめろ。死ぬぞ!」とはっきり言われて。それで、妥協して25種類で進めることになったんです。
そこから、管理栄養士の方にインスタでDMしてレシピ開発を依頼したり、サービスサイトをつくって、ようやく公開の準備が整いました。
GREEN SPOONをローンチするまでに、2,000万円ぐらいはかかりましたね。食品は在庫も抱えますし、ビジネスとしては初期費用がかかります。
ローンチ後は「友達100人」にDMして買ってもらった。
田邊:
こうして、2020年3月にGREEN SPOONをローンチしました。当然サイトをオープンしただけでは、お客さんは誰も来てくれません。
そこで、はじめは創業メンバー3人で、エクセルに友達をリストアップして、「スムージー買ってくれませんか?」とDMすることからスタートしました。結果的に、100人に買っていただくことができました。
売上が伸びはじめたキッカケは、ローンチから数ヶ月たった頃に、芸能人の方がGREEN SPOONを「これいいよ!」と紹介してくれたことでした。
例えば、フワちゃんや指原莉乃さんが話題にしてくれて、テレビ番組などのメディアやSNSでもワーッと話題になっていきましたね。
コロナ禍だったので「自宅時間を楽しもう」みたいな文脈で紹介いただくことが多かったです。ここで1回火がついた手応えがありました。
話題になるために「工夫したこと」を教えてください。
田邊:
僕らが意識していたのは、「新しさ」でした。コンセプトも新しかったし、カップも新しかったし、「これ食品なんだ!?」となるじゃないですか。
見たことないものをつくったことが、メディアやSNS上での話題につながったのだと考えています。
スムージーを出したときには「写真を撮られる瞬間」をたくさんつくることも意識していましたね。本当にKPIとして設定していたくらいです。
例えば、アイスのようなカップで中身はスムージーという驚き、蓋を開けた瞬間にどう野菜を並べると映えるのかなど、撮りたくなる仕掛けを詰め込みました。
あらゆるところに「かわいい・新しい」を詰め込み、撮りたくなる瞬間が生まれる体験を設計すれば、きっとみんな拡散してくれるはず。
利用した後の「おいしいね、簡単だね」という感想って、選んでもらった後にしか出てこないものなので、まず話題にしてもらうことを目指しました。
“!?”がつく言葉をつくることが大事。
田邊:
最初のコンセプトだった「パーソナルスムージー」という言葉も、戦略的に設計したところがあります。
僕はいつも「“!?”がつく言葉をつくること」を意識します。今回で言うと、テレビ番組で「パーソナル・・・スムージー!?」とナレーションが流れる。これがしっかりとイメージできることが重要です。
この「!?」の正体は「わかるようでわからないこと」なんです。スムージーという言葉も、パーソナルという言葉もみんな知っている。でも掛け算することで「パーソナルスムージー!?」となる。メディアはこれが大好きです。
僕自身もサイバーエージェントのABEMAで働いていた経歴があって、これを直感的に理解していました。
スープの発売と「1つの言葉の発見」で成長が後押しされた。
田邊:
2020年3月にスムージーを発売して、11月にはスープを発売すると、これが好評で約80%の売上をスープが占めるようになっていきました。
スープは「夜9時過ぎたら、GREEN SPOON」という言葉を生み出した瞬間から、みんなの反応率が一気に変わってきたんですよ。
本当にこれは面白くて、「刺さる言葉・刺さる訴求」が見つかった瞬間に、同じものを売っていても何倍も反応が変わることがあります。
この言葉は、冨永愛さんとコラボしたときに、冨永さんが試食会で「夜9時過ぎたら、わたしもうGREEN SPOONなんですよ」とお話されていて。
これはいい言葉だなと思って、「夜9時以降のごはん」といった訴求で広告などを出してみると、めちゃくちゃ反応率が良かったんです。
つまり、夜9時以降には「炭水化物はとりたくない」とか「罪悪感のないヘルシーなものが食べたい」という心理の人がたくさんいたんです。
2023年に「主菜の発売」でユーザー層が一気に広がって急成長した。
田邊:
次のターニングポイントになったのは、2023年6月に「主菜」を出したことでした。これによって顧客層がめちゃめちゃ広がりましたね。
主菜を出した2023年は「こんなに伸びるんだ!?」というくらいには伸びて、GREEN SPOONがはじまってから、一番伸びた年になったと思います。
2022年には、売上のほとんどがスープで、ダイエット中の人や、1人暮らしの女性の夜ご飯とか、そういうニーズにマッチして売れていたんですよ。
なんですけど、主菜が出た瞬間に「自宅で簡単にできる健康ごはん」という認知になって、その瞬間にユーザー層が一気に広がりました。
家族利用が増えたり、男性が増えたり、ダイエットじゃない層にも食べてもらえるようになりましたね。
成功施策①:総額よりも「1食の単価」が安い広告の獲得効率が高かった。
田邊:
スープの広告で、「4食で2,900円」という広告と「12食で5,800円」という広告を出したところ、後者の獲得効率のほうが2倍も高くなりました。
仮説としては、「4食で2,900円」のほうが低リスクで試せるから、反応率が高くなるのではと考えたのですが、真逆の結果になったんですね。
理由としては、総額よりも「1食あたりの単価」で購入を判断する消費者が、想像以上に多かったためです。
食品って「1食あたりの単価」が消費者の認知として強いんですよね。ランチとかも「1食あたり500円までかな」みたいに決めたりするじゃないですか。
つまり、前者の「4食で2,900円」だと1食あたり約750円、後者の「12食で5,800円」だと1食あたり約500円なので、後者がお得と判断されたんです。
この結果には、めちゃめちゃ驚きましたね。この「小さな差分」だけで売上がとんでもなく伸びたことにもなるので。
成功施策②:値下げすると「1人あたりの購入数」が上がって売上が伸びた。
田邊:
2023年にGREEN SPOONで「主菜」を出したときに値下げをしたところ、結果として全体の売上がめっちゃ伸びました。
値下げをしたことで「それならもっと買いたい!」と、1人あたりの平均の購入数などが伸びて、全体の売上が伸びたんですよ。
食品のビジネスの売上は、「顧客数 × 頻度 × 単価」の3つで構成されます。とくに食品は「顧客数」が伸びないと成立しません。
マットレス、アパレル、ジュエリーなどは、単価を上げて勝負できますが、食品は中々そうもいかないんです。なので最初から「いつか値下げしたい」と決めていました。
大げさかもしれませんが、GREEN SPOONは「すべての人に開かれるべきブランドだ」と考えていて。「本当にいいモノをつくってる」という自信もあったので、もっとみんなに食べてほしかったんです。
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【取材協力】
株式会社Greenspoon:https://greenspoon.co.jp/
GREEN SPOON:https://green-spoon.jp/
田邊 友則さん:@TanabetOMonOri
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