世界最大級のアニメ沼。月間1,800万人のユーザーが使う「MyAnimeList」世界中のアニメオタクに愛されるサイト運営の裏側
世界のアニメ・マンガ好きが集まる「MyAnimeList」を取材しました。
※ 株式会社MyAnimeList CEO 溝口 敦さん(右)、樋口 由美子さん(中)、森川 晃さん(左)
「MyAnimeList」について教えてください。
溝口:
MyAnimeListは、世界最大級のアニメとマンガの、データベースとコミュニティサイトです。2004年からスタートしたサイトです。
月間のアクセス数は2.7億PV、月間アクティブユーザー(MAU)1,800万人、アプリは100万ダウンロードを超えています。
特徴としては、海外ユーザーが99%を占めていること。世界ほぼ全ての国からアクセスがあり、世界中からアニメ好きが集まっています。
もともとは、米国人のアニメオタクのエンジニアが、2004年にスタートしたサイトです。創設者とは、今でも連絡を取り合っています。
森川:
MyAnimeListは、世界最大の沼だと思っています。オタクって沼に引きずり込む習性があると思うのですが、それが世界規模で行われています。
「周りに布教したい」という欲求を、究極的に満たせるのが、MyAnimeListなんじゃないかと考えていますね。
途中までは、DeNAが運営していたそうですが、どのような経緯でサービスを買収したのですか?
溝口:
もともと、僕はメディアドゥの取締役でもあるのですけど、電子書籍の取次だけでは厳しくなるから、新規サービスをつくろうと考えていました。
そのときから、MyAnimeListのことは知っていたので、こういうサービスと組めるといいな、と思っていたんですね。
そこで、たまたまDeNAに知人がいたので、「協業できないか」という話をしたところから発展して、サービスを買収するという流れになりました。
※ 【2021.8/16 12:47】 MyAnimeListさんの都合により、公開後に一部の文章を修正しました。
MyAnimeListの「巨大なデータベース」は、どんな仕組みでつくられているのでしょうか?
樋口:
サイト上に掲載されている、アニメやマンガの情報は、世界中から集まった60名の「モデレーター」と呼ばれる人たちが管理しています。
わたしたちがサイトは運営するのですが、ユーザーがデータの追加を行い、掲載情報はモデレーターたちが、ボランティアベースで管理しています。
モデレーターには、学生の方もいれば昼間は仕事をされている方もいます。みんなアニメやマンガが大好きな人たちです。
カンファレンスに行ってニュースを書く人、Facebookページを管理する人、フォーラムの発言を管理する人、いろいろな役割がありますね。
※ モデレーターは、コミュニティ(みんなアニメ大好き)に入れることが、活動モチベーション、とのこと。モデレーターは試験(実務スキル含む)をクリアしないとなれない。
これまで「やってよかった施策」があれば教えてください。
溝口:
アプリを出したことですね。アプリはWebに比べてリテンションが高い。2〜3倍では済まないくらいに差が出ていますね。
2年間サイトを運営して「わかったこと」はありますか?
溝口:
MyAnimeListには、マンガストアもあるのですが、海外の方がマンガをすごく買ってくれるかというと、実はそうではないとわかりました。
もちろん、コアなファンが「1人20冊」とか買ってくれるけれど、日本のように「1人500円」が積み上がって、1億円になるわけじゃない。
でも、考えてみると当たり前です。マンガって「横読み・見開き・白黒」、これってかなり特殊なフォーマットですよね。
日本人は「源氏物語」がおもしろいと知っていても、じゃあ「巻物で読め」といわれたら読まないじゃないですか。
つまり、海外ではアニメがヒットしても、日本ほどマンガが売れないんです。
溝口:
日本の出版社が、アニメ化する最大の理由って「原作の漫画が売れるから」なんですよね。もちろんビジネス的にはですけど。
例えば「鬼滅の刃」の電子書籍の売上も、アニメ化がすごく成功してから、売上がものすごく伸びているんですよね。
海外でも、同じようにどうしたらマンガを買ってもらえるか、ここは僕たちが解決したい課題だと考えています。
買収のタイミングに戻れるとしたら「ここはこう変えたい」と思うところはありますか。
溝口:
最初から、様々な企業を巻き込んで、資金調達するかもしれません。はじめからデカイ投資をしつつ、味方を増やしたほうが良かったなと。
先日も12億円の増資を発表したら、「うちも入れたいです」「一緒にできることないですか」みたいな話が、僕のところに結構きたんですよ。
中には「MyAnimeListって日本の会社なんですか?」という反応もあって、まだまだ知ってもらえていないのだなと。
なので、出版社の方たちをもっと早く巻き込めていたら、もっと日本の人に早く知ってもらうキッカケをつくれたなと思います。
海外でも人気になっている「異世界もの」の作品
溝口:
異世界は海外でも人気がありますね。これは僕の意見ではないのですけど、よく言われる異世界分析としては「格差の表れ」ではないかと。
格差がある社会では、底辺のボリュームが大きくなります。その人たちが、気持ちよく読めるものが、異世界ものだと言われていますね。
世界で流行っている、縦スクロールのウェブトゥーンも「異世界もの」が、すごく多いんですよ。ピッコマの上位作品もそう。
背景としては、今ウェブトゥーンって「スタジオ化」してつくられていて。原作・絵コンテ・作画のように、分業化されています。
スタジオ化すると「当たるものは何か」って考え方をするので、読まれるものをつくろうとすると「異世界もの」が増えるのかなと。
良い悪いは別として、日本のマンガは「一人の天才」から生まれますけど、海外ではスタジオ制なので「先生」という存在がいないんですね。
つまり、アニメと同じモデルなんです。ちなみに、ウェブトゥーンの原作は、8〜9割は韓国で、1割が中国という感じです。
ウェブトゥーン原作(縦読みマンガ)のアニメも増加
樋口:
ウェブトゥーン原作のアニメは人気が出てきています。ウェブトゥーンとして読まれたものが、配信サービスでアニメ化したり。
以前に「このアニメいまいちじゃない?」と聞いたら、「ウェブトゥーンのファンはめっちゃ応援してるよ」と言われたことがあって。
若い子にとっては、アプリでタダで読めて、英語で縦読みできるウェブトゥーンは、魅力があって広がりやすいのだと思いました。
日本でいうと「極主夫道」や「うらみちお兄さん」は、pixiv(Webマンガ)があったからこそ、原作にファンが生まれて、アニメの人気も出ていると思うんですよね。それと似ているのかなと思います。
海外で「日本のアニメ」が広まっていくパターン
溝口:
海外でアニメが広がるパターンは、もともとはテレビで、その次が海賊版、そこからNetflixなどの、映像配信サービスに移ってきていると思います。
最近はNetflixの影響は大きいですね。Netflixのレコメンドで出てきたので、「アニメを見はじめました」という人がたくさんいる。
あとは、「極主夫道」「東京リベンジャーズ 」のような、日本の文化を知っていないと、一見楽しめなさそうな作品でも、海外で人気が出ることが増えていると感じます。
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取材協力
MyAnimeList:https://myanimelist.net/
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