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音声を信じて10年、会員数100万人突破の「audiobook. jp」に聞く音声コンテンツのつくりかた。オーディオブックだから売れやすい本、情報量が多すぎると失敗する理由

100万会員を突破した、耳で本を聴くオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」を運営する、オトバンクさんにお話を伺いました。

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※ 株式会社オトバンク 代表取締役 久保田裕也さん

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audiobook.jpについて教えてください。

本を耳で聴けるオーディオブック配信サービスです。2019年10月に会員数は100万人を突破しましたが、ここまで来るのには10年かかりました。

前身サービスの「FeBe」は2007年にスタート、PCの時代からオーディオブックの可能性を信じて、ずっと研究しながら続けてきたサービスです。

ここまで急激に伸びてきたのは、本当にここ最近のことなんです。ずっと右肩上がりではあったのですが、小さな成長を繰り返してきました。

でも正直、ずっと地道にやっている中で、1年で数十倍に伸びてるベンチャーなどを見ると、自分の無能っぷりに落ち込むことも多かったですよ。

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※ 2018年に「audiobook.jp」にリニューアル、聴き放題プランもスタート。提供コンテンツ数は27,000コンテンツで国内最大とのこと。

現在のユーザーデータはどんな感じですか。

デバイス比率でいうと、スマホが70%を占めていますね。一番アクティブな時間帯は平日朝7~8時台、ユーザーの男女比は6:4くらいです。

コンテンツ消費量でいうと、月に2.5冊~3冊がボリュームゾーン、視聴時間で考えると20時間強くらいの人が多いのかなと思います。

とくに伸びている数値としては、1日あたりの総視聴時間がすごい勢いで伸びていて、ここ3ヶ月だけでも2倍ほどに成長しています。

1人あたりの総視聴時間でみても、本当にギュイーンという感じの勢いで、伸びている様子がわかりますね。

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以前と比べてオーディオブックで「変わってきた」と感じるところはどこですか?

以前は圧倒的に、紙の本を読んでからオーディオブックにくる人が多かったけど、最近はオーディオブックで知ってから紙の本を買う人が増えてきた。

つまり、紙の本のプロモーションとして、オーディオブックが機能していて、そういう文脈で出版社さんから声がかかることも増えましたね。

スマホ時代になって、通信インフラやデバイス環境が整ったことで、とにかく場所や時間を選ばずに、音声を消費できるようになりました。

農業の機械を動かしているときにヒマだから聴く、子育て中のお母さんが耳だけヒマだから聴く、そういう話もよく聞いたりしますね。

ユーザーの裾野も広がっています。以前に比べると女性比率が増えたのと、年齢層も前はかなり高かったのが、いまはバラけてきました。

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※ audiobook.jpのユーザーを対象にしたアンケートの結果(2019.9)

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オーディオブックは社内でつくっているんですか?

そうですね。社内のスタジオで毎月数百本のオーディオブックを製作しています。ネットサービスでありながら町工場のようなビジネスでもあります。

工程も細かく分かれていて、収録時に何テイクも撮っておいて、編集時にどのテイクがいいか考えるなど、かなりこだわってつくっていますね。

本に合わせて演者さんを選定したりもしていますし、ディレクターは必ず本を読んだ上で収録にのぞんでいます。

想像以上にこだわっているんですね。

とにかく、寝ても覚めても研究というところからやってきていて、ユーザーさんにとって一番良いクオリティになるようにつくっています。

ちなみに、声に出して読むと「本の誤植」にめちゃくちゃ気づくんですよ。なので、たぶん本の誤植を日本一発見している会社だと思います。笑

※1冊のオーディオブック製作に「1,000万円以上のコスト」をかけることもあるそう。それくらいコンテンツの質にはこだわっているという。

オーディオブックを「つくるときのコツ」を教えてください。

一時期、がんばって情報量を多くしたら、お客さんから「聴きづらい」と言われたことがあったんです。情報量が多いことが不評だったんですね。

なので「淡々と読む」というのはひとつのコツだと思います。1秒あたりの情報量を濃くしすぎると、疲れてコンテンツを聴き切れなくなってしまう。

オーディオブックにおいては、BGMや効果音なども含めて「情報量が多い」ということが、必ずしもプラスになるとは限らないんですね。

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それはおもしろいですね。ほかにはどうですか?

お客さんに「いつ聴かれるか」を想像するのも大事です。つまり、通勤電車で眠いなか聴くのか、週末にのんびり聴くのか、想像しながらつくります。

たとえば「週刊SPA!」の音声版は、あんまり元気に読みすぎないように意識しています。仕事帰りで疲れているときなんかに「元気すぎる声」って聴きたくないのではないかと思うからです。

ほかにも、ラノベ寄りのコンテンツだったら、過度な芝居はしないように気をつけています。それぞれの脳内にあるイメージを壊さないようにするためです。

オーディオブックだからこそ「売れやすい本のジャンル」というのはあるのでしょうか?

コミュニケーション系の本は、オーディオブックと相性が良いと感じます。なぜあの人は好かれるか、嫌われない話し方、といった感じの本ですね。

なぜかというと、書影を晒しては読みたくない、誰かに読んでいるのを見られるのが嫌、という人が一定数いるからだと思います。

あとは「分厚い本」とも相性がいいです。これまで投資回収率が圧倒的に高いのは「ドラッガーの経営論」の本です。これは辞書のように厚い本です。

こうしたタイプの本は、データの予測値からの外れ値がでやすくて、売れやすい傾向がありますね。

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ビジネスモデルや収益についてはどのような状況ですか。

単品販売とサブスクリプションがあって、いまは「単品販売2:サブスク1」という収益比率ですが、これは来年には逆転する見込みです。

なお、サブスクリプションには「30日のお試し期間」も設けていますが、お試しからの継続率も「60〜70%」という数値が出ていますね。

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※最近、ポッドキャスト配信者が、単品や聴き放題としてコンテンツを配信できる、音声コンテンツの課金モデルもはじめた。

オーディオブックの「単品販売」だと、どれくらい売れるとよく売れた作品になりますか?

単品販売だと「1万冊を超えるとすごい」という感覚ですね。オーディオブックで1万冊売れる作品というのはそれほど多くありません。

ちなみに、オーディオブックの収益は、売れた分だけ出版社さんや作家さんにお渡しする、レベニューシェアモデルになっていて、製作費についてもいただいていません。

なので、権利許諾さえいただければ、あとは我々が製作コストを持つ、出版社さんや作家さんがリスクを負わないモデルになっています。

なるほど。サブスクリプションをはじめてみて何か気づいたことはありますか。

興味深いのは再生データをみると、サブスクリプションで聴き放題している人と、コンテンツを個別購入している人では、動き方が違うんですよ。

まず、サブスクリプションのほうは「火・水・木」に伸びます。平日の通勤通学や仕事の移動中に、聴いているのかなと思います。

そして、個別購入のほうは「水・土・日」に伸びます。社会人に時間が生まれるタイミングですよね。そういう日に購入して聴かれています。

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最近は「音声コンテンツ」が注目されることもかなり増えてきましたよね。

そうですね。自分も中学生から音のコンテンツを死ぬほど聴いてきた人間で。そもそもテレビをみていると怒られるような家庭だったんです。

それで、自分の部屋にこもってラジオを朝5時まで聴いたり、好きな番組が増えすぎて部屋にラジオを3台置いて、3局同時に聴いたりしていました。

そういう、自分にとっては「耳が空いてるときに何か聴く」というのは当たり前だったのが、スマホの時代になって世の中もだんだんそうなってきたのかなと感じています。

取材協力:株式会社オトバンク (https://audiobook.jp/
久保田さんのツイッター:@ykubotageruge

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