メルカリが検索に「売り切れ品」を置く理由、初期のLINEが友だち追加を「電話番号マッチング」に絞った理由など、アプリのマーケティング施策まとめ30
2017年〜2020年(+α)に取材した記事から、今でも参考になりそうな施策などまとめてみました。※ 数値等はあくまで取材当時のものです。
1、フリマアプリの検索結果に、あえて「売り切れ商品」を表示している理由(メルカリ)
フリマアプリの「メルカリ」では、検索をかけると販売済みになっている、「売り切れ品」も表示されるようになっている。
あるとき邪魔ではないかと、検索結果から「売り切れ品」を消してみたら、あらゆる数値(継続率・購入率など)が悪化してしまった。
実は「売り切れ品」を置いておくことが、ユーザーに「これ買いたかった」「マメにチェックしとこう」と思ってもらう、うまい演出として機能していたのが理由。
2、コメント欄のタイムラグを小さくすると、コメント率が改善されて荒れにくくなる(ミラティブ)
配信アプリの「ミラティブ」では、コメント欄のタイムラグを小さくしたところ、コメント率が改善されたという。
生配信は、コメントに「リアクション」が返ってくることが大きな面白さ。そのため、タイムラグは小さければ小さいほど良い。
実際にミラティブでは、初期はラグが7秒あったが、これを2〜3秒まで短縮したところ、明らかにコメント率が伸びた。
感覚的には、ラグを短くすると「荒れにくくなる」という効果」もある。
掲示板でクソコメを書いたり、YouTubeのコメント欄を荒らしても、怒られなさそうな感じがする理由は、タイムラグが大きい場所だから。
逆に、ラグが小さいと「相手の顔をみて悪口を言う」ことに近くなる。荒れにくくなるのは、そうした心理効果があるため。
3、スマホゲームの広告で「キャラ推し」の効果が高くなる理由(#コンパス)
陣取りバトルゲーム「#コンパス」では、動画広告に「バトルシーン」を入れるよりも、「キャラ」を入れたほうが効果がよかった。
本当は、バトルシーンを見てもらいたいが、データをみると「キャラ推し」の広告効果が一番高くなっていた。
考えられる理由は、ゲームの入口は「グラフィックや絵」であって、ルールというのは「するめ役」のようなものだから、だという。
ルールやシステムは「するめ」のように、入った後にずっと噛み続けると、味が出てきて魅力が伝わる。しかし、入口の時点では伝わりにくい。
だからこそ「キャラ推し広告」は、効果が出やすいのかもしれない。
4、離反したユーザーには「早めに復帰」してもらうことが重要(モンスト)
モンストでは「離反してしまったユーザー」に、なるべく早めに復帰してもらえるように、施策を打っているとのこと。
とくに、離反したユーザーは「30日以内」に呼び戻さないと、なかなか復帰してもらえない(広告コストが膨らむ)というデータも出ているため。
動画広告では、少しの変更で反応が変わることがあり、動画広告でキャラを動かすようにしたところ、再生率が4.5倍に改善された。
この「再生率」というのは、30秒の動画広告において「最初の6秒を見てもらう」ということを、途中指標として置いているもの。
その理由としては、「最初の6秒」まで視聴してもらえると、完全視聴率が上がるという傾向が出ていたため。
5、アプリを「どう使えばいいか?」をインタビュー形式で紹介したらユースケースが拡大(TimeTree)
カレンダー共有アプリ「TimeTree」では、ユーザーの使い方をインタビュー形式でまとめたところ、大きな手応えがあった。
例えば、お子さんの学校のプリントをスマホで撮影して、カレンダーの締切日に貼りつけている、という使い方を紹介したところ、既存ユーザーの写真投稿数がばーっと伸びていったという。
また、バンドマンが「メンバーとの予定共有」につかう事例を載せた結果、「バンド内でつかってます」という声がSNSに増えていった。
ユースケースは無数にあるが、シンプルなアプリなので「どうつかうのか?」をユーザーに知ってもらうのが大事だった。
6、YouTuberプロモーション実施のコツ(バンドルカード)
バンドルカードでは、10代向けプロモーションを試行錯誤した結果、もっとも良い結果になったのは「YouTuberプロモーション」だった。
カードを発行して「チャージしてもらうまで」の獲得コストで見ると、SNS系のネットワーク広告と比べて、2倍も効率が良いという結果に。
とくに効果が良かったのは「コスメ系YouTuber」で、カード発行ベースでの獲得コストで「約50円」という数値が出たことも。
おすすめコスメを紹介しつつ、それを買うときに「バンドルカードが便利」という流れになるので、利用シーンの明確さがプラスに働いた。
ポイントは、再生数よりも「視聴者との距離感」を見ることだという。なぜなら関係性が出来ていないと、視聴者は動いてくれないから。
コメント欄が「適度に荒れているか」も重要で、全員に好かれているより、すこし嫌われているYouTuberのほうが、効果が高い傾向にあるそう。
理由は、アンチが攻撃することで、擁護したいファンの気持ちが高まって、全体の熱量が上がるからではないか、とのこと。
7、初期のLINEが「電話番号のマッチング」にこだわった理由(LINE)
LINEリリース初期、LINEは「雑談をする場」を目指していた。知り合い同士で、意味のないコミュニケーションをしてもらいたかった。
そのほうがリアルだから。「知らない人」としゃべるよりも、「知っている人」としゃべったほうが、しゃべる回数も多くなり、熱量も高くなる。
そこで、キーになったのが「電話番号でマッチングする」という仕組みで、この時にツイッターやFacebookの連携はあえて入れなかった。
ほかの関係性が混ざると「パブリックな方向」に進んでいってしまうため、「電話番号でのマッチング」に絞ることにした。
そうすることで、LINEで「友だち」として推薦される人は「全員知り合い」というピュアな状態に保つことができた。
8、リプ返するYouTuberは「コアファン率が高い」(LIPS)
コスメアプリ「LIPS」では、リリース3ヶ月後くらいに、YouTuberプロモーションを実施したところ、ユーザー数を一気に拡大できた。
とくに、ツイッターでマメに「リプ返」をするYouTuberは、ファンとの距離感が近くコアファンも多いため、反響が良い傾向にあった。
プロモーションで「一定ユーザー数がアプリにいる状態」になってからは、LIPSの新規ユーザーの継続率は「約2倍に伸びた」という。
施策としては、プッシュ通知で反応がいいのは「フォローしている◯◯さんが投稿しました」というもので、開封率が30%を超えた。
LIPSはコミュニティアプリなので「人ベースの通知」を送ると、ユーザーにとっての関心が高かったため。
9、レビュー返信で「レビュースコア」を改善(テスティー)
アンケートアプリの「テスティー」では、GooglePlayの「レビュー返信」に力を入れたところ、レビューのスコアを改善できた。
実際に、レビューに返信をすると、レビューを返信してないものに比べて、星を1つでもプラスしてくれる確率が1.7倍も高くなった。
星1の「ダメ出しレビュー」より、星2〜3の「評価していない訳じゃない」という人に返信したほうが、評価を上げてもらいやすかった。
レビュー返信では「ここが困ってる」「ここに不満がある」という、明確に返信する意味があるものを優先している。
なぜなら「完全な解決策」を提示できなくても、すぐに「ごめんなさい」「確認します」というだけでも、印象は変わってくるため。
星1〜2のレビューがつくと、社内のチャットにアラートが飛ぶようにして、なるべく早く反応しているという。
10、「認知と人気」はベツモノである理由(SHOWROOM)
SHOWROOMで、テレビショッピングのような仕組みで、試しにバッグを売ってみたら、有名タレントより普通の男性のほうが売れたことがあった。
なぜなら「認知」と「人気」は違うため。つまり、プロモーションなどを依頼する時にも、「認知」(ファンの多さ)だけではなくて、「人気」(ファンの濃さ)も見極めないといけない。
DeNAの新卒の女性が、スルメをつまみにお酒をのみながら配信したところ、飛ぶようにスルメが売れた(彼女のファンはたった100人)
これは単なる「スルメ」ではなくて、「スルメを食べながら、一緒に時間を過ごす」という、体験価値を売ることに成功したため。
11、各国でインターンを採用してユーザー拡大(Clear)
学習ノート共有アプリ「Clear」では、4カ国で現地の優秀なインターン生に運営を任せて、各国でユーザーを伸ばしている。
インターンのチームを組むコツは「少人数で運営」することだと言う。人数を増やしてしまうと、一人あたりの責任が軽くなってしまうため。
もともと「1チーム、5〜6人」でパフォーマンスが上がらなかったが、そこから、少数の「やる気のある学生」に任せたらうまくいった。この現象を「責任分散の法則」と呼んでいるそう。
12、アプリの「共有利用」を起点にDAU10万人(ぴよログ)
約2年でDAU 10万人まで到達した、育児記録アプリ「ぴよログ」では、全体の30%が共有利用していて、それを起点にユーザー数が拡大している。
例えば、奥さんにアプリを入れてもらえれば、その後に旦那さんにも入れてもらえるというように、1ダウンロードが2ダウンロードになりやすい。
この仕組みにより、じわじわとダウンロード数が伸びて、検索順位も上がっていったという。「共有利用×○○」なサービスをつくると、このような現象が起こりやすいかもしれない。
13、ユーザーが次にとる「具体的な行動」を文言にしたら賃貸の問い合わせ率が1.2倍に(LIFULL HOMES)
住まい探しアプリ「LIFULL HOMES」では、賃貸のお問い合わせの文言を、「メールお問い合わせ」から「空室状況を問合せ」に変更したところ、問い合わせ率(CVR)を1.2倍に改善することができた。
ユーザーが次にとる「具体的な行動」に即した文言にすることで、問い合わせ率を改善することができた。
LIFULL HOMESでは、広告等に「間取り図」を入れると反応がよくなる傾向があり、GooglePlayの画像にもそれを入れると効果が高まった。
14、チャットサポートを入れるとレビューが荒れにくくなる(quick-zip plus)
個人開発の「quick-zip plus」では、アプリにチャットサポートを実装したところ、ストアのレビューが荒れにくくなった。
これは、チャットに「嫌なこと」を吐き出してくれるため。「クソアプリ」などと言いたいだけの、問題解決を求めていない人を誘導できた。
15、服借り放題サービスが「服好きな人」につかわれない理由(メチャカリ)
服借り放題アプリ「メチャカリ」では、当初は「服が大好きな人」につかわれると思ったが、実はそこには大きなニーズはなかった。
なぜなら「服に貪欲な人」は自分で探して服を買ってしまうから。服好きな人が大喜びでつかってくれる訳ではなかった。
一方、生活において「服が一番ではない層」に想定以上のニーズがあった。考えなくてもトレンドが取り入れられる。服にかける費用をおさえられる。「ファッションのめんどう」を回避できるサービスとしてつかわれた。
16、日本でのカップルアプリのユーザー分析(Between)
カップルアプリ「Between」で、接続解除数(別れるボタンが押された数)を分析したところ、シーズン性が判明した。
日本で「カップルが別れやすい」のは、冬シーズン(11月〜12月)で、別れにくいのは、夏シーズン(8〜10月)という結果に。
また、アプリに記念日として登録された「付き合った日」を分析すると、日本では「春(5月ピーク)」に付き合うカップルが多かった。
11月から12月にかけて「付き合った日」が増える傾向にあり、クリスマスを見越して付き合うカップルが多いであろう結果に。
17、ツイートで反響良かったサービスを開発(ためしがき)
フォントお試しサイト「ためしがき」では、事前にニーズを掴んで開発することで、公開後にツイッターのトレンド入りするほど反響を得た。
開発前に「こんなサイトあったらいいな」とツイートして、反響やコメントが多かったのもあり、本格的に開発スタート。
試したフォントで「好きな文字」を入れて、URLでシェアできる機能を入れたことも、SNSでの拡散を促進した。
18、漫画のバナー広告は「複雑な物語訴求」の効果が高い(コミックエス)
女性向け漫画アプリの「コミックエス」では、バナー広告で「マンガの内容をどう説明するか」によって、ユーザーの反応率が変わる。
たとえば「どう禁断の恋なのか?」を示す。パッと見たときに「ああ、不倫したんだな」とわかったほうが効果が高くなるという。
19、高齢者にも使われるデザインを研究してわかったこと(Ubie)
AI問診の「Ubie」では、ユーザーインタビューや観察を通して、高齢者でもつかえるデザインを追求した。
結果的に、タブレットでのAI問診で「患者さんの9割以上」に、最後まで回答してもらえるまでに改善できた。
20、個人開発アプリで「LINEユーザーサポート」(STUGUIN)
高校生(当時)が開発した学習アプリ「STUGUIN」では、ユーザーサポートに「LINE@(現:LINE公式アカウント)」を開設したところ、ほとんどの問い合わせをLINEに集約できた。
送られてきた内容に「1対1」で返す分には無料であること、中高生ユーザーはメールよりLINEの方が使いやすいという、利点があった。
21、オーディオブックで「情報量を多くする」と逆効果だった(audiobook.jp)
オーディオブック配信サービス「audiobook.jp」では、オーディオブックの情報量を多くしたところ、お客さんから「聴きづらい」と不評だった。
逆にいうと「淡々と読む」がひとつのコツだった。1秒あたりの情報量を濃くしすぎると、疲れてコンテンツを聴き切れなくなってしまう。
良かれと思って、BGMや効果音なども含めて「情報量の多さ」を試みたが、必ずしもプラスになるとは限らなかった。
22、診断コンテンツに「共通点と差分」を設計してSNSで拡散(ALTER EGO)
性格分析ゲーム「ALTER EGO」では、ゲーム内の診断コンテンツで、あえて「人と重なるところ/重ならないところ」が出るように設計した。
なぜかというと、共通点と差分をつくることで、「ここは同じだね。ここは違うね」と、SNS等で会話が生まれやすくなると考えたため。
診断結果も、4パターンしかない箇所もあれば、50パターンある箇所もあって、同じ最終結果にはならないように工夫。
結果的には、ツイッター上で「診断シェア」がたくさん発生、ダウンロードのほとんどがツイッター経由に(公開3ヶ月で40万ダウンロード)
23、課金収益が10倍になった「ドラフト課金」(私を甲子園に連れてって)
個人開発の野球ゲーム「私を甲子園に連れてって」では、引退する3年生を登録チケット(100円程度)をつかうと、対人戦でつかえる「OBチーム」に確実に登録できるようにしたところ、課金収益が10倍に跳ね上がった。
心理的には、手に入れるときよりも「失うときの動機」のほうが強いため、このような結果になったのではないか、とのこと。この施策によって月の収益が100万円に到達するようになった。
24、反応のよかった広告クリエイティブをキービジュアルに(Craft Warriors)
戦略ゲーム「Craft Warriors」では、ソフトローンチの時に30パターン以上の広告をつくったところ、他と比べて「3倍以上のクリック率」の高い反応のよいビジュアル素材を発見することができた。
そのデータをもとにした「反応率の高い素材」を、ゲームのキービジュアルとしても採用することにした。事前にキービジュアルのテストをSNS広告で検証するというのも、良いアイディアかもしれない。
25、一人プレイだけどSNSでみんなで楽しむ(Fit Boxing)
Nintendo Switch「Fit Boxing」では、SNSのクチコミなどから大きく販売数が伸びていく、という現象が起きた。
例えば、ゲームで測定できる「カラダ年齢」が、診断コンテンツのように、SNSにたくさん共有された。心理的に、実年齢より若くても言いたくなる、その逆でも言いたくなると、SNSとの相性もよかったため。
Fit Boxingは、基本は「一人プレイ」だが、SNSなどを通じてゲームの体験は「ソーシャル化」していることにも気づいた。
例えば、SNSのタイムラインで、あの人も頑張っているから、自分ももう少し頑張ろうと思えたり、一人の「Fit Boxingで痩せた!」という投稿をみて、もう一度ゲームを再開したりする。
人と人との関係性や、口コミがゲームをより面白くする。そのため、公式でも「レビュー用のタグ」をつくって、感想や体験談を促進している。
26、ゲーム内の写真をSNSシェアしてもらう(旅かえる)
スマホゲームの「旅かえる」では、かえるから「写真をもらう」ことができるが、写真が「特別なもの」になるように設計した。
具体的には、写真には「旅仲間」が写っていたりいなかったり、風景がちがっていたり、同じ写真が出ないように工夫されている。
不確定要素を多めに入れて、ほかの人と写真が被らないようにすることで、SNS上でのシェアや会話が生まれやすくなるようにした。
27、小学生が爆笑したゲームをアプリ化したら月100万円の収益に(お絵かきコラボ)
2人で協力して絵を描く「お絵かきコラボ」では、小学生の姪っ子のためにつくったゲームが、最終的にヒットする結果になった。
実家で姪っ子のために「お絵かきゲーム」をつくったら予想以上に大ウケ。面白さに疑問はあったが、ストアにゲーム化して公開することに。
しばらくすると、YouTuberに取り上げられて人気が出はじめて、60万ダウンロードを超えて、月100万円の収益になるまでに成長した。
28、女性向け恋愛ゲームは「鬼畜、俺さま、ドS」のキャラ人気が出やすい(アリスマティックの恋愛ゲーム)
女性向けの恋愛ゲームを開発する、アリスマティックのゲームでは「鬼畜、俺さま、ドS」といった、特徴を持つキャラが人気だという。
男子を育成するゲームで「好みの性格」に変えられる「性格要素ドリンク」を売ったところ「鬼畜、俺さま、ドS」がすごく売れた。
また、タイトルは「えっ?」となるような、引っかかりのある言葉を入れつつ、ユーザーに「テーマ」を伝えるとうまくいきやすい。
29、ゲームが白背景だと「スクショ映え」しにくかった(TIME LOCKER)
スマホゲーム「TIME LOCKER」では、画像はシェアされるものの、スクショされたときに「白い背景」だと映えないことに気づいた。
ツイッターでシェアされたとき、メディアに記事が掲載されたときに、白いスクショだとパッと目が行きにくい。
そのため、どの瞬間を切りとっても「おもしろそうな画」になるのは重要で、ストア画像は賑やかに見えるように工夫している。
30、シェアボタンのカラー変更で「シェア数が20〜30倍」に(Glass 2 Glass)
「Glass 2 Glass」というゲームでは、SNSのシェアボタンをモノクロから、オリジナルの色に変えたら、シェア数が20〜30倍に跳ね上がった。
もともとは「デザインの統一感」にこだわって、モノトーンにしていたが、そんなことよりも「わかりやすいボタン」にした方がよかった。
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プロダクトのインタビューや事例などご興味あれば、noteで配信している「月刊アプリマーケティング」のほうもぜひご覧ください。
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