日本で数百万人がつかう「LINE アバター」LINE新機能の開発の裏側。公開まで2年かけて準備した話とユーザーリサーチのコツ。
2020年にLINEに実装された「アバター」の開発の裏側を取材しました。
※ LINE株式会社 ハ・ホングワンさん
「LINE アバター」について教えてください。
LINEで、自分の好きなアバターがつくれる機能(2020年9月に公開)です。LINEのプロフィールやアイコンにも設定することができます。
ユーザー数としては「日本では数百万人」になっていて、今でも想定以上にアバターの利用者数が伸びていますね。
リリースから5日間で世界100万ユーザー、1ヶ月弱で世界300万ユーザーに到達するくらい、公開当初からの反響もよかったです。
機能リリースまでにどれくらいかかりましたか?
公開まで2年かけて準備しました。開発前にもアンケートやニーズの調査を実施していて、そこにも時間をかけましたね。
現在のアバターの姿にたどり着くまでに、スケッチ段階のものも含めると、30種類以上はテストや検証を繰り返しました。
アバターはコンテンツ系サービスで「最初の印象」が大事です。パッと見て第一印象で気に入られなかったら、それ以上使ってもらえません。
そのため、開発が進んでいたアバターを「ボツ」にしたこともありました。テストの反応がイマイチだったため、最初から作り直したんですね。
開発メンバーには苦労をかけましたが、勇気を持って「作り直し」を選択したことが、その後の成果につながったとも感じます。
開発中のユーザーインタビューはどう実施していますか?
ユーザーインタビューには2つの段階があります。まず何人か対象を呼んでアバターのサンプルを見せて「どう思いますか?」と感想を聞くこと。
もう少し進むと、実際のアバターがつくれる「デモアプリ」を渡して、それをつかってもらって、フィードバックしてもらっていました。
サンプルから想像してもらうよりは、実際に「自分のアバター」をつくってもらったほうが、具体的でストレートな意見がもらえますね。
調査はさまざまな層に実施したのですが、積極的に意見を集めていたのは、メインのターゲット層である「10〜20代の女性」でした。
10〜20代の女性は、おしゃれに着飾ることに慣れていて、アバターを作成することにも、そこまで抵抗のない方たちです。
ユーザーリサーチで「意外だったこと」はありますか?
想像したよりも、「可愛くてシンプルな表現」がユーザーに好まれたこと。写実的なものよりは「キャラっぽい表現」が好まれたんです。
ゲームやアニメなど3Dコンテンツは多くありますが、一般的な人たちの感覚からすると「3Dっぽい表現」に、どこか違和感があるようでした。
そこで今のスタイルも、トゥーンレンダリングをして、見た目は線で描いたように見える、3Dだけど2Dに近いような表現にしました。
リサーチを通して「決めた仕様」があれば知りたいです。
アバターをつくるときは、3体のアバターをレコメンドしているのですが、これは調査で「2タイプのユーザー」がいるとわかったためです。
ひとつは、自分にそっくりな姿が好きなユーザー、もうひとつはより可愛くなった姿が好きなユーザー、比率は「ほぼ半々くらい」でした。
そのため、1種類だけレコメンドするのではなく、複数のアバターをレコメンドして、その人に合わせて選んでもらえる形式にしました。
なお、写真からアバターが生成される機能は、独自に開発したAIエンジンによってアバターを生成しています。
判断に迷ったけど「このようにしてよかった」と思うところはありますか?
LINEの外部でもアバターが使えるようにするかは最後まで悩んだのですが、外部でも使えるようにして正解でした。
とくにツイッターで拡散が生まれていて、自分の「好きなキャラや有名人」を再現して載せている方を、多く見かけますね。
中には、自分のアバターを「自作のステッカー」にして、ペンケースに貼っている方もSNS上で見かけました。
アバターの「新規作成数」に貢献した施策はありますか?
提携コンテンツは「新規のアバター作成数」の成長につながりました。
これは、有名なキャラやタレントと提携して、それをLINEのアバターとして表現したりコスチュームがつくれるようにする、というものです。
提携コンテンツからの、流入ユーザーの40%ほどは、まだアバターをつくったことがない人で、そこから新しくアバターを作ってくれました。
台湾では、プロ野球チームとコラボすることで、野球チームのユニフォームがアバターでつくれるようにもしています。
ほかに「利用の促進」につながった施策を教えてください。
アバターの利用頻度を高める施策としては、ビデオ通話でアバターを使えるようにしたことが、もっとも効果的でした。
拡散の可能性という意味で考えると、プロフィールにアバターを設定してもらうことも、とても大事な経路だと考えています。
プロフィールは一回登録してもらえると、一定の期間は使ってくれるので、より多くのLINEの友だちの目に触れる可能性が高いためです。